雨宮慶太 初監督作品 『未来忍者 慶雲機忍外伝』 | コワれるまで ALLORA

雨宮慶太 初監督作品 『未来忍者 慶雲機忍外伝』

『ゼイラム』(1991年)に続けて、雨宮作品をもう一つ書き留めておきます。

『未来忍者 慶雲機忍外伝』(1988年)。


旧い作品だなー。

まあ、観ればすぐに雨宮慶太だと分かるデザイン。
例えば、これが主人公の“機忍 不知火”です。
未来忍者 慶雲機忍外伝 キツネ目
'94年のキツネゼイラムにも通じるキツネ目。
でも不知火には上まぶたがあって、目の形が変わります。


本作は、雨宮監督が監督を手がけた初の作品です。
商業映画作品としてではなく、最初はゲームとして、次いでOVAとして制作されました。

この監督はその後どんどん優れた特撮作品を輩出していくわけですが、本作はもともとがゲームの映画化。

加えて、OVAという「観たいヤツだけ観ればいい」という市場向けだからか、ストーリーの品質よりも監督自身のデザインキャラクターがスクリーンで暴れ回ればそれで良いといった感じです。

これは、味方側の城の巨大な大砲。
未来忍者 慶雲機忍外伝 城塞砲
もはや宇宙戦艦ヤマトはてなマーク
2000年の雨宮作品 TV特撮ドラマ『鉄甲機ミカヅキ』(2000年)にも、そっくりな兵器が登場します。

このタイプの兵器は雨宮作品では見受けませんが、これは1980年に公開された『スターウォーズ Episode V: 帝国の逆襲』に触発されたのでしょう。

言わばスノーウォーカーの日本版といったところでしょうか。

この “戦国” ウォーカーは、1台作って、後は5台とかに見えるように合成したのでしょうが、こういう処理は雨宮作品には珍しい。

こういう大きなメカ(に見せるマニチュア)は、デザインはまあまあでも、雨宮作品はたいてい予算が無くて、1つとか、数がやたら少なくて貧弱です。

そういう、なんとなくチープなところが、雨宮らしくて良いのです。

あとは、この映画はひたすらチャンバラあるのみ。
ストーリーは、このチャンバラと特撮にとってつけただけです。

なので登場人物に魅力を感じませんが、雨宮イズムに酔える私のようなファンには、コレで充分というところでしょう。



    手裏剣    手裏剣    手裏剣



本作でうれしいのは、特撮時代劇 『仮面の忍者 赤影』(1967年~1968年)など、昔から特撮時代劇ドラマで活躍してきた牧冬吉の顔を見られたことです。

今はもう故人となってしまった方ですが、‘白影さん’は私たちの世代にとっては、永遠のヒーローなのです。

あと、『ゼイラム』シリーズで活躍することとなる井田國彦が、もう既にこの作品に出ていたのですね。
未来忍者 慶雲機忍外伝 井田國彦



本作では時代考証よりも雨宮デザインが優先され、衣装や小物が凝られています。

女性の和服も、バトルスーツにされてしまっています。
未来忍者 慶雲機忍外伝 衣装


本作が公開された当時は、奇抜な世界観にうれしかったものです。

それでも、センスの古さは否めませんね。
それと、やはり特撮では限界があるようです。

時代考証を超え、オネジャパニスクを追究した作品として、2009年に『GOEMON』を観たときは、そのデザインにひっくり返りました!!
GOEMON