教会の、日曜礼拝に通いながら、数カ月。



いつまでもゆう子を引きずっているだけではなかった。



1992年も半ばになると、バイト先や学校で新たな出会いもあり、中には俺に好意を抱いてくれた娘もいた。


前に進みたい俺は、その子とデートしてみたが、ある夜、抱え込んでいたゆう子への未練を話してしまい、当然その子とはうまくいかなくなった。



更に1993年になると、別の娘に好意を抱かれたので付き合ってみたが、やはりゆう子のことが吹っ切れず、自分の態度を曖昧にしたまま、相手を傷つけてしまった。



そして1994年。


もう、いつまでも過去を引きずる訳にもいかない。


俺は積極的に彼女を作るべく過去を封印し、まるで心に空いた、ゆう子の穴を埋めるかの様に自分から行動した。


気に入った子に声をかけ、デートを重ねた。


最終的にはフラれてしまったが、振り返ると自分とは合わない子に、無理をしていたことに気づいたのだった。


それから就職〜転職も経験し、新たな人間関係が増えていき、時代の流れで携帯電話を持つようになった。


そして1998年。俺は26歳となり、仕事で昇進し店長となっていた。隣町で一人暮らしをしており、相変わらず彼女はいないものの、それなりに充実した公私を送っていた。


そんなある日、仕事でとある金融機関に出かけた。


窓口付近で待っていると、受付の女性から不意に声をかけられた。


・・・私の事、覚えてますか?


え?俺は微笑んでいる女性の顔を見たが、ちょっと思い出せない・・・と、そのまま目線が自然に胸のネームプレートに向かった瞬間、がく然とした。


なんと女性はあの、ゆう子だった。


・・・実に、7年ぶりの再会。


ゆう子は髪形が変わって、少しメイクもしてる様で、すっかり大人の女性になっていた。


あの、会いたくて会いたくて仕方のなかったゆう子が、目の前にいる。


しかも、向こうから声をかけてくれた。。!!


俺は突然の再会に戸惑い、頭が真っ白になったので、いくつか交わした会話の内容はあまり覚えてないのだが、


・・・きれいになったね。


っていうのが精一杯だったと思う。


あまり時間もないし、彼女の迷惑になるので、用件を済ませた俺は一旦帰社したが、居ても立ってもいられず、自分の携帯番号を書いた名刺を後日渡しに行き、電話して欲しいとだけゆう子に伝えた。


復縁したい。という願望がなかったと言えば嘘になる。


しかし俺自身、独身で且つ、彼女はいなかったものの、あれから何人かの女の子と恋愛してきたので、今更ゆう子に今でもお前が好きだ、なんて言うのは虫が良すぎる様で自分が許せなかった。


ならば、何故名刺を渡したか。


俺はとにかく、何でもいいからゆう子と話したかった。

あの時、別れなければならなかった理由も聞ければ聞きたかったけど、兎にも角にも単純に話したかった。


そして数日後、携帯電話がなった。


ゆう子からだった。


しかし間の悪いことに、その時俺は実家で家族と夕飯を食べている時だった。


流石に家族の前で話す訳にもいかず、思わず「悪い、今ちょっと都合が悪いから、かけ直してくれないか?」と言って電話を切った。


・・・しかし、ゆう子から電話がくることは二度となかった。


彼女が、電話での俺の態度をどう受けとったのかはわからない。


改めてゆう子の職場に行くという選択肢もあったかもしれないが、また自分の感情だけで暴走すれば、19の時の繰り返しだし、彼女の迷惑になる。何より電話がないことが、彼女の答えなんだと思うしかなかった。


もしこれがテレビドラマなんかだったら、再会してからまた発展があったりするものだと思うが、現実はなんともカッコ悪いものだった。


電話を切らずに、そのまま外に飛び出せばよかったなんて考えもしたが、後の祭り。


もしかしたら、ゆう子にはもう、別の誰かがいて・・・なんて想像や、内容はともかく、とにかく電話をかけた、という事実で彼女なりに約束を果たしたのかもしれない、なんてことも考えたが、結局のところ想像の範囲でしかなく、19の頃の疑問は、何も解決できないままに終わった。


26歳の俺に出来たことはただひとつ、結果を黙って受け入れることだけだった。



・・・そして更に時は流れ、やがて俺は職場で出会った女性と結婚し、ごく普通の家庭を築いた。


ゆう子との思い出と別れの疑問を胸の奥にしまったまま、数十年の歳月が流れていった。。



続く