「…やれやれだ」

タクトは荷物をいったんベンチに置くと、どんよりとした空を見上げる。

新しい仕事の説明を受けた翌朝、出港する便に乗ることになったのである。

―毎度のことながら、もう少し猶予が欲しいな。まあ、急ぎの仕事なんだろうし仕方ないんだけども―

ぼんやりとそんなことを考える。

 

結局、断れなかった。ターコイズ・プラネットには父親探しを手助けしてもらった恩義がある。自分達でなければ不都合があると分かった以上、協力しないわけにはいかない。

 

「大変な仕事なのにごめんなさい。気をつけてね」

申し訳ないと思ったのか、ヒナタは朝から見送りに来てくれた。

「クワキチのことは任せておいて。いい?何かあったらすぐ大人の後ろに隠れるんだよ。子どもなんだから無理しちゃダメだ」

コウタも心配になったらしく、港で待ち構えていた。ガクにあれこれ話しかけていている。

「大丈夫だよ。セル兄やレイ姉、兄ちゃんだっているし」

ガクはそう答えて笑う。

「それは心強いね」

コウタも笑った。

 

船は東へと進む。真っ直ぐ年無国(ねむこく)に行くのかと思いきや、まずは伊女国(いめこく)の港に向かうそうだ。

伊女国に着くと、簡単な手続きがあるそうでしばらく待たされた。船酔い気味で椅子の背もたれに寄りかかっているガクに、船内でもらったパンフレットを使いタクトが風を送る。

そうしているとなぜか、遠くから手を振りながら近付いてくる人影が目に入った。

「あれ?あの髪型…」

ガクが呟く。タクトも同じことを考えていたところだった。2人の父親であるケンジの姿があったのである。

 

「しばらくぶりだなあ」

最後に会ってからそこまで長い日数が経ったというわけでもないのだが、ケンジは薄いガラスを隔てて満面の笑みをたたえている。

「今回は申し訳ありません。伊女国の社員の代わりに来ていただいて」

何人か後ろに社員がいて、その1人がこう言った。

「そういえば、この国の人は行かないの?おかしくない?」

ガクは遠慮もなくこんなことを言う。

「申し訳ないです……」後ろの社員がぽつりと言う。

「伊女国の支社は技術職や研究職の人間が多くて。基本的な訓練は受けていますよ。でも外回りは苦手で」

もう1人の社員が、すぐさま口を挟む。

「そのうち、こちらからも人員を手配します。順次応援に行けると思うので、ご安心ください」

 

 

 

 

 

〈おまけ〉

一行が伊女国に立ち寄ったのは、どうやら年無国に入るために必要な手順だからのようです。

友好国を通さないと入国できない設定なので、こういう形にしました。

そう言えば、なぜ飛行機を使わないのか、と思う人がいそうですね。

 

未来の世界では、資源を大量に使う飛行機の使用は限定されているから、ということにしています。

簡単に飛行機で移動できると面白くないからなんですが本当は。

 

 

ということで、九州の海の画像を貼っておきます。

雲の近くに何か浮いていますが、ごみじゃないんですよこれ。トンボです。たくさん飛んでいました。

体が赤かったので、アキアカネあたりかなと思います。

 

 

 

 

 

 

「インセクト・パラダイス」は完全フィクションの小説です。

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