「はあ?なんでや」

文子は少し不服そうだ。

「ん?次の就職先、決まってたのか?」

レイラが意外そうな顔をする。

「ちゃうけど。うちは薬か医療に関わる仕事がしたいんや。これからぼちぼち探すわ」

「だったらうちで問題ない。ま、後で話すさ」

 

日暮れ時は昆虫の活動が穏やかだからだろうか、特に恐ろしい目にもあうことなく宿に辿り着く。山奥にしてはなかなか立派なホテルだった。

レイラは「どうせなら眺めがいい方がいいだろ」ということで、最上階の大部屋を2部屋とっていた。セルウィン、ガク、タクトが部屋に着くと、タクトが真っ先に倒れ込んだ。

―やばい。全身筋肉痛だ。トロットに乗るのも疲れたし、1日中重労働だったもんな―

ぼんやり壁の1か所を見つめながら、働かない頭でそう考えた。

 

ガクもタクトに続いて畳の上に大の字になったが、しばらくすると「夕日がきれい」と呟き、四つん這いでバルコニー側に歩き出した。最上階なのでバルコニーが広い。ガクはそのまま立ち上がり、外に出ると大きく息を吸い込んだ。

「涼しいねー。少し寒いくらいだ。あ、海も見える!」

荷物の整理に忙しそうだったセルウィンも、ガクの声につられて外に出る。

「さようであるな。この辺りの夕日は殊に素晴らしいと聞く」

 

「おーい、ひょっとして今、外に出てるのか?」

レイラの声だ。少し離れたところから聞こえてくる。

「レイ姉!うん、今セル兄と夕日見てたとこ」
ガクが嬉しそうに答える。

「そうか。ちょっとこっちに来てくれないか?話したいことがあるんだ」

レイラの声が、そう説明した。

 

タクトはいったん寝転んでしまったから体の力が抜けてしまい、起き上がるのが難儀だった。それでも2人がせかすので仕方なく起き上がり、隣の部屋まで行く。タクト達の部屋よりやや広い、和洋折衷の部屋だった。奥が和室、手前が洋間である。その洋間に通され、椅子を勧められた。近くのベッドの端にちょこんと文子が座り、近くにレイラが立っている。クリスとナオミは少し離れたベッドに並んで座り、こちらを窺っていた。

 

「じゃあアヤコ、話してくれ」

レイラが促すと文子はうつむいたまま数秒だまっていたが、やがて口を開いた。

「うちを、あんたらと一緒に働かせてくれへん。医療班に入って、あんたらのチームで働きたい」

 

 

 

 

〈おまけ〉

ターコイズ・プラネットの医療班の存在は、これまでにも少し出てきていました。主に社員の健康管理をおこなう部署だと思ってもらっていいです。

ターコイズ・プラネットはそこそこ大きい会社で部署もいくつかあり、仕事は細かく分かれています。実は私もいろいろと部署作りすぎてたまに混乱することがあります。そのうち会社の組織図みたいなの作った方がいいかもしれませんね。

 

 

山岳警備隊の2人のイメージをあげておきます。向かって右側が若い方。やや武骨で愛想がない雰囲気ですね。年配の人の方がフレンドリーな感じです。

 

 

 

 

 

「インセクト・パラダイス」は完全フィクションの小説です。

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