角川書店が仕掛けたのか、横溝正史のブームがあり、横溝正史作品がたくさん映画化されたり、テレビドラマになったりした。
一番有名なのは「犬神家の一族」だろうか。萩原健一ファンの僕は映画を観に行ったものだ。実は面白くなかった。映画で金田一耕助を演じたのは、石坂浩二と渥美清だったか。僕が好んだのは、TBSのドラマで金田一を演じた古谷一行だ。そのドラマは欠かさず観たものだ。そのドラマの中でも、面白く思ったのが「三つ首塔」だった。
そんな訳で、ふと再読を思いたった横溝正史作品の中で「三つ首塔」を手に取ったのだ。
横溝正史は、ほとんど推理作家ではない。物語作家だろう。この策は作品は、宮本音禰というヒロインの手記という体裁をとっている。一応、きちんとトリックもあるのだが、遺産を巡る、一族が醜く殺されていく奇怪さを楽しむべき小説のように思う。