第19回 紛争解決手続代理業務試験問題 (倫理問題)
<小問2>
開業の特定社会保険労務士乙は、D社の従業員で現在は育児休業中のEから依頼を受け、代理人として、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第52条第1項に基づく調停を労働局に申し立てた。
Eは、D社との間で育児休業明けの復職先について相談していたところ、もともと課長職であったにもかかわらず、D社から、すでに別の者がEの後任として着任済みなので、Eが復職する場合には、別の部署に異動したうえで課長代理となると言われたことから、調停においては、従前どおりの部署で課長職に戻すことを求めている。
乙はEの代理人として調停の第1回期日に出頭し意見を述べたが、D社は主張を譲らず、合意に至らなかった。ただし、D社の求めによって調停手続は続行となり、約1ヵ月後に第2回期日が設定された。
第1回期日の直後、乙は、D社の代表者から電話で、「復職する場合の条件は変えられないが、もしEが自発的に退職してくれるのであれば、相当額の金銭を支払って解決する用意がある。ついては、報酬として30万円を支払うので、D社の代理人として、Eをその方向で説得してくれないか。」という申し出をうけた。
乙は、その場で即答せず、ただちに電話を切ったうえで、すぐにEと連絡をとり、D社代表者から上記申し出をそのまま正確に伝えた。すると、Eは、「実は、第1回期日におけるD社の頑なな態度を見て、私も、お金を支払ってもらえるなら退職してもいいかなと思っていたところです。その前提でD社と金額の交渉をしてくれませんか。D社の代理人にもなっていただいて結構です。乙さんも、両方から報酬がもらえて得ですよね。」と答えた。
法律に照らし、乙は、D社の申出に応じて同社の代理人となることができるのか。(ア)「代理人になることができる」又は(イ)「代理人となることはできない」の結論を解答用紙第7欄の結論欄にカタカナの記号で記入し、その理由を250字以内で記載しなさい。
【分析】
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先の案件 |
状況 |
第19回 設問2 |
Eから 相手方はD社
特定社労士乙は、D社の従業員で育休中のEから依頼を受け、代理人として、調停を労働局に申し立てた。 Eは、D社との間で育休明けの復職先の相談していたところ、D社から、すでに別の者が(もともと課長職であった)Eの後任として着任済みなので、Eが復職する場合には、別の部署に異動したうえで課長代理となると言われたことから、従前の部署で課長職に戻すことを求めている。 乙はEの代理人として調停の第1回期日に出頭し意見を述べたが、D社は主張を譲らず、合意に至らなかった。約1ヵ月後に第2回期日が設定された。 |
第1回期日の直後、乙は、D社の代表者から電話で、「もしEが自発的に退職してくれるのであれば、相当額の金銭を支払って解決する用意がある。報酬として30万円を支払うので、D社の代理人として、Eをその方向で説得してくれないか。」という申し出をうけた。 乙は、即答せず、電話を切ったうえで、Eと連絡をとり、D社代表者から上記申し出をそのまま正確に伝えた。 すると、Eは「第1回期日におけるD社の頑なな態度を見て、私も、お金を支払ってもらえるなら退職してもいいかなと思っていたところです。その前提でD社と金額の交渉をしてくれませんか。D社の代理人にもなっていただいて結構です。乙さんも、両方から報酬がもらえて得ですよね。」と答えた。 法律に照らし、乙は、D社の申出に応じて同社の代理人となることができるのか。 |