前回の投稿から1週間ほど経ってしまいました。では続きです。
会場内を散歩していてもやはり日差しが強くてかなり暑く、上半身裸の人も多く見られました。おそらく僕たち日本人より現地のスロバキア人やその他欧州系の人々の方が一般的には暑さに不慣れでしょうから、この天気は彼らにはまあまあキツイのではないかと思います。しかし苦しそうな様子の人はおらず皆さん笑顔で心底楽しそうでした。
このように裸の人多し。
しばらくするとBLACK ICE WORLD TOUR時からの顔馴染み、赤い角の売り子ペッツに遭遇。残念ながら前回のウィーンでは会えなかったので、彼とは2015年以来となります。お互い抱き合って再会を喜びしばし談笑。その後「喉が乾いているのでビールを買ってきてほしい。」と10ユーロ札を渡されました。客をパシリに利用する(しかも酒)とは。。。お安い御用ですぜ(笑)。長い行列に並びに行って冷たいビールを買ってきてあげましたよ。
それから少しぶらぶらしたところ前座が始まりそうな時間になったので「Golden Circle」へ戻りました。すると一人の男性から声をかけられたのですが、少し談笑したところこんなことを言うのです。
「キミはドニントンのビデオを観たことがあるだろ?」
「もちろん。」
「あのオープニング、最初にAC/DCの旗が映るのわかるかい?』
「ああ、確かそうだった気がする。」
これですね。「LIVE AT DONINGTON 」より。
「あの旗を掲げているのはこのオレなんだよ。」
「ええ〜ー!!まじで!!」
「本当さ。」
「スゲ〜!!」
てことで記念撮影。ただ、上の画像と比べても。。。本人かどうかはわからん。
しばらくすると前座「プリティー・レックレス」の演奏がスタート。ウィーンの時と同じバンドです。個人的にはさほど興味をそそられるほどではなかったので特に書くことはありません。場内はまあまあの盛り上がりだったと思います。
前座演奏中。
前座の演奏が終わるとあとはAC/DCの登場を待つのみです。ここで僕はあることに気付きました。それは、場内に流れる音楽が前回や前々回のツアーとは異なっていたことです。以前は開場から前座登場までは「70〜90年代のHM/HR色々」、前座が終わりAC/DC登場までが「バディ・ガイ(たまにローリング・ストーンズ)」だったんですが、今回はAC/DC登場前になっても「70〜90年代のHM/HR色々」のままでした。
個人的にはAC/DC登場直前に流れるバディ・ガイがまるで「嵐の前の静けさ」のようで好きだったんですけどね。まあ、些細なことですけど(笑)。
AC/DC登場直前のスクリーン。
AC/DC登場直前の場内。まるで地平の彼方まで観客が続いているよう。
同じく。
しばらくするとオープニング・ムービーがスタート。それが終わるとアンガスが「If You Want Blood (You've Got It) 」のリフを刻み始め、とうとうスロバキア史上初となるAC/DCブラチスラヴァ公演の始まりです!!
オープニング・ムービー中。
「それがその国初となるAC/DCのライブ」という公演は、僕はこれまで2010年にブルガリアとルーマニアで経験していて、今回のスロバキアが3カ国目となります。以前の2カ国の観客はどこか純粋で温かい雰囲気がありましたが、それと比較するとスロバキアの観客はかなりノリが良くあちこちで飛び跳ねながら拳を突き上げる人が何人もいるほどで、全体としてかなりの盛り上がりです。
またそれと同時に行儀の良さも併せ持っていてこちらが身の危険を感じるようなことはありません。スロバキアの観客は、例えるならまるで「行儀が良い」ことが特徴の北欧やオーストリアの観客に、「情熱」でおなじみのスペインの観客の「熱さ」を調味料としてふりかけたかのような雰囲気といえるでしょう。。
しかしそのような周りの盛り上がりとは裏腹に、この日の僕は前回のウィーンと比べると比較的冷静にライブを観ていました。ウィーンでは8年ぶりの生AC/DCだったが故に興奮して少々ビールを飲み過ぎてしまって細かいことをよく覚えていない状態だったので、今回は少し落ち着いてじっくり観てみようと思っていたからです。
そうすると前回のウィーンでは気付かなかったことや感じなかったことがいくつかありました。
まず初めに全体としてライブはやはりとても素晴らしかったです。「爆風を生む」と評された彼らのライブは健在でした。AC/DCはやはりAC/DCです。わざわざ海外まで足を運んでまでAC/DCを観られて本当に良かったと思いましたし、今後もAC/DC海外遠征は可能な限り続けたいです。興奮していようが冷静に観ていようがそれは変わりません。
それを前提として次に、冷静に観たが故に今回感じてしまった点について述べたいと思います。
ウィーン公演の投稿の際に、「全盛期からのリズム隊3人が全員入れ替わってしまったことにはさほど違和感がなかった。」という内容のことを書いたのですが、しかし今回ブラチスラヴァでより冷静に彼らの演奏を体感した結果、それについては考えが改まりました。少なからず違和感を覚えたからです。
耳ではさほど気にならなくても体全体がその違いに反応していたようで、「なぜかあまり気持ちが良くない。」、「なんか違う気がする。」、そのような微妙な「心地悪さ」を彼らの演奏中ずっと感じていました。
その原因は何だろうかと突き詰めて考えると、専門的なことはあまりわからないのですが、おそらく「リズム」、「グルーヴ」、「ノリ」、そのような言葉で表される「何か」が今までとは違うんだろうなと。つまりリズム隊の総入れ替えから生じる変化に僕の体は反応していたのでしょう。
次に、これは非常に書きにくいことではあるのですが、アンガスの衰えを感じてしまいました。といっても肉体的な老いのことではありません。ギター演奏の技術的な劣化です。元々以前のライブでも粗いというか、例えば「Thunderstruck」のリフやギター・ソロでの速弾きなどでは右手と左手のタイミングが合っていないというようなことは多かったと思いますが、今回はそれがさらに悪化しているように感じました。加えてただのリフを刻む際にもリズムが怪しい場面が何度か見られたように思います。
もちろん彼のロック・スターとしての存在感は全く色あせてはいません。一瞬で10万人以上の観客を熱狂させるオーラは健在です。そこは強調しておきます。ただ純粋に音楽の技術的な面だけに注目すると上のような印象を持ってしまったのでした。
以上が今回冷静に彼らの演奏を聴いてみて感じた点です。しかしあくまで個人的にそう感じただけですし、たまたまその日に限って僕の耳にはそう聞こえただけなのかもしれません。それにもっと音楽に詳しい方が聴けば、所詮素人の僕の耳なんぞ音楽的に全否定される可能性もあることでしょう。ですから話半分程度に聞き(読み?)流していただければ幸いです。
話を変えまして、セットリストや演出は前回のウィーンと同じでした。また個人的には中盤から体力的にキツくなってしまい、Golden Circle内のかなり端っこまで移動して座って体を休めながらライブを楽しみました。以前のAC/DC海外遠征ではそんなことは滅多になかったのですが。。。老いましたな。
「SECURITY」スタッフが客に混じってステージにスマホを向けていた(笑)
ラスト。
終演直後。
July 21 2024. Bratislava. SLOVAKIA
1. If You Want Blood (You've Got It)
2. Back in Black
3. Demon Fire
4. Shot Down in Flames
5. Thunderstruck
6. Have a Drink on Me
7. Hells Bells
8. Shot In The Dark
9. Stiff Upper Lip
10. Shoot to Thrill
11. Sin City
12. Rock n Roll Train
13. Dirty Deeds Done Dirt Cheap
14. High Voltage
15. Riff Raff
16. You Shook Me All Night Long
17. Highway to Hell
18. Whole Lotta Rosie
19. Let There Be Rock
Encore
20.T.N.T.
21. For Those About to Rock (We Salute You)
終演後は前回同様に世界中から集まった熱きAC/DCファンたちと記念撮影。しかし残念ながら撮影者が不明のため肝心の画像はいまだに僕には回ってこず。。。それが終わると本日の会場「OLD VAJNORY AIRPORT」とお別れし、徒歩で会場最寄り駅の「Vajnory駅」へ向かいました。
終演後の場内。
同じく。
駅へ向かう道。かなりの混雑でした。
同じく。
駅が近づくと面白い現象が。近道なのか何なのかわかりませんが、ある地点からスロバキアの皆さんは道路を外れて線路内に侵入し、なんとその上を歩いて駅を目指し始めたんですよ(笑)。さらに面白いのは(写真はありませんが)その線路上に駅員がいて交通誘導・整理を行なっていたという。。。これは駅員公認の線路侵入ということなのでしょうか? 謎です。 ちょっと日本では考えられないですね。
このように、
線路を歩くよ、どこまでも。
23時半くらいに会場を出て結局駅に到着したのは翌0時15分くらいでした。来た時は20分程度しかかかりませんでしたが、これだけ混雑していればそんなもんでしょう。後は臨時列車に乗れば10分ほどでブラチスラヴァ中央駅に到着できます。
しかし実はここからが非常に長くてくたびれました。臨時列車の乗車ホームへは小さな陸橋(到着した時にも渡った)を渡らなければならないのですが、その小さな入り口で人の流れが著しく滞留してしまっていて、それにより多くの乗客がここで長時間の足止めを食らっていたのです。
なんせ行列が全然前へ動きません。10分で数十センチしか進まないくらいでした。ただでさえライブ中に体力的にキツくなって端っこへと移動した僕でしたから、ここでの長時間の足止めにより一層体力を奪われたのは言うまでもありません。
結局何やかんやで陸橋を渡ることができたのが1時半過ぎです。駅に着いてから1時間以上、会場を出てからは2時間以上が経過していました。2時間なんてライブ本編の長さと変わりまへんがな。。。
陸橋から見た滞留する人の流れの様子。
陸橋を無事に渡りホームへ降り立つと幸いなことにすぐに臨時列車に乗ることができ、それからはこれまでの駅での足止めが嘘のようにわずか10分でブラチスラヴァ中央駅に到着。時計を見ると1時50分でした。
駅からは徒歩でホテルへ。途中まではそれなりにAC/DCファンが歩いていましたが、中心街からホテルのある住宅街に入ると雰囲気がガラッと変わり、誰もいない静寂に包まれた深夜の夜道をひたすら歩きました。余談ながら途中に墓地があったのがなんとも。。。
ブラチスラヴァ中央駅。
ホテル近くの道。
そして深夜2時20分くらいに無事ホテルに到着。しかし朝8時にはチェックアウトしなければならないため、慌ててシャワーを浴びて数時間だけベッドで横になることに。こうして長い長い一日がようやく幕を閉じたのでありました。
つづく