読めば考え方が変わる。考え方が変われば生き方が変わる。そんな話。 | 日本人のための近現代社会

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主に日本近現代史を日本人の立場から分かりやすく解説した動画をあげています。日記は投資について書いていきます。

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 いつもは中高生以上を対象にした動画を出してるんですが、今回は例のアレのせいで学校も休校になっているという事で、小学校の高学年くらいでもちゃんと理解できる話をしていきます。

YouTube https://www.youtube.com/watch?v=Vc1jTXtEY5g

ニコニコ https://www.nicovideo.jp/watch/sm36585516

 

という事で、僕が小学校の時に出会った中島敦の山月記、これについて話をしていこうと思います。と言っても今回は別に文学の解説をしようという事ではないです。あくまで僕がこの話を教科書で読んでどんな衝撃を受けて考え方がどんなふうに変わったかっていう話になります。まずはあらすじが分からないと話にならないのでザックリと説明しますね。

 主人公は頭はすごく良いんだけど、プライドがぶっ飛んで高い李徴(りちょう)という人物で、もう一人話の聞き役として友達のいない李徴のほぼ唯一の友達と言える袁サン(えんさん)というのが出てきます。舞台は昔の中国です。

 李徴はとても頭が良いですから科挙という試験に合格してエリート官僚になるんですね。今の日本で言うと東大を成績1位で卒業して財務省の高級官僚になりましたくらいのイメージです。ところが、李徴はやたらとプライドが高くて、「なんで俺が能力もまるでないバカな上司に従わないといけないんだ」みたいな感じに思いたった1年で「俺は詩人になって後世まで名を残すんだ!」といって辞めてしまうんですね。今でいうと、高級官僚ルートを自ら捨てて「俺は100年後も歌われるような一流のアーティストになるんだ」と言って仕事辞める感じですかね。

 当然そんなにうまくいくはずもなく数年後には貯金もなくなり、仕事をしないと生きていけませんから再び公務員になるということになります。1回完全に自分の都合で辞めちゃってますから当然1番下っ端からの再スタートという事になります。これが実につらかった。上司だけでなく、当時完全に見下してバカにしていた同期の人たちから命令される立場になってしまいましたからね。これがぶっ飛んでプライドの高い李徴にとっていかに屈辱だったかは言うまでもないですよね。そしてそんなストレスである夜、李徴は「うわあああああ!」と叫んで外に飛び出してしまい、行方不明になってしまいます。

 時は流れて1年後、友達の袁サンの登場です。旅の途中でトラに襲われるんですね。草むらの中から飛び出したトラに襲い掛かられ、殺されそうになるんですが、なぜか急に襲うのをやめてトラが草むらに隠れてしまいます。不思議におもった袁サンが草むらにおっかなびっくり近づくと「危ないところだった」と繰り返しつぶやく声が聞こえ、「その声はもしかして友達の李徴か?」と声をかけるとしばらくの沈黙のあとで「そうだ」と返事が返ってくるんですね。そしてしばらく思い出話に花を咲かせた後に袁サンは聞くんですね。「李徴よ、お前は何でそんな姿になってしまったんだ」と。李徴は答えます、「わからない。しかし考えようによっては思い当たることが全くないことは無いかもしれない」といって説明を始めるんですね。

 

 この後の説明の部分を読んで当時小学生の僕はピカチュウの10万ボルトの直撃をくらったかのような衝撃を受けたわけですよ。

当時の僕は授業中にもかかわらず、先生の話も全く耳に入らず、下を向いて涙をこらえたものですよ。授業中いきなり泣き出す変な奴認定はされたくないですからね。それくらい衝撃的だったんです。

 

 なんて書いてあったか。「人間だった時、俺は人とほとんど関わらなかった。周りの人間は俺のことを傲慢で偉そうな奴だと言っていたが、実はほとんど羞恥心に近いものだという事を知っている者はいなかった。もちろんプライドがなかったわけではない、しかしそれは臆病な自尊心とでもいうべきものだったんだ。俺は詩人になるんだと言って飛び出したものの、自分よりレベルの高い人から教えてもらいに行ったり、同じく詩を読んでいる人たちと関わろうとしたりすることもなかった。かといって同期の連中と同じように仕事をすればOKと考えることもできなかった。自分が天才じゃないという現実を恐れるがゆえに周囲を見下すような行動をとり続けた。また、自分は天才なんだという気持ちを捨てることもできず、周囲と同じように生きるという事も出来なかった。ともに臆病な自尊心と尊大な羞恥心のせいだろう。そしてこれらの心のせいで俺は人と関わることを避け、周りの人も俺と関わろうとはしなくなっていった。そしてますます臆病な自尊心を強めることになってしまい、周囲に攻撃的になっていった。行きついた果てがこのトラの姿なんだろう。昨日もこの苦しみを誰かに分かってほしいと月夜に向かってほえ続けたが、動物も人間もみんな俺のことを怖がって逃げていく」そういう話なんですね。

 

 臆病な自尊心と尊大な羞恥心という言葉が出てきますが、ちょっと難しい言葉なので小学生向けに補足しますね。尊大というのは偉そうにすること、自尊心というのはプライドとか誇り、羞恥心というのは恥ずかしいと思う気持ちと思ってもらうといいかと思います。普通の感覚としては尊大な自尊心と臆病な羞恥心なわけですよ。偉そうにしてるプライドの高い人とか臆病で恥ずかしがりやな人っていうとすごくイメージしやすいですよね。

 ところが、世の中には分かりにくいけど逆のパターンもあるんだよってことが当時小学生の僕はすごく理解できてしまったんですね。と言っても別に「こんな難しそうなことを小学生にして理解できた僕、頭いいでしょ?」って言いたいわけじゃないんですよ。まさに当時の僕が臆病な自尊心と尊大な羞恥心をやらかしてた子どもだったんですよ。だから理解できたんです。

 

 小学生の頃の僕の基本スペックを先に伝えておくと学力レベルは中の上から上の下くらい、クラスの平均よりはちょっと上くらいってかんじ。体格はヤセチビで、背の順で並ぶと常に一番前か2番目、そんな体格なので当然走るのも遅いし、運動面は下の下という感じですね。図工はびっくりするくらい下手くそで、絵も工作も下の下という感じでした。ところがすごい負けず嫌いなんですよ。プライド高いんです。ここまで話すと「あぁ」って察してくれる人もいるんじゃないですかね。

 

 まず、図工の提出物なんですが、たぶん半分も出してなかったんじゃないかなと思いますね。よく先生から早く出せって言われてました。低学年の頃は普通に出してたんですよ。出せば褒められてましたから。でも3年生とか4年生くらいになると周りと比べて自分の作品が明らかにレベルが低いのって分かってくるじゃないですか。先生も口だけは「上手上手」って言ってはくれるけど内心ではそう思ってないってのも理解できるようになってきますよね。だから自分が低レベルな物しか作れないっていうのを他人に見られたくないわけです。結果として作ろうとしないから提出もしないという事になっていくんですね。

 運動会なんかでも同じです。100m走とかあるじゃないですか。あれもさ、ランダムで組み合わせ決めてくれればまだいいものを、先生たちは良かれと思ってわざわざ早い子は早い子同士、遅い子は遅い子同士で走らせるじゃないですか。これは下の下の僕からしたら拷問でしたよ。早い子たちは別にいいんですよ。トップグループの中で仮に6人中6位だったとしても「今回は残念だったね」で終わるんです。ところが僕のいた下の下グループは悲惨ですよ。だってこの中で負けたらめでたく学年最下位認定ですからね。こんな屈辱的な事ってあります?だから僕は小学校時代1回も運動会の短距離走を全力で走ったことがないです。「僕は全力で走ってないから一番下じゃない」っていう言い訳にもならない言い訳をするためなんで今考えるとバカなことやってたなぁって感じですけど当時の僕としては必死でしたよ、みんなから「たまには真面目に走れよ」とか「何でさぼるんだよ」とか言われるのもそれはそれで辛いんです。こんな恥ずかしい理由説明できるわけないですしね。

ここまでが僕が小学校時代に臆病な自尊心だと認識した話です。

 

 次、尊大な羞恥心にいきます。小学生時代のぼくって学力面だけは中の上くらいあったんですよ。でも決してトップグループにいるわけではないんですよ。自分がほかの分野に比べたらできる勉強の分野で上を目指そうって本気で思ったらトップグループの人たちとか先生にどんな風に勉強をすればより理解できるのか聞きに行ったりすればいいじゃないですか。でもできないんですよ。だって質問に行くという事は自分はその人たちよりも下のレベルだってことを認めることになりますからね。結果、自分よりできない人たちに聞かれてもいないのに偉そうに教えて自己満足に浸るというしょうもないことをやってたわけです。

 

 こんな小学生でしたから山月記に出てきた臆病な自尊心と尊大な羞恥心という言葉は小学生ながら僕の心に深くふかーく突き刺さったんですね。で、自分なりに今のままじゃ絶対ダメ人間になると思って、何とかしようと考えて色々ともがき始めるという事になるんです。でも人間なかなか性格って変えられないじゃないですか。下の下レベルのものを他人に見せたくないっていう根本を変えることは難しかったし、自分はあいつらより下なんだって認めて質問することも難しかったわけです。だってプライド高いんだもんしょうがないじゃないですか。だから発想を変えました。とにかく下の下レベルから脱出しようと。

 

 運動面で言うなら単純に走るという事に関しては身体能力がものをいう部分が大きすぎて練習してもなかなか厳しかったんですが、ボールを投げたり蹴ったりするみたいに技術が関わる割合が大きいものに関してはうまい人がやってるのを見てひたすら真似し続けるっていうコソ練(隠れて練習すること)をやりまくった結果、中の下くらいまではいけました。いや、そんな回りくどいことやってないでうまい人に普通に聞けば早いじゃねーかって言われそうですけど、それができれば苦労はしないんです。ついでに言うとまともにぶつかっちゃったらヤセチビの僕は絶対に勝てないので、サッカーにしてもバスケットにしても周りの人の動きを見てボールのいきそうなところを予測して動くクセがつきました。

 

 また、絵を描くという事に関しては色々考えた結果、算数の製図を応用しました。具体的には画用紙を9分割くらいにして書くものを写真にとって写真にも9分割の線を入れるんですよ。で、例えばこの写真を絵にするなら屋根は青の点から左に線に沿って真っすぐ半分くらい行ってそこからちょっとだけ上に上がってるなとかそんな感じで、算数の時間にやる図形の作図を定規を使わずにやるみたいな要領で書くっていうやり方を思いついたんですね。

  その結果、お手本があるものに関してはある程度書けるようになったんで提出できるようになりました。それでも完全に想像して書かないといけないようなものに関しては良い方法が最後まで浮かばなかったのでブッチしたんですけどね。

 

 この話をすると、「それは頭がいいからできたんだろ?」みたいに言う人が時々いるんですけど、それは違いますね。今出したのはあくまで成功例を出しただけですから。うまくいかない事もいっぱいあるわけです。頭とか要領が良い人はそもそもこんな苦労しません。だってこんなアホなことやってないで上手な人に普通に聞けばいいんですから。

 そんな頭の悪いことをやってた僕でもいくつかの成功例があるのはできないなりに何とかしようとして必死に考えた結果なんですよ。今はネットが発達して知りたい情報はすぐに検索してみることができますから、僕が小学生だった頃よりかなり効率的にやれるはずです。うらやましい。

 

 とにかく僕が山月記に出会って一番変わったのは、「はじめから何もしないで諦める」という事をやめたことです。もちろん色々試してみた結果、これはダメだとなって諦めることもあるし、その結果提出物を出さないっていう事も多々ありました。でも、このとりあえず色々考えてやってみるっていうのが実は一番大事なんじゃないかと思うんですよ。だってさ、始めから何もやる気がなかったらいくら周りが誰がやっても失敗しない素晴らしいやり方を教えてくれたとしても、本人に動く気がないわけですから絶対に成功という結果は得られないんです。0に何をかけても0なんです。人間的な成長ももちろん0です。むしろ、自分はどうせできないというマイナスの感情だけが残るのでマイナス成長とも言えるかもしれません。

 でもさ、たとえ中の下までしか行けなかったとしても「苦手な事であっても下の下から中の下までは自分の力でいけた」という自信につながるんですね。そうすると自然な流れとして「苦手な事でも中の下までは行けるという事は得意な事をやればどうなんだろう」と考えるようになると思いませんか。そんな相乗効果も発生するんですね。

 また、仮にうまくいかなかったとしても「これだけやってみてダメだったんだからしょうがない」って感じで良い意味であきらめがつきますし、試行錯誤した経験値は残りますから、後々別の似たような場面で「あのときはうまくいかなかったから今度は違う方法でやってみよう」という風に考えることができます。完全に無駄になることはありません。

 余談ですけど、ボールの投げ方やけり方みたいなことは小学生の頃にコソ練をしまくったおかげで独学でマスターしてるので、体の使い方とか基本的な動きに関しては野球だろうがサッカーだろうが走り方だろうがジャンルを問わず子供たちに教えることができますね。こういう副産物が生まれることだってあるわけです。

 

 今回はいつも以上に魂込めて動画を作ったのでだいぶ長くなってしまいましたね。この動画はyoutubeの再生リストの教育関連のところに入れておきます。チャンネル登録、お気に入り登録をよろしくお願いします。また、併せて配信している「日本近現代史」「朝鮮半島史」「学問のススメ」の動画の方も是非見てみてください。

 

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