「時の針」は「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」のアンサーソング | Perfumeとグルメの日記

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「時の針」の歌詞をよく読み込むと、中田ヤスタカが昔に書いた「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」(以下、「PSPS」に略)が形とその中身を変えた物に見えてくるのです。


「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」の歌詞



「PSPS」とは、皆さんご承知の通り『Complet Best』に収録された唯一の新曲であり、その歌詞にはこのベストアルバムを持って徳間との契約が切れるPerfumeに対しての惜別の意が込められた物であるという解釈が、一定の時期より昔からのファンの間では定説になっています。




徳間との契約が切れてもPerfumeとして活動する事はある程度は可能だったかもしれませんが、あ~ちゃん曰わく、「徳間でのデビューが最後のチャンスだ」と当時思っていたのですから、自然に考えれば当時はこれが最後のリリースになっていたはずです。




また、中田ヤスタカからすれば、強硬にオリジナルアルバムの発売を主張するも、上層部に突っぱねられてのベストアルバムの発売。
野心家の彼からすれば人生最大の挫折感で一杯の中での新曲の制作だったはずです。




「PSPS」の歌詞にはそんな彼の想いがふんだんに表れていて、『パーフェクトなスターであったPerfume』を、『パーフェクトなスタイルであろう自分自身』が未来から回顧する形で振り返ります。
そして、そんなPerfumeを、「手を伸ばしてももう届かない」存在なのだと嘆いてみせたり、「大切なファイルはまだ抱えたまま」なのだと彼女たちに未練を滲ませる言葉を並べたりしていたのです。






しかし現実は、このアルバムのリリースの後に急展開し、僅か5年後にはPerfumeは東京ドームを満員にする程のビッグアーティストに成長しました。




そう、彼女たちはまさに「パーフェクトスター」になったのです。
プロデューサー中田ヤスタカの気持ちとしては感無量でしょう。




最近の彼は以前と違って、Perfumeに対しても饒舌だそうですから、Perfumeの仕事としては今が一番幸せな状態なのでしょう。




そこで、どん底の状態で作った「PSPS」の中で描いた、未来から回顧したパーフェクトなスターに出来なかったPerfumeを、実際の未来でパーフェクトなスターになったPerfumeで昇華させようとしたのが、「時の針」なのではないかと思った次第です。




この曲の歌詞はストレートに、「幸せなこの瞬間」というフレーズが表れます。
中田ヤスタカの歌詞の中で、こんなにポジティブな言葉を素直に出すのは極めて珍しい事です。
やはり本当に今が一番幸せなのでしょう。
そして、「記憶のページめくるたびに笑顔こぼれるように」と、一瞬一瞬の幸せな気持ちや、ふとした3人との会話まで大切に噛み締めたいとまで書くのです。



では、なぜこんなに一瞬までを大切にしたいと考えてるのでしょう?




それは、最近の雑誌のインタビューなどで、あ~ちゃんからたびたび出る、「適齢期のうちに結婚したい」発言に代表される、女性アイドルにとって避けては通れないこの問題。
「花の命は短くて」という奴です。




さすがの中田ヤスタカもこれに関しては為すすべはありません。
その日が来たら受け入れるしかないのです。
それを十分理解しているからこそ、歌詞の中にも「花のように咲いて、やがて枯れてしまっても…」 「このまま永遠になれたらいいな」と花はやがて花ではなくなる事を受け入れているのでしょう。




その日が来るまでは、「あの日ふたりで交わした誓いを」、「大切に守り続けよう」と謳うのです。




では最後に、「あの日ふたりで交わした誓い」とは何かを想像して終わります。



野心家の中田ヤスタカの最大の挫折である、「PSPS」の制作から約1年。
Perfumeにとっての最大のチャンス「ポリリズム」のリリースが到来します。
しかし、徳間の上層部から、いわゆる「ポリループ」を音源から除いてくれとの命令。




二の轍は踏めないとばかりに、中田ヤスタカは自ら上層部と話し合いを持ち、最終的にはテレビ用のショートバージョンを合わせて収録させる事を妥協点として、彼らの説得に成功しました。




想像するに、「ふたりで交わした誓い」とは、オリジナルアルバムの制作の際に圧力に屈し、「PSPS」を作る羽目になった自分を恥じ、『次こそは説得してみせる!』と一方的にPerfumeに対して契りを交わした中田ヤスタカの男気であり、「あの日」とは、徳間の上層部に直接掛け合う事を決心した日ではないでしょうか。





つまり「時の針」は、中田ヤスタカ自身のPerfumeに対する、『一人語り』なんだとボクは思うのです。