ランはリビングの奥からつながる、パントリーに面した廊下にいた。

足を滑らせたのか、仰向きの体勢から起き上がろうとしているが、激しく腰を打ったらしい。痛みで表情がゆがんでいる。彼女の体の上には、小麦粉の袋やダンボールが乗ってしまっていて簡単に立ち上がれそうもない。

 

「ランさん、大丈夫ですか?」

タクトが小走りに近付こうとするが、セルウィンがポロシャツの裾をつかんで止める。いぶかしげにタクトが振り向くと、セルウィンが言った。

「走るでない。ワックスがかかっておる」

言われて足元をしげしげと見ると、薄暗い中でも床がつやつやと光っているのがわかる。リビングにその様子はなかった。この廊下だけのようだ。

 

慎重に歩いて、3人はランのもとにたどり着いた。

「動けますか?慌てないで、ゆっくり起き上がってみてください」

タクトが手を貸して起こそうとする。その時、ふとセルウィンが何かに気付いて上を向いた。

「タクト、離れろ!」

レイラも反応し、タクトの体を手で押さえてパントリーとは反対側の壁に押し付けた。セルウィンはしゃがみ込んでランの頭を抱え、上半身を曲げさせてパントリーから離した。

 

と同時に、パントリーの上段から何かが落ちる。ゴトンと響く鈍い音。

タクトが目を向けると、そこにはドライフルーツの入った大きなガラス瓶があった。粉々には砕けなかったが大きな亀裂が入り、小さな破片が周囲に散らばっている。

 

「えっ、何が……」

ランがあっけにとられている。セルウィンは彼女が余計な動きをしないよう肩を手で押さえた。

「ガラス瓶が落ちたんだ。破片を踏むと怪我するな。まずは片付けよう。玄関に掃除道具があったよな」

「さようであるな。30センチほどずれていたら危ないところであったぞ」

 

奥側にずらされて壁にもたれながら座るラン。しばらくもくもくと掃除する音だけが続く。

腰の痛みが引いたランの表情には、驚きと恐怖が消え、静かな怒りの色が灯っていた。

 

「終わったら、いったんリビングに戻りましょう。大切な話があります」

ランはゆっくりと立ち上がって言う。

 

セルウィンのいれた紅茶は少し濃いようだが、彼女はそれを一口すすってかすかに微笑んだ。

「おいしい」

「ラン殿の口に合って良かった。さて、話とは」

「…私の家族のことなんですけど」

ランがうつむく。窓の外では、ヒグラシの鳴き声が連なりはじめた。

 

 

 

〈おまけ〉

アフタヌーンティーって、憧れなのですが行ったことはありません。

喫茶店のおしゃれなアフタヌーンティーの画像を見ると、2段か3段になったタワーみたいな皿にお菓子てんこ盛りみたいな。

あんなの食べきれるわけがないわと、あきらめている次第です。

甘いものって、少しだけ食べるのがおいしいんじゃないですかねえ。

ケーキとかのバイキング行ったことがありますが、まあ最初はウキウキテンションMaxでもだんだんあきてきますよね。

結局サラダとか別のもの食べ始めちゃってました私。

 

 

セルウィン愛用のティーセットのイメージ。

シンプルなデザインのものを使っているみたいですね。

色薄くなっちゃいました、許してやってください。

どうでもいいけど、最近ヌン活という言葉をよく聞くように。

アフターヌーンティーを楽しむ活動ということらしいですね。

字面だけ見ると、「ヌンチャク活動」の略かと思っちゃいます。

初めて聞いた時には頭の中にヌンチャク振り回す映像が浮かびましたよ。

アフターヌーンティーの、なぜそこを抜き出したのかしら。アフ活の方が分かりやすい気がしますけれど。

 

 

「インセクト・パラダイス」は完全フィクションの小説です。

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