海外でサーバーに侵入し攻撃することなどで、国や重要インフラへのサイバー攻撃を防ぐ「能動的サイバー防御」導入で、政府は当初検討していた通常国会への関連法案提出を見送る。
「通信の秘密」を保障する憲法21条との兼ね合いなど、法解釈をめぐる調整が難航。岸田政権の支持率が低迷する中、賛否が割れそうな法案の審議は難しいとの判断も働いた。
日本政府はこれまで、海外からのサイバー攻撃には防御に徹する受動的な対応にとどめてきた。しかし、一昨年末に改定した国家安全保障戦略に、平時から相手国などのサーバーに侵入して活動を監視・情報収集し、攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入を明記した。
現行法ではこうした行為は行えないため、電気通信事業法の「通信の秘密の保護」の規定に制限を設けるなど関連法の改正を検討。昨年中にサイバー攻撃への対処能力強化をめぐる課題を議論する有識者会議を立ち上げ、早ければ通常国会に法案を提出するシナリオを描いていた。