2人は、ガクを見て少し顔を見合わせる。口火を切ったのはヒナタだった。

「ガク。あなた、カイトには会ったの?」

「うん。強引だったよ。首の後ろのところぐわって引っ張って、馬を言わさず?って感じ」

「有無を言わさずだ、ガク。やっぱり話は本当でしたね」

「全くもう。相変わらずカイトは自分勝手なんだから」

 

ヒナタは話しながらパソコンに向かい、左手でマウスを操作しシャットダウンした。

「さあ準備して。レイラとセルウィンには連絡着いたから。15分後に下に集合」

「え、本気ですか?ダッシュで着替えないと」

「あれ?武器っている?」

「いるわよ。外回りには必須。規定にあるでしょう」

「取ってくる!」

ガクはドタバタと部屋を出て行く。

「化粧直ししたかったけど悠長なこと言ってられないわ。着替えてくる」

そう言ってヒナタも立ち上がった。

 

息を切らしながら、会社のビルからタクトが姿を現した。ややあって、ガクが追いかけるように開いたドアから出て来る。

「あ、兄ちゃん。一番乗りだね」

「ガク。時間ギリギリだな。何とか間に合って良かった」

「てか、ボク達以外いないのなんで?」

「もう慣れたけど、相変わらずだな」

タクトは腕時計を見つめた。時計の秒針が1周して分針を追い越した瞬間、後ろで自動ドアが開く気配がする。

 

「ヒナタさん、お疲れ様です。言わなくてもいいかもしれませんが、1分遅れたと思いますよ」

「ああ、そうね。まあいいわよこのくらい。誤差でしょう」

ヒナタは悪びれる様子もなく答えた。

「兄ちゃん、女の人は準備に時間がかかるから仕方ないよ。それよりセル兄とレイ姉、まだかな」

ガクはきょろきょろとあたりを見回している。

 

しばらくして向こう側から小走りに近付く人影が見えた。

「すまぬ。フィアンセの手入れに手間取っておったゆえ」

セルウィンは合流すると、息を吐き虚空を見つめた。

「フーちゃん、今回は来ないんだね」

ガクが残念そうに言う。

「じゃあ、行きましょうか」

ヒナタがスタスタと歩き出す。

 

「え、レイラさんは」

タクトが言いかけると、ヒナタは振り向いて答えた。

「レイラはいつも10分遅れるから。あらかじめ駐車場に行くって言っておいたわ」

車に乗り込み、ヒナタがエンジンをかけたところでようやくレイラが現れる。

「いやあ悪い。待たせたな」

「さあ、役者がそろったわね」

レイラを車に乗せ、ヒナタはゆっくりアクセルを踏んだ。

 

 

 

〈おまけ〉

曽利国(そりこく)の人は基本的に時間にルーズというのが、この小説での基本設定です。なので、真面目で勤勉な波都国(はとこく)の出身であるガクやタクトはきっちり時間を守り、それ以外の人達は遅刻しがち。セルウィンは由日国(ゆひこく)出身なのでそこまでルーズでもないのですが、マイペースというか我が道を行くタイプというか、周りに合わせるのは苦手なようです。

 

 

これから向かう智那市(ちなし)は、火山地帯で森が多い場所。かつては林業や温泉産業が盛んだったようです。今は別の産業にも力を入れている様子。次の話で詳しく出て来る予定です。

 

 


 

 

「インセクト・パラダイス」は完全フィクションの小説です。

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