*マネーゴーランドが廃止になったようなので、元原稿を掲載しています。
俳人でもある筆者は過去の先輩たちの俳句を読む機会がたくさんあります。俳句には日常生活が現れますが、当時のお金事情もいろいろな形で表れています。いくつか面白そうなものをピックアップしてみました。
1.保険事情
芍薬や枕の下の金減りゆく 石田波郷
この句の作者は大正から昭和にかけての人で、保険制度が十分機能していなかった当時、病気になった時のお金の心配を現した句です。大事なお金を枕の下に隠してとってあるけれども、それがどんどん減っていくという内容の句です。
国民健康保険制度が始まったのは1938年ですが、当初は戦争などの影響もあり、保険料支払いも滞ってあまりうまく機能していませんでした。現在の健康保険制度に改定されたのは1961年、また民間の医療保険は、1976年、アリコ・ジャパンが発売開始してからのことです。
保険制度のありがたみに気づかされます。
2.集金事情
妻留守に集金多し茎立てる 杉本 寛
集金は残り一軒雨蛙 納谷一光
どちらもそう古い句ではありません。ほんの30~40年前の光景ですが、今ほど口座振替やオンラインの決済方法が発達していなかったので、お金の支払いはその場で行うか、集金がもっぱらでした。奥さんが留守の時に限って集金が多く来る気がする、集金あと1件だけど雨が降ってきそうだ、そんな内容の句です。
IT化が進み、海外送金も仮想通貨を使えば安く行えるようになった現在、ずいぶんと楽な時代になりました。
3.お金の工面・借金事情
金借りて冬本郷の坂くだる 佐藤鬼房
金貸してすこし日の経つ桃の花 長谷川双魚
金借りにきて懐手解かぬとは ねじめ正也
個人に対して銀行が貸付を行うのは昭和初期からありましたが、金利が6~8%と高かったり、保証人を立てなければいけなかったり、また戦争の影響で一時中断していたため、一般の人がお金を工面しなければならないときは持ち物を売るか、個人からお金を借りるしかありませんでした。
人にお金を貸す、人からお金を借りる時の気持ちというのは、時代が変わっても変わりません。「高利貸しでも借りるしかないんだ、つらいなぁ」「貸した金返ってくるかなぁ」「お金借りに来てなんだその態度は」そんな内容の句です。
お金事情の昔と今を比較すると、お金のありがたみもわかってきます。これを機に、お金を稼ぐ、貯める、増やす。いろいろな付き合い方を研究してみましょう。
(2016年11月掲載)