4月、新年度がスタートしました。
改正宅建業法がいよいよ施行となり、さくら事務所ホームインスペクション北海道(北工房)へもインスペクションのお問い合わせが急増しています。
何が改正されたか?何をするのか?というあたりを簡単にご説明しつつ、今後起こりうるトラブルついても触れたいと思います。
長くなるので前編・後編の2部構成でお送りします!
まずは改正宅建業法の施行によって、何をしなければいけないかを解説します。
以下の3点が新たな措置内容です。
【1】既存建物の媒介契約締結時に宅建業者はインスペクションについて買主・売主に説明を行い、実施するか否かを確認します。
実施する場合はインスペクション業者をあっせんします。
あっせんとは単なるインスペクション業者を紹介するだけでなく、具体的に見積もりをとったり…というところまで求められます。
【2】インスペクションを実施した場合、重要事項説明時には宅建業者が買主へインスペクション結果について説明を行います。
【3】売買契約時には現況を買主・売主の双方で確認し、宅建業者はその内容を書面で交付しなければなりません。
この仕組みにより、買主・売主が安心して取引を行う事ができ、既存住宅の流通が促進され、また引き渡し後のトラブルを防止できるという効果が期待されています。
インスペクションのサービス利用の促進と、既存住宅売買瑕疵保険への加入促進という狙いもあります。
(国交省HPより転用)
これだけ見るとバラ色な制度と思われますが、問題点が多く挙げられます。
≪問題点 1≫
まずは半日~1日ほど講習を受けただけの建築士が、どこまでインスペクションを行えるのか?という点です。
国交省はとにかく今回の建物状況調査ができる技術者を増やしたく、建築士で講習を修了すれば今回の改正宅建業法によるインスペクションを行うことができる、としました。
1度も現場を見たことのない建築士でも、経験値の少ない新米建築士でも、建築士事務所登録済みの建築士であれば、既存住宅状況調査技術者として報酬を得て建物状況調査が行えてしまいます。
≪問題点 2≫
さらに大きな問題点が、この制度自体が「売主依頼のインスペクションを想定している」という点。
売却の場合は売り出し前に媒介契約を締結しますが、買主とは売買契約と同時に媒介契約を結ぶことがほとんどです。
つまり「買主が媒介契約する時にインスペクションあっせん」=いざ売買契約!という場面で宅建業者からインスペクションやります?どーします?と聞かれたところで…という事です。
≪問題点 3≫
また、売主側のインスペクション結果が信頼できるかどうか?という点が挙げられます。
売主・仲介業者はその物件を「売りたい」のです。
「何か不具合があれば売れない・物件価格が下がる」という事を危惧する「売りたい売主・仲介業者」が主導で行ったインスペクションの結果が本当に安心な取引に繋がるのか…。
何か不具合が見つかった時に、インスペクションを行った者に対して「なかったことにしてほしい、報告書の不利になるような文言を削除してほしい」なんてお願いしているかもしれません。
紹介○件で○円、といったバックマージンが発生しているかもしれません。
買主は、そんな癒着しているかもしれない売主・仲介業者主導のインスペクション結果を信じることができるでしょうか。
≪問題点 4≫
さらに大きなトラブルのもととなりそうなのが、「インスペクション結果を宅建業者が説明する」という点。
重要事項説明時の書面には
「 雨漏りの跡 … あり・なし・わからない 」というような簡単なチェック欄が並んでいるだけです。
もし自分がその物件を買おうとしているとき、「雨漏り跡 あり」「基礎に劣化 あり」だったら…。
必ず「それって大丈夫なの?」と心配になって聞きますよね。
その質問に回答するのが、調査を行った技術者ではなく、建築知識に乏しい宅建業者です。
宅建業者は不動産取引に関してはプロですが、建築的なことにかんしては知識がない方がほとんどです。
「有り無しチェック」の書面を見て、その不具合の状況や、劣化の度合い、原因や対策がわかるはずありません。
売りたい宅建業者が「いえいえ、そんな雨漏りのシミなんて問題ありませんよ!」なんて勝手に答えてしまう可能性も十分に考えられます。
完全に後々トラブルになります…。
~後編に続く~