なぜ太陽光発電所は宇宙にできないのか?(5/13) | sakoのブログ

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「宇宙に巨大な太陽光発電所を置いて地球に送電する」というアイデアの望みが薄い理由を宇宙産業のエキスパートが解説



太陽光発電所はクリーンエネルギーとしてもてはやされているものの、広大な土地を必要としたり、出力が天候に左右されたりするという問題があります。「太陽光発電所を宇宙に設置して地上へ送電する」というアイデアは24時間安定して送電できたり大気に遮られず高い出力を得られたりと優れているように思えますが、なぜ実現できそうにないのかを宇宙産業のエキスパートであるアンリ・バルデ氏が解説しています。



バルデ氏は「MATRA Espace(現エアバス・ディフェンス・アンド・スペース)で27年間宇宙産業のエンジニアリングを担当し、2007年から2017年まで欧州宇宙機関で電力システム・電磁適合性・宇宙環境部門の責任者を務めた宇宙産業のエキスパートです。


「太陽が常に輝いている場所に太陽光発電所を設置する」というアイデアはきわめて自然な発想で、これまで多数の人が赤道上空約3万6000kmの静止軌道に太陽光発電所を建設する計画を試みてきました。宇宙に設置することで春分と秋分前後の期間を除き24時間安定して稼働可能で、地上の大気に遮られていない強い日光を使用できるメリットも存在しています。


日本のJAXAをはじめ、中国やアメリカ、EUなど多数の国・地域が宇宙太陽光発電の研究を進めており、アメリカ海軍研究所はすでに約1km離れた2つの地上アンテナ間で1kwを超える電力を送信することに成功しています。欧州宇宙機関は2022年にSolarisという宇宙太陽光発電プログラムをデビューさせており、10年〜20年かけて宇宙太陽光発電を実現可能かつ競争力のあるものにすると述べています。


こうした状況において、宇宙太陽光発電の実現は近そうに思えますが、バルデ氏によると、「欧州宇宙機関の宇宙電力システム責任者としてこれまで数十ものミッションの発電・エネルギー貯蔵・電気システムの設計に30年以上取り組んできた経験から言うと答えはほぼ確実に『ノー』だ」とのこと。


静止軌道から送る電力を競争力のある価格で生成するには、宇宙太陽光発電所は国際宇宙ステーションの数百倍、最も高い超高層ビルよりも巨大な設備が必要です。資材の運搬に加え、エンジニアリングと組み立てに関する問題も設備のスケールに比例して巨大になっていきます。


By クリス・フィルポット


アメリカとEUの宇宙機関は下記の通りいくつかの宇宙太陽光発電所案に関する詳細な技術分析を発表しています。


・SPS-ALPHA Mark-Ⅲ


元NASAの物理学者であるジョン・C・マンキンス氏の案で、薄膜反射板が太陽を追跡して片面に太陽光発電パネルの付いているエネルギー変換アレイへと光を反射させる仕組みです。アレイのもう一方にはマイクロ波アンテナのほか配電や制御用電子機器が配置されています。


・MR-SPS


中国宇宙技術院の案。幅200m・長さ600mの太陽光発電パネルが50個接続されており、回転する高出力ジョイントと垂直トラスを介して12万8000個のアンテナモジュールにつながっています。


・CASSIOPeiA


Space Group Holdingsチーフアーキテクトのイアン・キャッシュ氏の案。円形の薄膜反射板が太陽を追跡し、集光器や電力変換電子機器などが設置されている螺旋アレイへと光を反射させます。ステーションは地球に対して回転しており、全方方向性アンテナを同期して電力を送信します。


・SPS


タレス・アレニア・スペースの案。幅10m・長さ80mの太陽電池アレイが8000個接続されており、常に太陽の方向を向くように制御されます。中央の送信機が回転して地上のアンテナへと継続的に電力を送信します。



NASAの報告書によるといずれの案であっても当初は地上で電力を生成する場合と比較して12倍〜80倍のコストがかかり、発電所の建設までに2750億ドル(約43兆円)の設備投資が必要になるとのこと。そのうえ、イギリスのコンサルタント企業による欧州宇宙機関への報告書によると、ギガワット規模のマイクロ波ビーム伝送や宇宙での数キロメートルレベルの高剛性構造物の構築など、発電所の建設に必要な13個の重要な要素のうち10個は技術的難易度が「高い」または「非常に高い」とランク付けされています。


バルデ氏は「宇宙太陽光発電所のコストや技術的難易度が高くなるのは物理学的に必然のこと」と述べています。宇宙に設置する発電所から地上の同じ地点に継続的に接続するためには高度約36kmという静止軌道に発電所を建設する必要があり、設備が巨大なこともあって打ち上げのコストは非常に高くなってしまいます。


また、あらゆる天候に妨害されず、また地上の重要な無線システムに干渉せずに電力を送信するためにはWi-Fiで使用される範囲内の2.45Ghzもしくは5.8Ghzのマイクロ波を使用する必要があります。回析によってマイクロ波のビームは進行中に周波数に応じた量で広がるため、5.8Ghzのマイクロ波ビームを静止軌道から地上局に送信するには送信機の直径が少なくとも750m必要で、受信局は34平方km以上の楕円形になるとのこと。東京都千代田区の面積が11.66平方kmのため、宇宙太陽光発電所1カ所からの電力を受信するのに千代田区3つ分の面積が必要になるというわけです。



宇宙太陽光発電の送信機は大型で高価なため、宇宙太陽光発電所はできるだけ出力を大きくしたいものであり、電力会社が対応できる最大規模である1GW〜2GWの案をNASAや欧州宇宙機関、中国、日本は共に評価しています。しかし、大規模な火力発電所や原子力発電所を1つ置き換えるには巨大で高価な宇宙太陽光発電所が2〜3個必要です。


エネルギーは太陽光から直流電力に変換された後、マイクロ波に変換され、受信局で直流電力に戻り、送電網へ送信するために交流電流へと変換されます。変換の各段階においてエネルギーの損失が発生するため、フィールド試験で実際に検証されたエネルギー効率である11%という数字を使用すると1GWの電力を地上に送信するには宇宙太陽光発電所で9GWの電力を収集・変換しなければいけません。9GWもの電力を処理できる宇宙用のスイッチ・リレー・変圧器は設計も実証もされていません。


さらに送信機はフェーズドアレイと呼ばれる何百万もの小さなアンテナの集合体を同期させて特定の方向へと送電する仕組みが利用されていますが、フェーズドアレイを機能させるには送信機上の全てのアンテナが位相を完璧に同期させる必要があります。1km近く離れている送信機の端と端同士をピコ秒単位で同期させる仕組みも開発する必要があるとのこと。


バルデ氏は「無尽蔵の電力を得るために深宇宙に目を向ける」というアイデアを「美しいアイデア」としつつ、「信言は美ならず、美言は信ならず(本当に信頼できることばは飾り立てられておらず、飾り立てたことばは信頼できない)」という老子の言葉を引用して解説を締めくくりました。


https://news.livedoor.com/article/detail/26381121/


屋根に太陽光パネルを設置している家が増えましたね。

災害時などは大丈夫なのかなぁと思ったりします。