鬱蒼とした森の入り口に辿り着いた5人は、密集した木の湿った匂いと薄暗さを感じながら立ち尽くしていた。

「道なき道、であるな」

セルウィンが森の暗がりを見つめて言う。

「セル兄、普段はフ―ちゃんに乗ってこういうところ来るんでしょう?」

ガクが問う。

「うむ」

セルウィンが答える横で、ヒナタが大きく地図を広げた。

 

「さあ数えるわよ!ガクとタクトはA地点を中心に半径50メートルの範囲。私はB地点を探すわ。レイラはC、セルウィンはD地点をお願い」

ヒナタが地図に赤ペンで書き込むのを、レイラはすばやくスマートフォンで撮影する。ガクはスマートウォッチのカメラを起動させ後に続いた。

「はいこれ」

ヒナタはセルウィンに地図を押し付ける。

「なにゆえそれがしに」

セルウィンは合点がいかない顔をしている。

「あなたが一番つかみどころがなくて困るわ。それに私は絶対迷わないもの」

ヒナタが答える。

 

A地点は道路沿いに緩やかな勾配を下った先にある。道路に近い地点にされたのは、そこが安全だからだろう。

「とりあえず、ボクが見つけたのはボクがカウント、兄ちゃんが見つけたのは兄ちゃんがカウント、でいいよね?」

「ああ。問題は両方が同時に見つけた場合だな。その時はどちらがカウントするか相談しよう」

「てか兄ちゃん、シロスジカミキリわかる?」

「……なんとなく」

「あやしいな!ボクが教えてあげるからちゃんと見とくんだよ」

ガクとタクトが話していると、横でバサバサと羽音が聞こえる。

「あ、ツクツクボウシだ」

「一瞬でよく分かるな」

 

「セミがまだいるんだね。やっぱり曽利国(そりこく)は暑いんだなあ。雪とか降らないって学校で聞いたよ」

そう言いながら、ガクは木々の幹を見回す。

「シロスジカミキリって夜行性なんだけど、昼でも日かげとかにいるんだ。今日は曇りであんまり明るくないから、割と見つけやすいかもね」

立て板に水とばかりに話すガクに圧倒されながらも、タクトが口を開く。

「相変わらず、昆虫だけは詳しいな」

 

―その情熱を勉強に向ければいいのに―

心の奥底でそう思ったがさすがに口には出さない。ツクツクボウシの去った方向をなんとなく目で追い、近くの木々を調べ始めた。

「うわ!」

先に叫んだのはガクの方である。

「あったか?」

「こ、これだよこれ!シロスジカミキリ。やっぱり大きくてかっこいいなあ」

 

 

 

〈おまけ〉

生態調査班の仕事は、基本地味です。本格的な人工変異種の駆除の場合は、選抜チームに依頼が入ります。身体能力が高いチームに優先的に割り振られるのです。ガクやタクトも、実は身体能力の高さを評価されているのですね。

それに比べると、生態調査班は特定のエリアの生物相を調査してレポートにまとめるのが主な仕事。確認された個体数データを過去のものと比べて分析し、未来まで予測するといった作業が中心となっています。

 

 

個体数調査に欠かせないのが、カウンター。電池切れを起こさないように、アナログのタイプを使います。野鳥の会が使っているようなものですね。我が家にもあるんです。ただ、野鳥観測用ではなく、息子の暇つぶし用。これを無心にカチャカチャやると、落ち着くみたいです。

 

 

 

 

「インセクト・パラダイス」は完全フィクションの小説です。

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