■韓国的定番テーマ3点セットが揃った映画!≧∇≦)〃♪ | 韓国・ソウルの中心で愛を叫ぶ!

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ポッドキャスト韓国語マガジン“サランヘヨ・ハングンマル”の編集長が、韓国と韓国文化の見つめ方を伝授します。


韓国的な、あまりにも韓国的なテーマを三つ統合した映画『私たちは兄弟です』


●韓国定番テーマ1「海外養子」


先月観た、あまりにも韓国的な定番テーマ3点セットが揃った映画『私たちは兄弟です(우리는 형제입니다)』(チャン・ジン監督)です。私はこの手の話が大好きですが、でもノワール映画をよく撮り、昨年もチャ・スンウォンさんが性同一性障害を抱えたスゴ腕刑事に扮する『ハイヒール』を撮ったチャン・ジン監督としては、多少平凡な作品だという感もあるかもしれません。


ここで私が考える韓国定番テーマ3点セットというのは「海外養子」、「宗教問題」、「親子の愛」になりますが、韓国において最も感情を揺さぶるその素材のゆえに、コメディでありながら涙なくしては見られない作品となっており、何より主人公の兄弟を演じる二人の演技がすばらしいです。


母子家庭に育った兄弟、チョ・ジヌンさん演じる兄のサンヨンと、キム・ソンギュンさん演じる弟のハヨン(「サン」が「上」で、「ハ」が「下」という字)は、幼いある日、とうてい子供を養っていくことが難しい状況に陥った母親によって孤児院に預けられ、さらにその後、サンヨンのほうが米国に海外養子として引き取られていくことで、生き別れとなってしまいます


これらの状況は、韓国では本当によくあったことで、分断と動乱の艱難の中、1970年代まではまともに生きていくことが難しい国家的食糧難に直面しながら、事実、私の少し上の年代の人たちには「将来の夢が一日三食食べることだった」という人も多いです。


それゆえ、これほど親子の紐帯が強い文化の中にあっても、自国が貧しいがゆえにまともに育てられない愛する子供を、先進国で立派に育てるのだと自らにいい聞かせながら養子に送らざるを得なかったとして、昔からドラマに映画にこの問題が多く取り上げられてきました。


ちなみに我が息子の英語の家庭教師も、幼くしてスウェーデンに養子に出された韓国男性で、今は自らのルーツである韓国に帰ってきましたが、スウェーデンの養父母との関係も厚くときどき帰国もしながら、いまだに韓国語はほぼ話せません。



●韓国定番テーマ2「宗教問題」


それが第一のテーマならば、2番目は「宗教問題」。主人公の二人は、現代に至り、生き別れた家族の再会を紹介するテレビ番組で再会するわけですが、この番組というのはKBSでつい2010年までやっていた人気番組『テレビは愛を載せて(TV는 사랑을 싣고)』がモデル。


そこに出演して、定番の抱き合って大泣きする再会シーンを繰り広げた二人ですが、しっかり手を握り合いながら、司会の質問に答えて互いの職業を明かしてみると、弟のほうは韓国でムーダンとして働いているといい、兄のほうは米国でキリスト教の牧師…。とたんに苦笑いしながら二人とも互いに握っていた手を離します。


韓国ではこの二つの宗教は、まさに犬猿の仲というか、互いを忌み嫌い、馬鹿にする傾向にあります。韓国の伝統的巫教の立場では、キリスト教は韓国人の東洋的信仰心を忘れた罰当たりな宗教に見えるし、キリスト教の立場では、巫教こそ未開な悪魔的宗教として見えてしまいます。


食事をしようとすれば、兄は「日々の糧をくださる天の父よ、感謝します」と祈り始め、弟は「私が料理したのに誰に感謝するんだ」と独り言のように文句をいいます。弟は弟で、人を見れば、「死んだお母さんが肩についていてこういっている」みたいなスピリチュアルな話をしてしまいます。このような二人は韓国の典型的な宗教人の姿でもあります。


このような二人ですが、母親の前ではやはり同じ兄弟として、そのような葛藤も問題なく解消されてしまいます。実は最初のテレビ出演の時に、一緒に兄に会うはずだった母親が、認知症を患っているがために行方不明になってしまうのです。テレビ局は責任を感じて、二人が母を探す過程をドキュメンタリーとして撮りながら全国に放送したために、あちこちでお母さんの出没情報が届くようになり、一行は各地を回りながらお母さん探しをするようになります。



●韓国定番テーマ3「親子の愛」


そのようにして最後のテーマが「親子の愛」です。ベテラン女優キム・ヨンエさん演じるお母さんが、本当に韓国の典型的なお母さんとして描かれます。前回紹介した『めまい』でもすごい演技を見せていましたが、今回も同じように認知症を患う母として、それに通じるものがあります。


私が個人的に印象的だったのは、「弟をいじめた悪者をこらしめるために兄が暴力を使った」ということに対して、母親が「よくやった」とほめるシーンです。確かにこのような言葉は日本人の目には、韓国の親の社会性のなさのように映りがちですが、韓国の親は、社会はそっちのけで自分の子供しか見えていないからこその韓国の親であるわけです。韓国では歴史的にずっとそれが許されてきた、というよりもそうであることを推奨されてきたからです。


朝鮮時代の韓国社会では、たとえば、親が子供の犯罪をかばったり、隠したりしても罪にはなりませんでした。親はそうすべきとされていたし、儒教の家庭倫理が社会の道徳の上にあったために、実際に、法律の上位に親子の愛が存在していたわけです。たとえば、国家の将軍が、戦地で受けた親の訃報に対して、戦いを放り出して故郷に帰って喪に服すことが正しいこととして推奨されました。もしもその訃報を無視して敵と戦うならば、その将軍は、たとえ国を勝利に導いたとしても、後からそのことによって国から罰を受けることになったわけです。


ということで、そういった三つの韓国の典型的文化を知るためにも、この映画はお勧めです。ところで、兄役のチョ・ジヌンさんがよい俳優であることは知っていましたが、私には今回、弟役のキム・ソンギュンさんがとてもいい役者として映りました。長い間、あまり日の当たらない脇役ばかりを最高にこなしてきたキム・ソンギュンさんですが、そろそろ主役としての光を放つようになってきたのではないかと思い、応援してきた立場として嬉しかったです。



【あらすじ】 幼い頃に孤児院で生き別れた後、30年ぶりに劇的な再会を果たしたサンヨンとハヨン兄弟!しかし、実際に会ってみると…本当に血がつながっているのかと思うような違いが?


さらに30年ぶりに会ったという喜びも束の間、弟が連れてきた母親が、兄に会う前に跡形もなく姿を消してしまった!母を見たという情報を追って二人の兄弟は全国を回る遠征に出かける!


口調も、スタイルも、職業も!あまりに違いすぎるこの兄弟!果たして消えた母を見つけ、失くした兄弟愛も取り戻すことができるのだろうか?





















映画『そして父になる』予告編。


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