効果をあげていたAI税務調査に加え、調査官の作業効率を劇的に向上させる新システムがまもなく稼働する。その恐るべき中身とは。
フリマアプリの副業収入も摘発の対象に
AIは疲れず、不平不満を言うこともない。国税ではこれまでもインターネットを使った情報収集を行っていたが、AIを活用すればその作業に人手を割く必要はなくなる。対象が決まれば、KSK2を使って個人と法人の税務資料、過去の課税額などを照合し、数字のズレや不一致を即座に見つけ出す。
元国税職員でフリーライターの小林義崇氏が言う。
「SNSで派手な消費活動を誇示している人物がマークされるということが都市伝説的に語られてきましたが、実はあれは本当です。私自身、相続税担当だった現役時代は、経営者を調査する前にはブログなどを確認し、生前の行動を調べていました。ただ、これを人間が逐一行うことには非常に手間と労力がかかっていた。AIとKSK2を駆使して、ウェブ上の記事やSNSの情報を資料として直接取り込む仕組みができれば、調査の効率は格段に上がるはずです」
昨今はSNSで散財ぶりをアピールするインフルエンサーも多いが、9月以降、彼ら彼女らは税務調査という招かれざる客を迎えることになりそうだ。
そのほかにも、フリマアプリなどでの副業収入は少額のため申告漏れを見逃されてきたケースが多いが、9月以降は指摘される可能性が高い。また、YouTubeの広告収入をはじめとした海外法人からの支払いも申告漏れが多かったが、KSK2では、海外からの送金データと確定申告の金額を照合することが可能となるとされる。
“課税逃れ”の外国人富裕層も大慌て
日本人による海外への資産移転についても、厳しく監視されることになるという。前出の小林氏が明かす。
「国税は10年以上前から海外口座などを使った税金逃れの対策を進めており、一定額を超える海外への送金については銀行から国税への報告義務があります。さらに近年、CRS(共通報告基準)という仕組みにより、各国の国税当局同士が情報交換を行っており、この連携はどんどん活発になっています」
在日外国人の資産も監視は強まると考えられる。事実、情報に敏感な中国人富裕層の間ではすでに警戒感が高まっており、9月を前に資産を整理する動きも活発化している。東京湾岸エリアに複数のタワマン物件を所有していた中国人経営者(50代)は、本誌の取材にこう語った。
「もう少し値上がりするのを待とうと思っていたが、最近、全部売却した。これまで、法人名義で所有していた物件を賃貸に出し、賃料を個人の所得とすることで『節税』していたんだけど、そろそろ潮時だね。日本から撤退するという仲間も少なくないよ」
こうした課税逃れは言語道断としても、きちんと納税をしているつもりの人でも申告漏れは起こりうる。KSK2の導入にあたり、納税者はどう対応すればいいのか。
導入に備えてやっておくべきこと
YouTubeチャンネル「税金坊」を運営する元国税調査官の根本和彦氏は、経費の領収書や売り上げに関する契約書の保管といった基本的な記録管理が、これまで以上に重要になると語る。
「クレジットカードの電子明細も証拠にはなりますが、購入した品目の詳細までは記載されないことが多い。何を買ったかの立証としてはやや弱い面があるので、領収書の保管は重要です。同様に、相続・贈与についても現金の手渡しではなく銀行振り込みという形にしておくほうが分かりやすくなります。あわせて贈与契約書という書面をきちんと作成し、保管すべきでしょう」
国税から文書が来たり、調査官が訪ねてきた際も、慌ててはいけない。
「申告漏れの確認を求めるために文書を送る『行政指導』は増加するでしょう。ただ、行政指導は税務調査とは区別され、正しく修正申告を行えば追徴税は課されません。実際に調査官が税務調査に来た際に『わかりません』『後日回答します』と対応するのは問題になりませんが、嘘や誤魔化しはすぐ露見すると心得るべき。自分の資産は把握されていると思っておくことが重要です」(前出・小林氏)
9月24日以降、我々の資産は丸裸になる。相続や確定申告の際には、これまで以上に注意をしたほうが良さそうだ。



