『銀河サーカス団』物語 エピソード0は
「銀河サーカス団」エピソード0
プレアデス第2話
「総理 第3居住区でドラゴンが暴れていると報告が」
「ジン あなたは間違ってなどおりませんよ
お返事も要りません このまま黙っているのが良いのです
この船は セレアの選ばれた国民が ギリギリの均衡をもって暮らしているのです
エンヅァのやつらを受け入れる余裕はない これは国民のためなのです」
「第3居住区の住民の避難は?」
「一部まだ・・・」
「ユンか」
「防護壁をいつでも下ろし切り離せるように 制御室に連絡を
私は 第3居住区に向かう」
「ジン あなたの御子息にも その小さなお仲間たちにも
惑わされてはなりませんぞ」
言うだけ言って ジェンコはついてこない
コロニーの中で ジン総理を名前で呼ぶのは ジェンコだけだ
友だちだからではない 見下しているからだ
「なにが国民のためだ 我がことだけが大切なくせに」
自分の独り言に ジンは地上に戻ることのできなくなったあの日を思い出し
顔を歪めた
プレアデス星団と惑星 絵希夙
惑星カナンは プレアデス星団の端っこに 引っかかるように周遊する
空に 9つの太陽が 青白く光る 夜のない星だった
カナンには40もの国々があり
そのひとつの国セレアには 1億2000万人の国民がいた
一人の若き生物学者の 国連での涙の訴えは 握りつぶされたが
その研究内容は確かで
その時が 間近に迫っていることを カナンの各国の首相たちは知っていた
セレアは小さな国であったが
恵まれ発展してきた
大国同様
宇宙エレベーターを所有し
カナンの上空に 小さなコロニーを建設していた
宇宙はカナンの全人類にとっての夢であり セレアの夢であった
その夢のコロニーに入れるのは セレアでは たった240人 50家族
そのため
惑星カナンが人類の住めないほどに汚染されていたことを
国民は 知らされなかった
見た目には 何も変わらない
毎年春になると 木々は芽吹き草花が大地を覆ったのに
計測器は メモリをふりきった
国に秘密裏に買収されたその計測器の会社は 発火の可能性を理由に商品をリコール 回収した
異変に気づきだす人が増えてきた時には すでに計測器は市場に流通されていない
小児と老人の致死率が少しずつ少しずつ増加していった
そして コロニーへは はじめは大企業ジェンコの技術者と作業員 医師が赴任した
コロニーの建設が順調に進むころには
初期の作業員と入れ替わり
技術者と国のトップの科学者や物理学者 医師が家族ごとコロニーへ移動し
作業員としても働きながら コロニーの安定のための研究をした
50家族の枠はどんどん埋っていった
国民の誰もが この移住が1次で終わると思っていなかった
国の宇宙開発のパイオニアとして 第1次移住者たちを褒め称えた
そんな時 あの訴えをした若者の家族が 面接にやってきた
妻もまた 優秀な生物学者だった
「ご夫婦が揃っている家族が優先なんですよ」と面接官は彼女に伝えた
「彼が自殺するはずないんです
国連も セレアも 彼の話を聞こうとしなかったわ
けれど 彼はあきらめずに
この地上の全人類の 生きるすべを探していたんです
彼を失った今 私は全てをあきらめました もう間に合わない
お願いです この子だけでも 船に・・・助けて・・・」
その時の面接官が 当時の総理の息子 ジンだった
子どもだけを 預かることはできない 面接会場で暴れだした女性は逮捕され
子どもは施設に預けられた
「あの人は いったいなぜ助けを求めていたんだろう」
ジンもまた 知らされていなかったのだ
第1次コロニーが完成し
視察として 48番目の家族と共に
コロニーとエレベーターの建設会社の社長である ジェンコとその妻と子
総理と総理の長男のジンが 来客としてコロニーへ向かった後
何年も故障一つなかったエレベーターが 地上で火災を起こし
コロニーはエレベーターから 切り離され
同時に連絡システムが停止した
地上と連絡が付くようになったのは それから3カ月を必要とし
その時の地上からの第一声が「SOS 助けて下さい」悲痛な叫びだった
10年前 ジンがセレアのコロニーの総理に任命された日に
彼は 誰もいない所で父に聞いた
「あの時 人類がカナンの汚染に死に絶えることを 知っておられたのですか」
「どの国も核を捨てることができなかったのだ 遅かれ早かれあの日は来たのだよ
私は国民のために最善をつくしたのだ」
上空850kmを周るコロニー船セレアの乗り組み員はすべて被害者である
みな父母を 兄弟姉妹を 息子を 娘を 友人たちを失った
ジンもまた 祖母と母 弟 恋人や多くの友人を失った
分かっている セレアの総理が どうにかできることではなかったのだ
父を憎むことはできなかったが 許すこともできなかった
コロニーから見下ろすカナンの緑は
汚染されているというのに年を追うごとに濃く
海の青は 美しく澄んでいくように見える
「人類はカナンから追い出されたのよ」と結婚式の日にジンの妻はそう言って泣いた
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