感激の形 | 藤原清美オフィシャルブログ「OTIMO TV」 Powered by アメブロ

感激の形

南米予選最終節ヴェネズエラ戦は、ブラジルのマトグロッソドスウ州カンポグランジという街で行われました。

カンポグランジって、大きなクラブがないし、セレソンが来るのも超・珍しいことなので、サッカーのスーパースターが来ることって、そんなにないんですね。

だから、セレソンが泊まったホテルの前には、常時たくさんの地元の人達が詰めかけて、選手を一目でも見ようと、大賑わいでした。


見てると、ホテルを見上げている人達が、時々、一斉にワーッと歓声を上げる瞬間がある。

どこかの窓から、選手の姿でも見えたのかな?と思って、私も見上げてみると、何ということはない、外を展望できるガラス張りのエレベーターに、一般の宿泊客が乗り込んだだけ。

そのエレベーターが下に降り始めると、「選手達が降りてくるのかも!?」と、一斉に歓声が上がるんです。


選手達が、練習や試合に行く時のホテルの前は、もう大変です。

厳重警備の中、みんな、カメラや携帯や、サインをしてもらおうとシャツを掲げて、大盛り上がり。


セレソンバスの乗降口の逆側にいた女の子が、セレソンバスが走り去った後、号泣してる。

乗降口の逆側じゃ、何も見えなくて、嘆いているのかなぁ、と思って聞いてみると

1人「カカーがぁ、バスの窓から見えたぁああああ!」

別の1人「見えなかったけど、カカーが乗ったバスに、さわったぁああああ!」

別の1人「何にもなかったけど、もう感動しちゃったぁあああ!」


動機はそれぞれながら、大泣き。


そんなカンポグランジで出会った、カメラアシスタントのパウロ・ヴィットー。

まだ10代の若い新米君だそうです。

なんと、セレソンの試合当日が、現場デビュー。


たまたまセレソンホテルで知り合った私とヴェントゥーラは

「報道陣が、選手にサインをねだっちゃいけないんだよー。」

「試合中に、記者席でブーイングしたりしちゃ、いけないんだよー。」

「インタビューの時に、興奮して名前を叫んじゃ、いけないんだよー。」

と、からかってたんです。


最初はパウロ・ヴィットー

「名前を叫ぶ?(裏声で)カカー!カカー!叫ぶわけないじゃーん」

と、現代っ子っぽく(?)、ノリがいい。

おまけに、試合前、スタジアム周辺のサポーターを撮るという私らに

「カンポグランジの人は、大きな試合に慣れてないから、カメラに向かってみんなでワイワイやったり、スタジアム前でサンバやったりするような、テレビでよく見るサポーターの盛り上がりはないよ。」

なんて、アドバイスをしてくれてました。


そんな彼のお父さんはタクシー運転手。

彼がカメラマンと2人だけだったので、私とヴェントゥーラは、試合後、お父さんのタクシーに一緒に乗せてもらう約束をしました。

試合後って、タクシーの確保が大変だったりするので。


なので、スタジアムでも、声をかけあってたんです。

ところが、スタジアムでのパウロ・ヴィットー、すごく無口。

試合中は記者席で、並んで見てたんだけど、ブラジル人っぽくないほど、大人しい。


試合後、選手のインタビュータイムでは、カメラマンと2人1組の彼は、質問こそしないけど、マイクを持って、選手に向けてたんですね。

でも、叫んだり、サインをねだるどころか、やっぱりすごく無口。


現場デビューだから、緊張してるのかなぁ。

それとも、サッカー、それほど好きじゃなくて、淡々と仕事してるのかなぁ。


そんな状態のまま、すべての仕事が終わり、お父さんのタクシーがやってきました。

走る車の中で、私はさっそく、お父さんに

「パウロ・ヴィットー、もっとはしゃぐかと思ってたら、そりゃあもう、淡々と仕事しててねぇ。つまらんのかと思ったぐらいー。」


するとお父さん、息子の顔をチラッと見て、プッと吹き出して、言いました。

「こいつは、はしゃぐ方じゃないけど、大人しい方でもない、普通の明るい男の子なんだけどね。

ほら、見なよ、この顔。

人間っていうのは、本当に感激したら、はしゃぐどころか、なーんも言えなくなっちゃうんだよなぁ。

固まっちゃうんだよなぁ。」

と、運転しながら息子の肩をつかんで、わっさわっさ。


パウロ・ヴィットー、ようやく笑顔になって

「なんてこった、僕がマイクを持ってたんだよ。

カカー、ルイス・ファビアーノ、それから、もう、みんなみんな。

選手が、ここにいるんだよ、ここに。目の前だよ。

もう、本当に一生の思い出だよ!」

お父さんに、一気に報告してました。


見えても見えなくても、カカーがそばにいたというだけで、号泣してる女の子たち。

地方都市で、生まれて初めてセレソンの取材をして、固まった男の子。

いろんな感激の形。


ブラジル人と日本人の間で、たぶん感情表現の違いこそあれ、こんなふうにサッカーや選手が大好きな人たちに、映像や記事や写真を届ける仕事をしてるんだ、と思うと、なんだか心からしみじみ、がんばらなくっちゃ、と、思えた旅でした。


写真は、今日の主役、パウロ・ヴィットー。


藤原清美オフィシャルブログ「OTIMO TV」 Powered by アメブロ



雪舟 さんへ

1度ならずも、2度までも(笑)

最近、超・運動不足でモモが痩せたらしいんですよ。

パーン!とハリのあるモモが好きなカリオカ達には、「清美が日本人に戻っちゃった」と不評です。


soleil さんへ

あの人(いや、あのオオカミ)は、ロビー君っていう名前だったんですね!

AZUKIって知らないけど、サンパウロなのかもしれないですねー。

すごいすごい豪華プレゼントじゃないですか!!!


aloha-spirits-yoshi さんへ

タメになる!

こりゃあまた、ウキウキしつつも、プレッシャーを感じる褒め言葉、ありがとうですー(笑)

これからもがんばりますー。


毛利 都亜 さんへ

そうですか!

今は、本の辞書を引く代わりに携帯を手にし、携帯の辞書を引くんですか!!!

すーごい浦島を感じる今日この頃なお話ですー。


佐々倉 竜一 さん

ジョルジーニョ展!

鹿島の人が、来てましたからねー、リオへ。

あの盾も、鹿島の人が、直接ジョルジーニョに手渡ししたんですよ!


mari さんへ

鹿島とともに!

こないだも書いたように、ジョルジーニョには、主旨は変えつつも、本当に何度も、鹿島についてのインタビューをしたんですね。

でも、ほんとにそのたびに、同じように感情いっぱい込めて、熱く語ってくれるんです。

すごい愛情を感じます…。