本橋信宏「全裸監督 ―村西とおる伝―」感想 | 狸穴の雑多ブログ

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今回は本橋信宏著「全裸監督 ―村西とおる伝―」の感想記事です!

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Netflixで話題となった、山田孝之さん主演のドラマ「全裸監督」。

その原作となった本です。

 

「ダイヤモンド映像」を設立し、アダルトビデオ業界で大成功を収め、「AVの帝王」と呼ばれた村西とおる。

村西監督の人生を、幼少期~現在までに渡って書き記した作品。

 

体裁としては「小説」ではなく、本人や関係者へのインタビューを元にした「評伝」の形を取っています。

総ページ数は800ページ超、通常の文庫本の2倍以上の分量を誇っており、このボリュームからも村西監督の人生の濃さが伝わってきますよね。

 

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冒頭のプロローグで、村西監督が残した伝説やエピソードが数々紹介されています。

 

・コペンハーゲンの歩行者天国で"駅弁"撮影をした

・ハワイでFBIに逮捕され、懲役370年を求刑された

・"顔面シャワー"というジャンルを確立する

・事業拡大に失敗し、50億円の借金を背負う

 

・・・ブログには全てを書ききれないので、一部だけ記載しましたが、本の中では更にたくさんのエピソードが羅列されています。

ここまでハチャメチャな伝説やエピソードを多く持つ有名人というと、江頭2:50さんやsyamuさんを連想します。

これだけ見ると、村西監督もエガちゃんやsyamuさんのような「何をしでかすか分からない、ハチャメチャ系のエンターテイナー」なのかなという先入観を持ってしまいましたが、読み進めていくうちにこのイメージは崩れていきましたね。

 

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福島出身の村西監督は、上京後、大まかに以下のような経歴を歩んでいます。

 

池袋のバー勤務

英語百科事典販売の営業マン

英会話教室経営

テレビゲーム筐体の販売

裏本(アダルト書籍)の販売

アダルトビデオの販売

 

・・・裏本販売を始める以前は、アダルト以外の業界に携わっていたんですね。

しかも営業マン時代には、「応酬話法」という営業手法を武器に営業成績1位を獲得する等、ビジネスで多くの成功を収めています。

この「応酬話法」という交渉術、後にアダルトビデオ業界に携わる中で、出演交渉等に活かされることになります。

 

またアダルト業界に携わる時代になると、数々の逮捕エピソードが生まれますが、それらの逮捕劇も

「逮捕される程過激な会社が作っているビデオって、相当すごいんじゃないか!?」

という評判のタネとなり、結果的に売り上げアップにつながっていたそうです。

 

上京前の学生時代にも

小説家になって一山当てる

ブラジルで大農園を経営する

等々、安定を嫌い、大成功を収めようと夢想する様子が描かれています。

 

村西監督の人生には「ビジネスで富を築く」という確固たる道筋があり、一見ハチャメチャに見える行動やエピソードも、きちんとその道筋に収斂しているように感じました。

 

その意味で、悪く言えば「場当たり的」、良く言えば「好きなことで生きていく」というハチャメチャな生き方とは一線を画しているのではないでしょうか?

 

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また、もう一つ村西監督の特徴として印象に残ったのが、ビジネス的な成功を収める上で「リスク度外視」という点でした。

 

英会話教室時代、「人件費が安く済む」という理由で、朝鮮戦争時の米軍脱走兵を教師として採用しています。

(後に、入管に不法就労がバレて閉校することに...)

 

裏本時代には(当時違法とされていた)無修正の本を秘密ルートで売りさばき、大きな利益を得るも、逮捕される。

ダイヤモンド映像が軌道に乗ると、次々と事業拡大の投資を続け、破綻する。

など、(そもそも遵法意識が薄いのかもしれませんが...)逮捕リスクや投資失敗リスクを一切考慮せず、体当たりでビジネスに挑んでいます。

 

「リスクを考えない」という姿勢は、ハチャメチャ系のエンターテイナーと通じる部分があるかもしれませんね。

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時としてリスク度外視で行動するが故に、一見破天荒に見える。

でもその全てが「ビジネス」という首尾一貫した目的に収斂されている

という所が、村西監督の凄い所なのかなと思いました。

 

生き方の中に「富を築きたい」という軸があるかどうかが、「エンターテイナー」かそうでないかの分かれ目なのかなと感じました。

どちらの生き方も、それぞれ良さがあると思います。