知恵さん、僕のあのサンダル、どうしたんでしょうね?
ええ、夏、あのマンションから戸建てへ引っ越す時、
どこかへなくしたあのサンダルですよ。
知恵さん、あれは好きなサンダルでしたよ、
僕はあのときずいぶんくやしかった、
だけど、いきなり姿を見なくなったもんだから。
そうなのです。私にはサンダルがないのです。
ちょっとコンビニへ行くにもスニーカーを履かなければならないのです。
私が以前持っていたサンダルは古代ギリシャ人が履いているようなサンダルでした。
今は主流ぽいのですが私が買った当時はとても珍しかった。
なので簡易的に作りではなく、かなりしっかりした作りでした。
誰かの意欲作という感じでした。
かかとをしっかりと固定する止めるところもかなりフィットしていて
長時間歩いても痛くない。
価格も高く5000円くらいしたと記憶しています。
しかし長年使用していたサンダルがなくなってしまった。
それ以来、また買えば良いかと思っていたが今日5年目になるのかな?
大和くんたちの歳が今年の4月で5歳だから5年にもなるのか。
大和の大きくなった身体をみて歳月の流れを感じる。
この事を知恵さんに話したところ
「そうなの?サンダルが必要なの?なんでいままで言わなかったの?」
「いや、サンダルぐらい自分で買おうと思っていまして」
「ふ~ん。そうなの・・・ないとやっぱり不便?」
「ちょっとしたところに出かけるときは不便ですかね」
何気ない夫婦の会話である。
そして出来れば安くて良いサンダルをと思い、機会があればサンダルを探すようになった。
そして1,000円くらいの良さそうなサンダルを見つけ、記憶していたお昼時である。
妻が買い物から帰ってきた。
大和くんと小町さんから大歓迎を受ける妻からある物を手渡された。
「はい旦那さん買ってきたよ」
サンダルである。
なかなかの履き心地が良さそうではあるが何気なく薄いし、軽かった。
さっそくそれを履いてコンビニに行こうと値札を外した。
「知恵さん、これ・・・150円なんですか?」
「そうよ。安かったから買ってきたのよ」
私は2秒ほど記憶障害を患ったが普段の気丈の強さに助けられた。
サンダルって150円で買えるものなのか?
ハイスペックおにぎりより安い。
でもほしいと言っていた物を買ってもらえるのは非常に嬉しいものだ。
私は足取り軽く、コンビニへと出かけた。
昔履いていたサンダルとはやはり違った。
なんというか歩く振動が直接足の骨に浸透する感じだ。
結構足にきていると言うか骨にきている。
このままだとコンビニにつく迄に足骨折するのではないかと思うくらいだ。
でも妻が買ってくれた物は純粋に嬉しいものでこれからも痛みに耐えながら使い続けるだろう。
そして、今夜あたりは、足に、静かに痛みが積もっていることでしょう。、
そしてコンビニから帰ってきた僕は布団の中で痛みをこらえながら
埋めるように、静かに、寂しく。