駅から降りた子ども達のテンションがすさまじい。

「すごい!きれい!本当に駅のすぐ前に島があるんだねえ」

ガクの声も聞こえる。横にいるコウタの腕を軽く掴みながら、興奮冷めやらぬという雰囲気でピョンピョン小さく跳ねていた。電車は揺れが少ないおかげなのか、いつもの車酔いは発症していない様子だ。

 

白い砂浜の上を横切るように、赤い欄干つきの遊歩道が設置されていた。観光客が、海の景色を楽しみながら渡れるように配慮したものらしい。

渡りきると、間もないうちにホテルの案内板が現れた。「ホテル 海辺の民」という、センスを疑うネーミングだが、これが最近ではかえってミヤくて人気なのだそうだ。

 

ホテル前に着くと、いくつか見慣れた顔があるのに気付いた。セルウィンが、柱に軽く寄りかかりながらこちらを見ている。奥には、ヒナタや社長の姿もあった。

「セル兄!」

早速、ガクがセルウィンに駆け寄る。その後、きょろきょろと周りを見回した。

「やっぱり、レイ姉来てないね。カイ兄もかな?」

「彼なら、ホテルのロビーにおる。日にあたるのを避けようとしたのであろう」

セルウィンが淡々と答えた。

「そっか。弱いもんねカイ兄」

 

「誰が『弱い』だ」

柱の陰から突如ぬっと現れたカイトの顔に、ガクは「ひやあ」と声を上げる。

「カイ兄、出てきてたの?無理しなくていいよ、暑いから」

「少し出たくらいじゃ死なん。しかし、確かに暑いな」

カイトは常夏の空を恨めしげに眺めた。

「社員旅行って、絶対に来いってわけじゃないでしょ。きついなら休めばいいのに」

ガクが言うと、カイトは顔をしかめる。

「莫迦を言うな。年に1回の社員旅行なんだぞ。そう簡単に諦められるか」

 

話し声を聞きつけたのか、ヒナタが歩み寄って来た。さすがにリゾート地だからかハイヒールを履かず、低めの白いパンプスを履いている。

「お疲れ様。無事について良かったわ」

「あ、ヒナタさん、お疲れ様です。えっと、これからどうなるんですか」

タクトが待ちかねた顔で聞く。

 

「点呼を終えたら、荷物を預けて観光よ。社長が古墳を見たいそうだから、ひとまずはそこね」

「コフンって、お墓みたいなやつ?中見られるのかなあ」

ガクが聞く。

「いいえ、外側だけよ。ほとんど低い山みたいなものね」

 

 

 

 

〈おまけ〉

海が近くにある場所の駅って、なんかテンション上がりますよね。田舎の駅だと周りはうっそうとした森だし、都会だ建物ばかりということが普通なので、駅からおりたら視界がパーンと開けているというのは、珍しい感じがするのです。

 

四木島(しきしま)は、かろうじて地続きになった島の設定。確か、江の島もそういう地形でした。陸地側から歩いて行けましたからね。

 

 

江の島行く時は、つながっている細い道を通った記憶。これはその時見えた富士山です。

 

 

四木島の駅のイメージ。ご当地キャラの「しきはにくん」の像があります。以前描いたご当地キャラに比べ、ゆるい雰囲気ですね。耳みたいなのは、ただの髪型です。

 

 

 

 

 

「インセクト・パラダイス」は完全フィクションの小説です。

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