NHKの番組で、新型うつと呼ばれるうつ病が増えていることが取り上げられていました。
この新型うつの特徴は、会社などへは行けなくなるものの、友達と会ったり旅行したりすることは普通にできるというもの。
企業側からすると、病気と診断されて休職している間に、レジャーを楽しんでいるのは違和感がある、というわけです。
それで、休職中は病気療養に専念すること、という就業規則を作るところもあるほどだとか。
番組の議論に参加した人の多くは、社会や周りの理解が重要だとして、そういう人との共存を模索することを周囲に求める意見でした。
一方で、そういう人達が他の人に負担を強いていることを忘れるべきでない、という意見も。
これを見ていて私は、いずれ会社というものはなくなると言った神田昌典氏や、トム・ピーターズ氏の主張は正しいなと思いました。
会社という組織は、相互に支えあうことで成り立ちますが、おんぶにだっこの人の割合が増えたら、いずれ成り立たなくなるでしょう。
うつ病患者が邪魔だと言っているのではありません。うつ病患者を、腫れ物にさわるようにして扱う考え方が、危ないと言っているのです。
彼らを特別視すると、そこに権利意識が生まれます。自分たちは特別に扱われて当然だという考え。それが、周りの人の負担をさらに増加させます。
いずれ組織が耐えられなくなり、疲弊するのは必定でしょう。
それにそんなことで、本当にうつ病がなくなるでしょうか?
むしろここは、本音で生きる方向に舵を切ることが重要ではないでしょうか。
組織に馴染めないなら、組織に所属しなければ良いだけではありませんか。組織に所属せずに、自分を生かす方法を模索すること。それによって、道が開かれると思うのです。
組織を守ろうとして人を殺してしまったら、それこそ本末転倒でしょう。
組織は、それに所属したい人だけが所属すれば良いのです。
問題なのは、組織に所属しないのは落伍者だと、烙印を押して疎外する考え方にあります。
組織人として生きる生き方もあれば、組織に所属しない生き方もある。どちらが正しくて、どちらが間違いというものではない。そう考えれば良いのです。
この組織を、家族と置き換えてみてください。家族と企業は違うという人がいるかもしれませんが、私は必ずしもそうとは思いません。
家族には、心の絆という面もある一方で、生活を共同して行う機能集団としての一面もあります。
その家族を形成する発端が、結婚だと思います。
「入社した以上、会社の規則にしたがってもらう。」
「結婚した以上、夫として(妻として)果たすべき役割りがあるだろう。」
うつ病と診断される人は、企業という組織ばかりでなく、家族という組織でもうまくいかなくなるケースが多いでしょう。
それは、認めてもらえないことが、即、自分への攻撃と感じるからです。
何らかの役割を押し付けられることは、特にうつの人にとって負担と感じるでしょう。
本来組織とは、自分の力を発揮する場だと思います。
でもそのように積極的に捉えることができず、むしろ自分を抑圧するものと考えてしまうのが、うつ病の人です。
その考え方を変えない限り、組織には馴染めません。馴染めないのなら、無理に馴染ませる必要はないでしょう。
重要なのは組織に馴染ませることではなく、その人がその人らしく生きることだと思うからです。
組織に所属しない生き方もある。所属したくなったら、いつでも所属できる。いつ考え方を変えるかは、その人の自由。
このように考えれば、うつ病の人も、その周囲の人も、気持ちが楽になるのではないでしょうか。