あれは確か22歳頃か、
前にも書いた原付の旅よりも以前のこと。
居酒屋でバイトをしていたある日、急にバイクで秋田にいきたくなった。
そのとき深夜12時だ。
一緒にバイトしていた、腕の太い男に、これからバイクで秋田いくけど
いく?と聞いたんだ。
すると足も太い男は言った。
「んじゃ、用意するわ~」
んで深夜2時に出発した。
俺の当時のマシーンはスティード400という単車。
ぶるる~ん
首の太い男も400のZZ-Rという単車だった。
俺と背中の大きな男はたのしげに集合したんだ。
過酷な旅とは知らずに…
わかはげの至りか、
すすむ~ すすむ~
僕たちはすすむ~♪
曲がる~曲がる~
君の太い腕で~♪
出発し、すぐ豪雨に見舞われた。
夏だったが、寒く、視界は最悪。
夜なのにサングラスして、雨なのに傘はさせない(バイクでさしてみて!)
靴を逆さにすれば、ドシャっと水が出る。
鼻から息をすればドシャっとハナミズキの音色がする。
振り向けばヤツがいる。
太い腕の男の腕はしぶきに濡れ、たくましかった。
雨の中、夜中走り続け、
日は昇りはじめ、
雨はやんだ。
なんてことだ。
そこは見知らぬ土地。
何県かもはっきり覚えていない。
トンネルからぬけ、
地平線の見える田んぼの道。
見たこともない、淡い景色は、雨上がりに現れた。
はじめて心の底から、景色を見て感動した。
胸のなかが、感動がこみ上げた。
美しい、輝く広大に広がる景色に、セピア色のフィルムをかぶせたような、
とても神秘的だった。
俺と腕の太い男は黙ったまま、ゆっくりと流れる景色の中で
アクセルをにぎりつづけた。
そのにぎる腕にはたくましい血管が浮いていたんだ…
続く…