シューラ・チェルカスキーの芸術 3 「チェルカスキー: 1985 Vol.1 | 最近の音楽鑑賞など

最近の音楽鑑賞など

本業関係および趣味について書きます(以前から変更しました)。

演奏会を聴くために東京に出かけると、時間があれば新宿あるいはお茶の水、神保町の中古レコード・CD店に寄って珍しいものがないか探すのが楽しみとなっている。以前のブログで書いたチェルカスキーのCDは新宿で購入したものだが、今になってようやく聴いた。なかなかゆっくり音楽鑑賞をする時間も無くなっているのを感じるこの頃である。

 

チェルカスキーというピアニストを知ったのは大学生の頃だったと思う。リサイタルの模様をTVで放送しており、たしかプロコフィエフのピアノソナタ第7番が演奏されていた。その他、FM東京などでもリサイタルの録音を聴いたことがある。技巧的な作品をよく演奏していた印象があるが、若い頃はホロヴィッツ、シフラなどの演奏に興味があり、それに比べるとどこか柔かい音楽という印象を抱いたことを覚えている。

 

ところが最近になってこの人の演奏を見直すようになった。これはラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」の録音を聴いてからである。1994年という晩年の録音であり、この曲を勢いに任せて演奏するような若手の演奏とはもちろん違う。しかしここに聞かれる表情の豊かさ、音色感の見事さは全く独自の音楽世界というべきで、今でも時々聴き直しているCDである。

さて、今回聴いたCDにはシューベルト「即興曲Op.90-2/ 90-3」、シューマン「クライスレリアーナ」、ショパン「スケルツォ第1番」、J.シュトラウス2世~ゴドフスキ編曲「酒・女・歌」が収録されている。19世紀風のロマンティシズムを感じるような自由なテンポ感、音作りがこの人の特徴だと思う。カンタービレが美しく、シューベルト「Op.90-3」やシューマンの第2曲など素晴らしい。シューマン「クライスレリアーナ」は全体的に音の一つ一つに味わいがあり、他に聴くことのできないような面白さがあった。さらに、最後の編曲ものはさすがにチェルカスキーならではの演奏で、ヴィルトゥオジティを感じさせる素晴らしい世界だ。

この人のCDは他に3枚残っているので、それについてはまた書く予定である。