「ボク達のところは合わせて30だったよ!ボクが16、兄ちゃんが14」

ガクが元気よく答える。

「そうか。あたいは37。セルウィンは?」

「それがしは、31であるな」

「結構多いわね……」

 

ヒナタが俯いた瞬間、ポケットの中でスマートフォンが激しく振動する。不意をつかれて「きゃっ」と小さく声をあげたが、すこぶる真面目な顔つきで画面を開いた。

「ああ、もう」

ヒナタが額に手を当てる。

「どうかしたんですか」

「カイトから連絡よ。ここから少し離れた地点で駆除しているそうなの、このカミキリムシ。『こっちに来い』ですって」

「え?なんで?あ、でもアヤ姉に会えるかも!」

ガクが軽く跳びはねながら言う。

「おおかた、仕事を手伝わせる気でしょう。ひとまず車に乗り込むわよ」

 

ほどなくして言われた場所に到着する。

―こんな近くで別の仕事があったんだな―

少し見晴らしの良い高台の駐車場。降りてあたりを見回し、タクトは「あっ」と声をあげる。

山の片側が、削り取られたようになっている。裸にされた山肌が無防備に露出していた。たくさんの重機が、今もせわしなく動いているのが見える。

「これ、何の工事ですか?」

タクトが聞くと、ヒナタが淡々と答える。

「新しくリゾート開発が進んでいるの。ここには大型のホテルを建設予定みたい。たくさんの外国人労働者が集まっているそうだけど、カミキリムシの大発生に手を焼いていると聞くわ」

 

「人間とは愚かなものであるな」

一拍置いて、セルウィンが口を開いた。

「森の豊かな恵みを失ってまで、一時の娯楽を優先するとは笑止な。今回のことは、おそらく天罰が下ったのであろう」

「天罰?」

タクトが詳しく聞こうとした時、後ろから大声が響いた。

 

「おいお前達!遅いぞ。たった数百メートルの距離に何をもたついているんだ」

振り返ると、カイトが銃を持って立っていた。その後ろに半ば隠れるようにしてハルがいるが、長身のため全く隠れきれてはいない。

「カイトさん!お久しぶりです。なんか変わった銃ですね、それ」

話しかけるタクトを軽く睨みつけたままカイトが口を開く。

「薬剤銃だ。レーザー銃だとかえって効率が悪いからやめた。木の中の幼虫はこれで一網打尽だ」

「あの…後ろの人は」

「こいつか。おいハル。自己紹介ぐらいしろ」

「……ハル・スギヤマっていいます。情報技術班の」

眼鏡の奥で一重瞼の瞳が、淡く光った。

 

 

 

〈おまけ〉

リゾート地を想定しての開発ってよくありますよね。私の母の実家は昔から山の中なんですが、たまに新しい建物ができることがあって。そのたびに山が削られるので、心が痛んだものです。

 

しかも、家のすぐ近くと言うか真横と言うか真下というか、川があるんですけどそこが泥で汚れるのです。メダカとか大丈夫かなとそのたび心配になりました。見るからに数が減る気がするんですよね。

 

 

 

数十年ぶりにその川を見に行くと、川底の石や岩は取りのぞかれ、完全に固められていました。整備することにより洪水を防ぐためでしょうけど、魚が1匹も見当たらなかったのは悲しかったです。自然を大切にしたいですね。

 

 

 

「インセクト・パラダイス」は完全フィクションの小説です。

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