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「朝霞市に住む高齢者の移動にタクシー代の補助をお願いします」
請願第5号に賛成の立場で討論します。
この請願は、今ある制度のはざまにいる方へ、タクシー代の補助を実現してほしいという請願の主旨です。
朝霞市では外出が困難な方へ、さまざまな支援を行われています。
障害のある方へは、福祉タクシー券の補助、自動車燃料費補助、ICカードの補助があります。対象は、身体障害者手帳1,2級、下肢機能障害3級、精神障害者保健福祉手帳1,2級、療育手帳〇A、A,B所持者となっています。手帳保持者全体で5300人のなかでも、利用できるのは限定的です。
高齢者への外出支援では、高齢者移送サービスがあります。対象は、寝たきりの状態、または常時車いすの状態にあり、移送用車両を利用しなければ移送が困難な方に限られています。332人が登録しています。
要支援1から要介護5に認定された方の人数は、今年3月31日の時点で5,164人です。そのうちこの高齢者移送サービスを利用できるのはわずか332人です。
もちろん要介護認定を受けている方のなかにも歩くことができる、バスに乗ることもできる方もいます。しかし、要介護3や4の方でも常時車いすでなければ、この制度を使うことはできません。要支援要介護認定を受けている5164人のうち今ある唯一の外出支援である移送サービスを利用できるのは、わずか332人だということです。
朝霞市は、バス鉄道共通ICカードへの利用補助事業を実施しています。16,000人の方が利用し、外出の際に利用しています。
買い物に困っている方への支援として、移動販売車による買い物支援もおこなわれています。市内循環バスの運行事業者が撤退を表明するなかで、継続して運行していただくように粘り強く交渉を続けていただいています。また交通空白地区にワゴン車を活用して実証実験も行われました。
さまざまな取り組みで、これまで民間バスや市内循環バスを利用できなかった方たちから、利用できるようになってうれしいという声も寄せられています。しかし、それさえも利用することが困難な方がいます。
駅やバス停まで移動することが困難な方がいます。近くにバス停があったとしても、バス停まで行くことやバスを待つこと、バスに乗ることも困難な方もいます。特に通院の場合は、医療機関の近くにバス停があるわけでもなく、時間も定まらないため、やむなくタクシーを利用せざるを得ない方もいます。
社会福祉協議会が実施している地域の支えあい事業である「あいはぁと事業」のなかにも、ずっと訴えていますが住民同士の支えあいの一つとして車を使っての外出支援はできないことになっています。
請願では、「介護保険を受ける前のはざまにいる高齢者が、元気で活動できる場所へ自由に動けるように」とあります。
コロナ禍で外出を控えることを呼びかけられたときに、さまざまなイベントが中止になり、集まっておしゃべりすることさえ自粛が求められて、多くの方は自宅で過ごすことを余儀なくされました。そのあと、高齢者のみなさんのなかには、介護度がすすんだ、認知症がすすんだ、歩けなくなってきたという報告がありました。外出すること、社会参加できることが介護予防につながり、
いきいきと暮らすことに不可欠であったと実感させられました。
すべての方に移動する権利が認められています。交通権とは、国民の移動する権利であり、憲法22条、居住移転及び職業選択の自由、25条、生存権、13条、幸福追求権などを実現する具体的な権利です。全ての人が健康で文化的な最低限度の生活を営むために、必要な移動する権利を保障されるようにしていくことが自治体の責務です。外出したいという願いは、決してぜいたくでも、わがままでもありません。我慢しなければならないことではありません。
高齢者の運転する交通事故の報道が相次ぎますが、運転免許の返納に踏み切れない理由のなかに挙げられるのは、車がなければ、通院や買い物にも困るということです。
請願を提出された会のみなさんは、4年前からデマンドタクシーを考える会を立ち上げられ、学習会を開いたり、署名を集めたりという活動を続けてこられました。私自身も、高齢者のみなさんの困難な状況や切実な要求について
何度となくお話を伺ってきました。この4年間のなかでも、元気に歩いて署名を集めていらっしゃった方も、歩くことが難しくなった方、亡くなった方もいらっしゃいます。失礼にあたるかもしれませんが、1日も早くという願いは切実です。制度のはざまにある人がいるなかで、ずっと手が届いていない状況が続いているということです。
高齢者福祉計画のなかに、「新たな外出支援策の検討」と言葉が明記されました。この6月議会でも、これまでの議会でも、この外出支援について多くの方が質問の中で取り上げていただきました。今ある外出支援策のなかで、そのはざまにある方たちをどう支援していくのかが課題であることは、多くの方の認識であることがわかりました。
この請願には、いつからとか、どの範囲を対象にしてほしいとかは書かれていません。対象をどう考えるか、予算はどれくらいかかるかなど、この請願審議で一度も議論もしていません。
バスに乗ることが困難な方が、別の支援で外出してもバス事業者の経営を圧迫することにはなりません。
この請願を出された方たちのなかには、高齢の方が多く、「高齢者への支援を」という請願ですが、自分たちさえよければいい、高齢者だけ特別扱いしてほしいと考えていらっしゃるわけでもありません。子育て中の方や障害のある方への支援をどうするのか、財源をどうするのか、国に対してどう財源を要望するのか、考えていくことは、私たちの仕事です。
制度のはざまにあり、外出が困難な方に、憲法でも保障されている移動する権利の実現のために、一日も早く実現できるように請願に賛成していただくようにお願いします。