アクリルの壁に囲まれた場所に、スポットライトのごとく光が当たっている。赤い台座の上に何か置いてある。小さいが、存在感は抜群だった。光を受けてまごうことなき金色に輝いている。

 

「金印であるな。志賀島で見つかったものであろう」

そばにいるセルウィンが答える。

「え、本物?」

ガクの目が輝いた。

「いや、レプリカだろ。説明に書いてある」

「なあんだ」

タクトの言葉にガクは肩を落とした。

 

「でも、金メッキらしいな。かなり似てるんじゃないか?」

「わー、だからこんなにキラキラなんだね!」

ガクの目に再び光が戻る。

「おーい、そろそろここを出るぞ。あと30分でチェックインの時間だ」

少し離れた場所から、レイラが手を振った。

 

「ホテル 海辺の民」は海沿いに少し開いたコの字型に建てられている。部屋は全てオーシャンビューというのが売りであり、陸側には研修施設や娯楽施設が並んでいる構造だった。

「やったあ!ちゃんとベッドがある!」

ホテル側がすでに部屋へ荷物を運び入れていたため、手ぶらだったガクはすぐさまベッドに飛び込む。跳ね返るスプリングの感覚を楽しんだ後、今度は派手にベッドの上で跳びはね始めた。

「こら、靴を脱ぎ捨てるな。部屋の中ではスリッパを履け」

あきれたタクトがガクのいるベッドの下にスリッパを置く。

「あ、ごめんごめん。てっきり和室かと思ってたから、テンション上がっちゃって」

「確かにな。何せ『海辺の民』だからなあ」

「ね、意外だよね」

タクトもスリッパを脱ぎ、ベッドの上に大の字になった。沈み込む高級ベッドの感触が心地良い。日頃の激務の疲れが溶けていくようだった。タクトは深く息を吐き出すと、ゆっくりと目を閉じた。

 

「兄ちゃん。ねえ、兄ちゃん」

ガクの声で目が覚めた。どうやら、いつの間にか寝てしまったらしい。体に残る重さが、1時間以上寝ていた事実を物語っている。

「すまん、寝てた。暇だったか?」

「ううん、コウタくんのところでトランプしてた」

ガクはあっけらかんと答える。見ると、出入り口のそばにあった靴が、先程とはうってかわってきちんと揃えられている。

「今、何時だ?」

「5時20分」

「うわっ」

2時間以上起きなかった事実に、タクトは自分のことながらあきれた。

「もうすぐ夕飯だよ。ビュッヘだって、楽しみだねえ」

ガクはホテルの案内を片手ににんまりと笑った。

 

 

 

 

〈おまけ〉

志賀島の金印のレプリカ、、福岡県の志賀島に旅行に行った時、宿に置かれていたのを覚えています。日本史の教科書に載っている写真を見ると大きいように錯覚しますが、実際はかなり小さいです。多分、3センチ四方くらい。

 

 

そのかわり、レプリカでもしっかり重さがありました。手のひらサイズなのにずっしりしていて文鎮のようでした。多分、鉛などを使い本物の重さに近付けていたのだと思います。本物はかなり純度の高い金なので重さはしっかりあったのでしょうね。

 

あと、デザインが面白かったです。写真だとよく分からないのですが、レプリカだとヘビの形しているのが分かりました。ヘビを神聖視していたんでしょうかね。面白いデザインだと思います。

 

 

 

 

 

 

「インセクト・パラダイス」は完全フィクションの小説です。

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