ジェンチ・ボア
リオに帰ってきました。
でも、頭の中は、まだブラジリアモード。
というのも、練習の日と試合の日、2回、あのブラジリアの大荒野の一本道を往復したので、マルコの母を訪ねて三千里の主題歌
♪はるか~、草原を~♪
が、頭から離れないんですー。
…古くて、すみません。
セレソンの夜は6対2。
とっても盛り上がりました。
そんな試合当日の、お昼過ぎのこと。
セレソンの宿泊しているホテルのロビーの隅っこで、ポケラ~と突っ立って、人々の動きを眺めていた私。
そこへ、
「コンニチハ~。ゲンキデスカ~」
と、やってきたのはジョルジーニョ。
「座って、座って」
と、椅子まで持ってきてくれました。
でも、今のジョルジーニョ、こんな感じなんです。
ギブス!
フットサルやってて、腕をケガしちゃったんですね。
で、そんなジョルジーニョ、私に椅子をすすめた後は、イソイソ自分の椅子も、片腕で担いできて、隣に座る。
そんな感じで、そのケガのことや、最近の出来事なんかを、おしゃべりしてたんです。
そこへ、1人の男性がやってきました。
そして、だしぬけにジョルジーニョのところに来て
「私はルイス・ファビアーノのサンパウロ時代の友人なんだ。ルイス・ファビアーノに会いたいんだけど、呼んでもらえないかな。」
ジョルジーニョ「本人は、来ること知ってる?」
男性「いや、急に来たから」
ジョルジーニョ「うーん、今日はもう、このあと試合だから、集中してる時間なんだよ。今は難しいなぁ。」
その男性、身なりは、着古したランニングに短パン、ビーサン。
無精ヒゲで丸刈りのオジサンです。
セレソンの選手になった古い友人に、再会に来たって雰囲気では、あんまりないかもなぁ。
だいたい、ジョルジーニョへの挨拶もなしに、出し抜けに選手に会いたい、なんてなぁ。
と、私は勝手に思いながら、見てたんですが、男性は食い下がります。
男性「ちょっとでいいんだ。」
ジョルジーニョ「でも、選手はもう、誰もロビーには降りてこない時間なんだよ。」
男性「名前を言ってもらえたら、彼もわかるから。」
ジョルジーニョ「じゃあ、紙にあなたの名前と連絡先と、伝言があれば、書いてくれる?必ず渡すから。」
男性「何としても会いたいんだ!お願いだよ!」
ジョルジーニョ「書いてくれたら、本人が後で連絡できるから。そうしようよ。」
男性「直接話したいんだ!」
ジョルジーニョ「そのためにも、ねっ、受付で紙とペンを借りて、書いてきなよ。ここで待っててあげるから。」
男性、しばし沈黙。
でも、考え直して、受付に行きました。
その様子を横で見ていた私に、ジョルジーニョ
「選手の友達や親せきだと言う人は、たくさんいるんだ。
本当にそうかもしれないし、そうじゃない人もたくさんいる。
でも、本当に重要だったり、緊急な用事だったら、こんな頼み方はしないだろうしねぇ。
親戚だったら、他の親戚の人も一緒に来るだろうし、友達と言っても、いろいろあるからねぇ。」
例えば、ブラジリア生まれのカカーのところには、親戚一同が、前日に会いに来てたんです。
カカーが頼んで段取りをつけてもらって、しばしの面会の部屋がセッティングされました。
そんなわけで、もう少しおしゃべりしながら、その男性が伝言を書き終えるのを待っていたのですが、その人は、せっせ、せっせと、長いこと書き続けてる。
ジョルジーニョは、もう部屋に帰らないといけない時間になりました。
それで、その男性のところへわざわざ行って、ちょっと急ぐように声をかけ、横で待ってあげてました。
そして、紙を受け取って、あがっていったのです。
そこへ、離れたところにいた、別の記者さん達が、何だったのかを聞きにきました。
私は説明しながら、
「ジョルジーニョ、ジェンチ・ボア(いい人)やなぁ。すごくきちんと応対してあげてた。」
と言うと、記者さん達は
「あの男性の身なりからして、昔の知り合いというのを頼りに、援助でも頼みに来たんじゃないの?」
なんて、ワイワイ。
そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
でも、ジョルジーニョは、拒否せず、介入もせず、いいバランスでした。
ブラジル代表のアシスタントコーチだし、元セレソンだし、世界的スターだけど、自然に、そんな風に記者さんが「援助を頼みに来た」と思うようなオジサンに、すごくいい具合に応対してました。
エラくなると、変わっちゃう人もいるのかもしれないけど、ジョルジーニョは、本当にジェンチ・ボア。
あらためて、感じた出来事でした。
ブラジリアは割と天気のいい街なので、あの湖の脇は、リゾート地みたいな感じなんです。
大地の真っただ中の、湖リゾート。すごいー。
のイチ時代を築いた選手が引退するのは、さみしいですねぇ。
ドゥンガ監督と名波コーチ!
そんなことが起こったら、盛り上がりますねー!
、残留回避を回避する(笑)ために、頑張ってますー。