ガクは悟られないほどにゆっくりと手を近付けると、最後は素早くシロスジカミキリの腹部を掴んだ。
「よっしゃ!うわあ!」
梢でガクが大騒ぎしている。
―何やってんだ!―
タクトは状況が分からず手を広げたまま木の根元を右往左往した。バランスを崩したガクは、枝にかけていた左足をずるりと滑らせる。
「おい!」
タクトは反射的に幹に貼り付いて上を見上げた。と、ガクは左手で別の枝を掴み、器用に姿勢を立て直す。
「おどかすなよ……」
タクトはふうとため息をついた。
「いやあ、ごめんねー。下にいる女の子掴んだんだけどさ、上の男の子が怒っちゃって。ちょっと手の平咬まれたかも」
「修羅場みたいな言い方すんな。痛いか?」
「ああうん、大丈夫。血は出てないや」
「それで、カミキリどうなった?捕まえたのか」
「へへーん」
ガクは木に捕まりながら、右手で軽くカゴを持ち上げる。
「獲ったぞー!」
ガクは得意そうだ。
「よしよし、分かったからもう降りてこい。気をつけてな」
タクトが言い終わらないうちに、ガクはするすると木を降り始めていた。
「到着!」
ガクは虫かごを目の高さにかかげる。
「そっか、ボクのとこ21匹になったんだ」
「そういう計算になるな。やったじゃないか、ノルマ達成だ」
「今獲った2匹、兄ちゃんにあげるよ」
こともなげにガクが言う。
「どういうことだ?」
タクトは首を傾げた。
「兄ちゃんの方が足速いし。ボク、森の出口あたりで最後の1匹探してみるよ。兄ちゃんはそこで別れて先行ってて」
「ああ、なるほど。オレ達どっちかが最初に着けばいいんだもんな。賞金は山分けできるし」
「そゆこと」
「お前、お金のことになるとずる賢いんだよな」
じっとりと湿気がまとわりつく林を抜け、集合場所を目指す。ふと、ひとすじの木漏れ日がさす切り株を見て、ガクが「あ」と小さく叫んだ。
「どうしたんだ」
タクトが振り返ると、ガクは唇に人差し指を当てる。
「しー。静かに。ほら、あそこ、見て」
ガクの指さす先には、朽ちかけた古い切り株があった。そこに1匹のカミキリムシがいる。シロスジカミキリとは違う種類だ。
「あれは何だ?」
タクトは目を細めて、その姿を確認しようとする。
「思ったよりも小さいんだね。カミキリムシの乙女だよ」
〈おまけ〉
自分で獲ったシロスジカミキリを、ガクはタクトにあげてしまっています。これは単純に気前がいいというわけではなく、現在18匹獲っているタクトは2匹プラスすれば目標となる20匹を達成できるから。ガクは19匹に戻ってしまい未達成となりますが、兄弟なら賞金を山分けできるので足が速い兄タクトを優先して達成させた方がいいという理屈です。
ガクはとぼけているように見えますが、計算高い側面もあるんですよね。というより、とぼけているのも愛されるための計算が入っているところがあります。
前からそろそろ作らねばと思っていた、ターコイズ・プラネットの組織図。完全横並びの組織です。単純に役割によって班が分かれており、班によっては複数の室があり業務を分担しています。生態調査班や生物研究班がメインの部署ではあります。
情報技術班・情報室→レイラ
情報技術班・技術室→カイト、ハル
生態調査班・生態調査室→タクト、ヒナタ
生物研究班・生物研究室→ケンジ、
生物研究班・飼育室→ガク、コウタ
庶務班・会計監査室→セイケン
医療班・医療処置室→文子
といった具合に配属されています。面白いのは、社長のセイケンも一応部署に配属されているところ。だからあまり偉そうじゃないんですね。
セルウィン、クリス、ナオミら騎乗部隊の3人は?と思う人もいますかね。騎乗部隊は完全に独立しています。普段は騎乗昆虫の管理と騎乗訓練しかしないのです。負担が大きいのでこうなっているのですね。
「インセクト・パラダイス」は完全フィクションの小説です。
毎週木曜日に更新予定です!
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あらすじ
