大雨の中、帰宅した。
元の父親が経営していると昔母親に聞いた
小さな居酒屋の電話番号をネットで調べ、
躊躇するといけないから、何も考えず、
勢いで電話をかけてみた。
「はい、○○です。」
女性(現在の奥さん)が出たら切ろうと思っていた。
少し高めだけど、男性の声。
「…もしもし。
…間違えました、すみません。」
「はいはい。」
切ってしまった。
そのまま話し続けていていいのかどうか
迷ってしまった。
諦めずに「○○さんいらっしゃいますか。」と
聞けていれば。
30年も前のことだ。
声なんて覚えていないんだから仕方がない。
一歩踏み出せた自分が
ここに、いた。
窓の外では雷が
大きく響いていた。