土と埃の匂いが漂う穴倉。
蝋燭に照らされた窓の無い部屋、いつものようにラフトは机に掛けていた。
ラフトの目の前、床にどっかりと胡坐を掻くレン。
レンは、尻尾を振りながら訊ねる。
「師匠、今日の講義まだかー?」
「あ?そんな頻繁にやってたか?」
「だって、講義楽しいんだもん。」
「まぁな。」
ラフトの返事は、どこか投げやりに聞こえた。
「まぁな、って・・・私、知ってるぞ!勉強って面白くないんだぞ!」
「それで?」
「でも、師匠の講義は面白いからな。なんでだ?」
「面白くないと聞かないだろ?」
「まぁな!」
「なら、お望み通りの講義だ。」
「おお!どことなくエロいッ!!」
「・・・続けていいのか?」
「勿論だ!さぁ、私を好きなようにするといい!」
言外に「付き合いきれない」と伝える様にラフトは無視して話を進める。
「今日は何も考えてなかったからな。そうだな・・・」
「何のお話だ?」
「構外授業、それで行こう。社会見学だ。」
「外か、外か!?」
「おう、外だ。」
「でも社会見学って、何を見に行くんだ?」
「あー、別に目的地とか決めてないぞ。」
強いて言うなら、とラフトは続ける。
「あんたのおべべを買いに行かないとな。女の子なんだから、おめかししないと。」
「師匠!」
「背中に大胆なスリットの入ったシャツも、物好きしか着なさそうな重いローブもどうかと思うぞ。」
「この白い服か?師匠のお気に入りだろ?」
服の匂いを嗅いでは「師匠の匂い」等とのたまう弟子に、ラフトは少々戸惑いを覚える。
「お気に入り・・・と言うよりは、その切り込みが必要なんだよ。」
レンが纏っている衣服は、ラフトのものだ。
現在見に着けているのは、貴族の下着を量産化した所謂Yシャツのような服だ。
一般向けにはあまり見られない意匠のデザインであるが、さらに異質なのは背中の大きな一対のスリットで、服がなびくとその大きなスリットから肩甲骨を覗かせるようになっていた。
元からそのようなデザインと言う訳ではなく、スリットはラフトが後から切ったものだ。
「ここが開いてると、何か意味があるのか?」
「背中見えると官能的じゃん?」
「ほらな!どことなくエロスなんだよ!ふっふっふー、師匠は私の背中を見てドキドキしてたのか・・・!」
「否定はしない。鱗とか。」
「師匠が望むなら、直接見てもいいんだぞ?」
「あー、その内スリットの使い方見せてやるわ。その内。」
「楽しみにしてるぞ!」
「あんた、冗談がちゃんと通じるんだな。・・・まぁ、出来ればそうならないことを祈りたいんだが。」
「冗談が通じる事か?」
「シャツのスリットの方。」
「なんで見せたくないんだ?」
「疲れるからな。」
ラフトは冗談めかして笑う。
「だけど、師匠がそんなに優しいなんて、感動したぞ!」
「・・・俺、そんなにあんたの扱い酷かったっけ。」
痴話を広げながら、二人は立ち上がり小さな住居の外へ出る。