【佐野実の味に感動】 支那そば福々亭@伊東駅 | Perfumeとグルメの日記

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Perfumeと食べ歩き(主にラーメン)が好きです。
この2つのテーマについてのエントリーが中心です。

先週の日曜日に、『BBQ IN つま恋』を見たその翌日、休日を使って、静岡県の伊東温泉に一泊旅行に行って来ました。
夕方にホテルに着き、そのまま海の方に散歩に出かけました。
なぎさ公園から山に向かって、夕日の写真を撮ったり、砂浜に降り立ち、まるでアイドルのように波打ち際で海に戯れたりしてました。






ひと通り遊んだら、お腹が空いて来ましたので、この日の夕食です。
伊東駅の辺りで検索を掛けると、なんと、「ラーメンの鬼」として名を馳せ、惜しまれつつ昨年この世を去った、佐野実さんのお弟子さんがやっている、支那そばのお店があるではないですか。
ボクは、佐野さんのラーメンは、何年か前に、新横浜のラーメン博物館に出店されていたのを食べた事はあるのですが、ちゃんとした店舗では食べた事がありません。
戸塚のお店にも一度行きたいと思っておりましたのですが、なんせ関西人ですので、なかなか戸塚に降り立つ用事は生まれないのですよ。
そんなこんなしているうちに、もう食べられなくなってしまいました。


でも、あのラーメンに厳しい佐野さんから暖簾分けしてもらったお弟子さんのお店ですから、同じようなラーメンが食べられるという期待を持ってお店に向かいました。
場所は、伊東駅から歩いて数分のところです。
お店のリンクはこちらから
佐野さんのお店と同じ、『支那そば』の屋号が。
そして、分かりますかねえ?
暖簾の右下に、佐野さんの印が入っているんですが。






お店はカウンターだけ、メニューはラーメンの醤油か、塩かの2つだけ。
餃子やチャーハンなどはもちろん、ライスも含めてサイドメニューは一切ナシ。
「ラーメンも極めないで、なんで他のメニューをお客さんに出せるんだ!」という佐野さんの声が聞こえてきそう(笑)。
でも、そもそも、こっちの方が正論なんですけどね。
ボクは、醤油ワンタンラーメンにしました。
出てきたのがこちら。









まず、最初に感じたのが、盛り付けの極めてシンプルな構成。
そして、カウンターに置かれた丼を手元に引き寄せる時に感じたのが、「お、重い・・・」。
写真ではわかりにくいですが、やや深めの丼にたっぷりとスープが入っていて、後から説明する、こちらの自家製麺もたっぷりと入っておりました。
替え玉が前提の、博多ラーメンは約110グラムくらいですが、ここのラーメンは恐らく160
グラム以上はあったでしょう。
ですから、これまでのラーメン屋さんよりも丼が重いと感じたわけです。
先ほど書いた、サイドメニュー、ライスすら無い事の答えは、日本一旨い麺とスープをたっぷりと出すから、しっかりとラーメンで腹を膨らしてくれということなんでしょうね。



まず、スープをいただきました。




名古屋コーチンを主としたスープは、口当たりが誠に優しく、さらにボクが博多うどんを食べて、すっかり虜になった、これも自らは旨味を一切主張しないにもかかわらず、スープに深みをもたらす、アゴ(トビウオの幼魚)も使っているので、こちらのスープは、中華でもあり和風料理でもあるような、醤油が一切出しゃばらない本当に優しいお味でした。
これだけでもかなり感動したのですが、これに輪をかけて感動したのが、細めに作られた自家製麺です。






この麺を口に入れると、表面だけの歯ざわりが、誠に艷やかで、まるで絹ごし豆腐を口に入れたような錯覚に襲われます。
だけど反面、少し柔らかく感じて、茹で過ぎなのかとも思ってしまいます。
しかし、ここからが、佐野実直伝の秘技、この口に入った麺を噛んでみると、表面の艷やかさを通り越して、麺の中心にある1ミリ未満の、一番芯の部分の所が、「アルデンテ」になっていて、ここに歯を通した時に、『プチンッ』と芯を捉えて、見事に心地の良い歯ごたえが感じられるのですよ。
つまり、一口の麺に、2つの味わいと噛みごたえを感じさせるのです。
これで、佐野さんが生前によく言っていた、「麺にもこだわれ!」の意味がようやく解って、これだけで感動です。



実はこのお店はもちろん、支那そば屋では、普通のお店とは違い、「麺固め」は受け付けておりません。
これまでは、ボクは漠然とこの「麺硬め不可」を通りすぎていたのですが、このお店に来て、ようやくその意味が分かりました。
「麺硬め」とは、つまり麺の茹で時間自体を短くするわけです。
しかし、この支那そば屋さんの自家製麺を、単に茹で時間を短めにしますと、吟味した良質の小麦で作った自家製麺の表面の艷やかさを失って、口当たりの良さが台無しになってしまうだけなのでしょう。
ですから、ここでは、「麺固め」は受け付けていないのです。
恐らく、日本全国の「麺硬め禁止」のお店は、一部を除いて、麺の材料にこだわったお店なんでしょうね。



たった一杯のラーメンでしたが、それだけで、ラーメンの大事な事を分からせてくれる、貴重な一杯でした。
最後に1つ特筆したいのが、ここのご主人のラーメンを作る後ろ姿が、なぜか佐野さんそっくりに見えたことなんですよ。
ボクも、何度かテレビで佐野さんを見た事があるのですが、この福々亭のご主人の、麺の茹で加減を見ている、後ろ姿の肩のラインが、全く良く似ているように見えました。



皆さん、こんな事も踏まえて、休日にはこの辺りに散策に出かけたらよいのでは?