■法曹界の「秘密の森」にただ独り立ち向かうかわいそうな検事!´▽`)/ | 韓国・ソウルの中心で愛を叫ぶ!

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ポッドキャスト韓国語マガジン“サランヘヨ・ハングンマル”の編集長が、韓国と韓国文化の見つめ方を伝授します。

「設計された真実、皆が動機を持った容疑者だ」

 

 

●「アタル」彷彿させるチョ・スンウさんの演技

 

今日ご紹介する韓国ドラマは、私の忘れられないドラマの一つである『秘密の森(비밀의 숲)』です。「tvN」で2017年に最初のシーズンが、昨年シーズン2が放送されたのですが、Netflixにある(→ホームページ)ので推薦しようと思いました。ヾ(≧∇≦)〃♪

 

何が忘れられないかといっても、主人公ファン・シモク検事を演じたチョ・スンウさんの演技です。ちょっとだけ、昔の中居正広さんのドラマ『ATARU』のサヴァン症候群の主人公を思わせるのですが、いちおう、脳の手術によって常人のような喜怒哀楽の感情が感じられなくなっているために、人のしぐさを観察し、分析して言外の真意を見つけ、事件現場でも常人の見つけられない手がかりに気づくわけです。

 

「いちおう」と書いたのは、話が進むにつれてその症状が回復しているのか、だんだん少しずつ感情も表現するようになるからで、人を本気で心配する時に怒りを爆発させたりもします。いずれにせよ、その特殊な設定のゆえに、検察、警察という巨大な権力の中で、ほぼすべての人たちが、人間であるがゆえに完全に清潔ではいられず、ほとんど不可抗力のように不正に染まっていく、その権力の闇、「秘密の森」をたった一人でかいくぐりながら、真実を暴いて正義だけを貫いてみせます。

 

その姿があまりにも切なくて、その何が起こっても、どんな苦境に立たされても、淡々と相手を観察する、そのとぼけた表情が逆に愛らしく、その上で、人間的な結婚や家庭という日常的幸福を願えない分だけ、その孤独な境遇に胸を打たれます。

 

私はこのドラマを見る前は、2014年のドラマ『神様がくれた14日間(신의 선물 14일)』のお調子者の探偵キ・ドンチャン役でチョ・スンウさんを見ていたので、どうしても同じ人物が演じているとは思えない、俳優の演技力による変わり身のすごさに感動せざるを得ませんでした。

 

それとともに、検察の中では彼一人であっても、もう一人、現場で闘う警察のほうには、そのような彼を信じて助けてくれる女刑事がいて、そのヒロイン役をペ・ドゥナさんが演じています。彼と彼女との間の、恋愛でも同僚愛でもない、志を同じくする人間同士の「種(機関)」を超えた愛情関係がまたとても美しいです。

 

 

●連動する韓国の現実の検察改革問題

 

あと、もう一つの見所は、これはシーズン2で主に描かれるのですが、このドラマを通して知らされる、韓国の犯罪捜査機関の、駆け回る競走馬のようなダイナミズムです。実際、捜査機関という不動であるべき権力が、韓国ではいつも問題にされて、実際に日々変化の真っただ中にあるのですが、その実際の内幕を知ることができます。ドラマなのだから脚色だろうというのは、日本の刑事ドラマではいえることでしょうが、韓国の場合、日々のニュースがはるかにその先を行っているドラマ以上の様相を呈しているため、かなりリアリティがあるだろうと思います。

 

それは南北韓国が今だに戦争中の状態にある中で、実際に国防の危機といういいわけのゆえに権力が横暴さをふるった、その一種の報復と共に、痛みの歴史を繰り返さないための身もだえが、まさに韓国の今の日々動き続ける権力構造改編のエネルギーであるといえます。

 

かつての独裁政権時代の韓国では、政府も検察も国会も実際に善悪を超えた権力でした。1995年の『砂時計(모래시계)』というドラマを見ると、パク・サンウォンさん演じる検事が、武装したヤクザたちに取り囲まれた時に、「私は検事だ」と一言いうだけで、皆たじろいで退くという場面があります。法も何もすべてを超えた恐ろしい暴力団でさえも恐れる、法も何もすべてを超えた恐ろしい検察権力だったということになります。

 

その泣く子も黙る検察組織を改革するために、初の左派政権であった金大中政権と盧武鉉政権が取り組み、文在寅政権でそれを実現したのが、今年1/21の「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」の発足でした。これまで検察が独占していた起訴権を、行政府である大統領直属機関も持つことによって、検察権力自体を制限できるようになったわけです。もちろんすぐに「これは三権分立を謳う憲法に違反するのではないか」という右派陣営の訴えが起きましたが、1/28、憲法裁判所は合憲決定を下します。

 

そのように、実際には1996年の市民運動団体による最初の要求以来、待ちに待たれて鳴り物入りで出発した「公捜処」ですが、現在、初めての捜査でその能力に疑問が持たれているのが、「公捜処」によるある検事の勾留状請求を昨日、ソウル中央地裁が棄却したという事態です。容疑を充分立証できずに発足以来第1号となる逮捕状と勾留状請求がいずれも棄却されて、能力不足と、結局は独立捜査機関を謳いながらも次期大統領選に影響を与える政治目的で動いているのではないか、という疑いが広がっています。

 

『秘密の森』シーズン2はまさにこの検察改革の話であって、今のこの動きの一歩手前にあった、検察改革における検察と警察の捜査権調整の問題をテーマとしていました。ドラマにおいてはその論争を詳細に再現してくれながら具体的な事例を描いて問題提起する形で終わっているのですが、これは実際に、昨年1/13に刑事訴訟法と検察庁法が改正され、刑事事件の司法手続きにおいて、検事による捜査指揮権が廃止され、警察に捜査の終結権が与えられたという現実とピッタリ連動しています。

 

つまり、日本でも、犯罪発生においては警察が捜査を行って容疑者を逮捕しますが、すぐにそれを検察に送って、検察の指揮を受けながら捜査を補充し、起訴するか否かの決定を検察が下すことになっています。ところが韓国では今や、検察と警察の関係が「指揮」から「協力」へと変わり、逮捕した容疑者を検察の判断を仰がずにも「嫌疑なし」として捜査を自主終結できるようになったわけです。

 

すなわち簡単にいえば、韓国では今や捜査権を持つ主体が、かつての検察独占状態から、一気に検察、警察、「公捜処」と三つになったということになりますよね。すごいですよね。まさに国家体制が今もアップデートの真っただ中にあります。

 

 

●大統領秘書室で父のため号泣する検事

 

ということで、面倒な話はこのくらいにしても、本当にチョ・スンウさん演じるファン・シモク検事が素晴らしいです。人間的には障害を抱えているように見えながらも、実は最も正常な人間であって、理想的な法の執行者であるという姿に尊敬と憧憬を感じます。逆にいえば、法も人間が行使するのであって、結局は人間の問題以外の何ものでもないということですよね。

 

そういう意味で、個人的にはシーズン1に出てくる、シン・ヘソンさん演じるヨン・ウンス検事が忘れられないです。すべての登場人物の中で一番かわいそうな若手女性検事です。お父さんがファン・シモク検事に「娘を頼む」と話すシーンもあるので、私もまたお父さん視点で見てしまったのかもしれませんが、検事である彼女が、お父さんのために大統領秘書室で、泣き崩れて号泣する場面が圧巻です。

 

あと、次にかわいそうで忘れらないのが、イ・ジュンヒョクさん演じるソ・ドンジェ検事です。彼はまさにファン・シモク検事とは正反対の権力におもねることを得意技とする立派な悪役なのですが、しかし、そうであっても出身が貧しく家族を愛する叩き上げの努力派であることによって何より人の気持ちが分かり、悪いことはしても決して憎めない人物として描かれています。そして、シーズン2では本当にかわいそうなことになってしまいます。

 

ということで、もう見終わってかなり経過していても、テレビで検察関連のニュースを見るたびに、それらを身近な問題と感じさせるとともに、思い出して懐かしくならざるを得ない『秘密の森』がおススメです!ご覧になって後悔はさせません!♪ヽ(´▽`)/

 

 

【あらすじ】 子供時代に脳手術を受けた影響で感情を失い、理性だけで行動する冷徹で孤独な検事ファン・シモク(チョ・スンウ)。日常のように目の当たりにする検察の内部不正を断ち切ろうとしていたシモクの前に、現れた第一の死体。その後、相次ぐ第二、第三の死体。検察の内部不正を覆い隠すために相次いで起こる殺人の中で、周りの人すべてが殺人の動機を持つ容疑者として次々と浮上する。時には全員が犯人のように、時には全員が無実であるように感じられるが、そんな中、シモクはだんだん犠牲者たちの共通点に気付き始めるのだが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ドラマ『秘密の森(비밀의 숲)』予告編。

 

 

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