「ゲーム」というと、楽しいエンターテインメントである一方、仕事や勉強とのかかわりにおいては「好ましくない」というイメージが強いものです。しかし、スタンフォード・オンラインハイスクール校長を務める星友啓先生が上梓した著書は、その名も『なぜゲームをすると頭が良くなるのか』(PHP研究所)というものでした。ゲームが頭や心に与える影響について、最新の研究結果を交えながら解説してもらいます。
欧米ではすでに「ゲームは頭にいい」と認識されている
「ゲームが人間に及ぼす影響」というテーマに私が興味をもったのは、欧米と日本のあいだの知識ギャップにあります。日本ではいまだに「ゲーム=悪」という風潮が強く残っていますが、欧米の解釈は異なります。自著『なぜゲームをすると頭が良くなるのか』(PHP研究所)のタイトルにもあるように、ゲームにはいい面がたくさんあるのです。
1970年代のアーケードゲームにはじまり、家庭にゲームが浸透していく数十年の歴史のなかで、ゲームが及ぼす効果に関する研究は主に欧米中心でなされてきました。さらに、研究レベルだけでなくメディアレベルでいっても、欧米ではすでに「ゲームは頭にいい」という論調が一般的になっています。
私は教育を専門のひとつとしていますが、ゲームに限らず教育に関しても、世界の最先端の研究論文や研究成果を翻訳し、日本のみなさんに紹介するということをひとつの「芸風」にしています。ゲーム研究に関しても翻訳してみなさんの目にとまるようにすることで、欧米と日本のゲームに対する認識のギャップを少しでも減らしたいと考えているのです。
ただ、私自身の経験でいえば、じつはゲーム研究について知る前から、「ゲームは頭にいいのではないか?」という印象を抱いていました。私は東大に通っていたため、周囲の友人たちは一般的に頭がいいといわれる人間です。そして、彼ら彼女らには、明らかにゲーム好きが多かったのです。
渡米後も、その印象は変わりません。私は有名IT企業が多いことで知られるアメリカのシリコンバレーに住んでいますが、MetaやGoogleなどで働く友人には、やはりゲーム好きが多いのです。これには、IT企業勤務ということで日常的にコンピューターを使っていることの影響があるのかもしれません。しかし、いずれにせよ、優秀な人ほどゲームを楽しんでいるというのが私の印象です。
ゲームによって伸びるたくさんの能力
実際、数多くの研究でゲームの好影響が示されています。たとえば、ゲームをすることで「問題解決能力」「集中力」「情報処理能力」など、たくさんの能力が伸びることがわかっています。
問題解決能力が高まるメカニズムについては、解説不要かもしれません。ジャンルを問わず、そもそもゲームとはなんらかの問題を解決するものだからです。パズルゲームのようにわかりやすく問題が提示されるものだけでなく、たとえばRPGでも主人公の役割を担って自分なりに「どうすれば最終目標を達成できるか?」と考えながらストーリーを進めていきます。ゲーム自体が問題解決そのものなのですから、ゲームにより問題解決能力が伸びるのは当然とも言えます。
一方、集中力や情報処理能力については、シンプルに「ゲームがおもしろい」というのが大きな要因であり、加えて私たちの欲求も深く関係しています。人間は「心の3大欲求」というものをもっており、それは「自発性を発揮したい」「有能感をもちたい」「他人とのつながりをもちたい」の3つです。
ゲームがおもしろいことで、多くの人が「ゲームをやりたい」と思います。すると、自発性を発揮してやりたいことをやるため、自ずと集中することになります。そうして集中力が高まるのです。また、パズルゲームなどが顕著ですが、次々に提示されるいろいろな問題を繰り返し解くことにより、情報処理能力の向上にもつながります。
ゲームをすればストレス耐性や自己肯定感も高まる
加えていうなら、ゲームはメンタル面にも好影響を与えます。ゲームを日常的に楽しんでいる人は、本人が自覚しているかどうかはともかく、ゲームによってストレスを解消しています。そのため、ゲームをやらない人と比べてストレスとうまくつき合える、ストレス耐性が高いこともわかっているのです。
あるいは、ゲームによって「自己肯定感」が高まることもわかっています。このことについては、先の3大欲求が関連しています。ゲームのなかで問題を解決できると、「自分にはできる」という有能感をもつことができますし、近年人気のオンラインゲームなどであれば他人とつながることもできます。つまり、「ゲームをやりたい」という自発性の発揮も加え、心の3大欲求を満たすことができるというわけです。
人間の心が本能的に求める欲求をすべて満たせるため、「自分はきちんとやるべきことをできている」「このままでいいんだ」と自己肯定感が高まるというロジックです。




