今夜の「語り部シアター」は、合掌造りで有名な富山県の五箇山に残る「こきりこ節」がテーマでした。
たかやまじゅんさんは、五箇山へ夏と冬に訪問されたそうです。冬に行かれたときは、豪雪に遭って予定のルートが変更されたり大変だったようでした。
五箇山は、同じ合掌造りの里白川郷より、山深くて、空が狭く、隠れ里のような印象です。もう10数年前に職員旅行で訪問したきりですが、観光客もすくなく、とても静かでした。
さて「こきりこ節」ですが、詩人の西條八十が五箇山へ行って調べを進めたことがきっかっけで、いったん消えかかっていたこきりこ節が復活したそうです。今日、たまたま読んでいた本に、西條八十作詞 中山晋平作曲「緊縮小唄」というのを眼にしたところだったので、そのギャップが面白かったです。因みにこの小唄は、昭和初期の大学を出ても就職できないという不景気の頃の唄です。西條八十の話になると、また長々しくなるのでこのくらいにして。
今回は「こきりこ節」を5つの異なる歌や演奏で楽しませてくださいました。
1曲目は、五箇山筑子(こきりこ)保存会のみなさんで「こきりこ節」
伝承されてきたままの素朴な歌い方が、当時の里人たちの生活を想像させます。
2曲目は、姫神のシンセサイザーによる「コキリコ」
リズムがモダンでありながら、不思議と歌詞とうまく融合していました。姫神はNHKの「ぐるっと海道3万キロ」のテーマを演奏していましたね。
3曲目は、加賀山昭&オーケストラ・アンサンブル金沢によるライブの「こきりこ節」
加賀山昭さんの民謡の素晴らしさが際立っていました。オーケストラに負けていなくて、そのオーケストラも打楽器がかっこよく響いて、またライブ会場の大きい拍手は臨場感があり、感動が伝わりました。
4曲目は浜田真実さんの「筑子~こきりこ~」
ファンタジー風と紹介されましたが、その通りで、大胆な編曲で、わかりやすく、軽快。爽やかな風が吹き抜けるようでした。ニューミュージック風でもありました。
5曲目はコロムビア・オーケストラ・ブラスで「こきりこ節~マーチ風」
行進したくなるような、楽しいマーチでした。軽みの演出もあり、ブラスバンド独特の楽器たちが活躍していました。大がかりな編成のようでしたね。
今回は、聞いたことがあるようなとしか知識のない「こきりこ節」でしたが、もうメロディーを覚えるくらいになりました。1曲目からだんだんと近代、現代へとに近づいてくるような流れでした。編曲は自由自在に出来る時代ですが、保存会の皆さんの、往時を偲ばせるような原曲は何にも代えがたいですね。
西暦645年大化の改新にまで遡れる五箇山。平家の落人伝説、流刑地、加賀藩の鉄砲火薬に使う煙硝も秘密裏に作っていたという、思いがけない話もたくさん聞けました。こきりこは7寸5分(23㎝)の竹2本で拍子を取るそうです。こきりこの語源は山伏の「こけら経」がなまったとか、ヘブライ語だとか諸説あるとのことですが、長い歴史の中で、口伝えでつなげてきたものは、結論づけられない神秘性があって魅力を感じます。
こきりこ節のいろいろなバージョンを楽しませていただきました。今度五箇山を訪ねるときはコキリコ節とセットで楽しみたいですね、やはり合掌造りが雪に覆われる頃が良いでしょうか。