スパイ容疑
モスクワのホテルに泊まったんですね。
こんな感じで、すーごい大きなホテル。
3つ星なんだけど、その巨大さで、旅行業界では有名らしく。
団体さん?OK!急な予約?OK!って感じで、便利らしいんですね。
1階には、本格カジノが併設されてて、飲み屋さんもある。
だから、ロビーを歩くと、多種多様な人種のお客さんが、歩いています。
そんなこともあって、客室にあがるエレベーターの前には、黒服にネクタイの警備員がビシッと立ってて、すべてのエレベーターに乗る客に、部屋のカードと、カギを持ってるか、確認します。
というホテルでの出来事。
ヴェントゥーラが朝、自分の部屋のある上層階のエレベーターホールの窓から、外の景色を撮影していたんです。
ちっちゃなデジカムだったんだけど、お掃除の人が通りかかって、あわてて
「撮影はダメ!撮影はダメ!」
と厳しく言ったそうです。
ヴェントゥーラがやめた後も、後ろを振り返り、振り返り、しながら、ヴェントゥーラが入る部屋の番号を、確認してったそうです。
その様子を見て、ヴェントゥーラは、「デジカムで、ただの観光客と同じように撮ってたのに、どっかに報告でもするのかなぁ。」と思ったそうな。
まぁ、ヴェントゥーラって、あの風貌ですよね。
モスクワでも、こんな感じ。
アップで見ると、こんな感じ。
なんの職業だと思われたんかいな、と。
で、その夜。
私が部屋で机に向かってる時、ヴェントゥーラがやってきて、「ミニバーに補充する飲み物を買ってくる。」と。
そのホテル、冷蔵庫はあっても、中身はお客さんが好きに買ってきて冷やすようになってて。
で、ヴェントゥーラはドアを閉めて、去っていきました。
その、数分後。
ガチャ!
なんと!おもむろにドアが開く音と、警備員風のいかついおじさんの顔。
そして、どなり声。
「プリーズ・オープン・ザ・ドア!」
…へ?
「プリーズ・オープン・ザ・ドア!」
って、あんたもう、開けてるやん!
っていうか、なんであんた、カギの閉まってる部屋のドアを、開けられたん?
そこのドアは、外からは、閉めたら同時にカギがかかるドアなんですよ。
しかし、いかつい警備員は、言い放つと、ドアを開けっぱなしたまま、スタスタ去っていきました。
でも、もしかしたら、警備員もロシア人だから、英語が苦手で、「ドアを開けたままにしてください!」とか何か、違うことを言いたかったのでは?
なんでええ!何か、事件が起きた?犯人を探してる?
もしくは、火事?
私はドキドキしながら、ドアへ駆けつけました。
が、廊下を見渡すと、ドアを開けてるのは、私のとこだけ。
向かいのドアからは、女性のおしゃべりと楽しげな笑い声まで、漏れてくる。
えええええ!何やったんんん!
私の部屋のドアだけが、開けられた!
ドアを閉めて、びくびくしながら、また机に向かってると、ヴェントゥーラが戻ってきました。
ヴェントゥーラにはカギを渡していたので、勝手に開けて、入ってきて、閉めて。
で、事の顛末を説明したんです。
ヴェントゥーラは、朝、撮影を止められたこともあって、ポツリ。
「…スパイ容疑かな。ここは、ロシアだから。」
いやー、怖くなりましたよー。
ブラジル人と日本人が、ブラジルで予約して、モスクワへ。
何か撮影してるようだ。
こりゃあ、監視しなきゃ。
…なんてことに、なっちゃったん?
隠しカメラがあったら、どうしよう、盗聴されてたら、どうしよう。
拘束されちゃったり、するんやろか。
今のうちに、ジーコに電話して、助けに来てもらう?
ああもう、早く取材を終わらせて、この国から脱出したい!
…なんて騒いでいると、なんと!
また、ドアが開いたのです。
今度は、ス~~っと静かに。
そして、そのドアの隙間から、ソ~っと、部屋の中をのぞく、青白くて細長い顔の、警備員風の青年。
「ふえええええ!」
言葉にならず、叫ぶ私。
ヴェントゥーラ、怒り心頭!
「何か問題あるのか!!!」と怒鳴って、ドアを蹴り飛ばして、閉めました。
これはいかん、このままではダメだ。
というわけで、2人でロビーへ。
受付に行って、事情を説明しました。
すると、警備の責任者の人が呼ばれてきました。
で、黙って聞いていた警備責任者「このホテルのドア、閉めにくいんですけど、ちゃんと閉めてましたか?」
私「そう、軽く閉めただけじゃ閉まらないから、もう1度、ググッと押し込む。分かってます、分かってます。」
警備責任者「いや、よく閉め切れてないお客さんがいるから、そういう部屋を見つけたら、警備員は確認するようにしてるんですよ。」
私「いや、だからこそ、私は毎回、ドアを閉めるたびに、確実に押し込んで確認してますよ!」
警備責任者「じゃあ、これからも気をつけてください。」
私「へ?話は終わり?閉めてたのに開けられたから、言ってるのに!」
警備責任者「では、おやすみなさい。」
納得できない私に、ヴェントゥーラは「もういい、部屋に帰ろう、帰ろう」
なんで?なんで?解決してないやーん。
でも、ヴェントゥーラに押されて、部屋へ帰りました。
ヴェントゥーラ「俺、疑問が湧いてきた。」
何の疑問?
で、ドアの前に立ち、鍵をあけている、その時。ヴェントゥーラ。
「俺、ちゃんと閉めてなかったかもしれない。俺が閉めた時、こんなふうになってなかったもん。」
へ?
ヴェントゥーラ、ためしに、自分で1回ドアを開けて、閉めてみました。
でも、ちゃんと閉まってない。
ヴェントゥーラ
「俺が閉めた時、こんな感じだった。」
えええええ!
だったら警備員の人たち、それを忠告したんやーん。
スパイ容疑と違うやーん。
007の見過ぎやーん。
そう言えば、警備員さんがドアを開けた2回とも、その直前にドアを閉めたのは、ヴェントゥーラ。
そんな人騒がせな、モスクワの夜でした(笑)
その後のモスクワ滞在は、とっても快適で、楽しかったですよー。
また余計にかわいいんですよねー。
、2つ説が出たと思ったら、同じなんですね!
すっきりしましたー。ありがとうですー。