根っこには純文学を持つ、信念の作家か。吉村昭と津村節子は、夫婦で作家として成功した珍しい人たちだ。津村節子は芥川賞をとっているが、吉村昭は候補四度で受賞はしていない。それでも、ひねくれることもなく書き続けた吉村昭は「戦艦武蔵」によって新境地を開き、売れっ子になっていく。 吉村昭は、史実に根ざした名作を数々書くが、純文学を捨てることはなかったようだ。その後も、短編を書き続けている。 「私の文学漂流」によると、川端康成や梶井基次郎が好きだったようだ。僕は彼の初期の短編「鉄橋」が好きで、愛読していた。