ありがとうございます、リバイバル上映!
『千年女優』をスクリーンで観られる機会は貴重です。
あの光景に満たされる興奮を、あなたにも。
(C)2001 千年女優製作委員会
女優の人生を映画史で彩って傑作
あらすじは、女優の生きざまである。
伝説の女優・藤原千代子は全盛期に引退。
以来30年間、世に出ていない。
そんな千代子がインタビューを受けるという。
喜び勇んで収録に駆けつけた立花は、熱烈な千代子ファン。
立花とカメラマンは、大女優の生涯を体験することになる。
そう、文字通りの体験である。
インタビューのはずが、劇中劇に放り込まれたような目まぐるしさ!
現実と虚構が混沌とする描写だ。
ここで振り落とされてしまうと、映画に乗り遅れるかもしれない。
そんな時こそ、ブルース・リーの格言に頼りたい。
don't think, feel=考えるな、感じろである。
少女時代の千代子が出会った一人の男。
男が遺したものは、1本の鍵だけ。
その鍵を握りしめ、千代子は男の影を追うのである。
鍵の君を追う時間が藤原千代子主演映画の名シーンで彩られていく。
その美しさといったら!
迫力といったら!
今なお限界を突破しているかのような、目にも艶やかなアニメーション。
もう好き!
キャストとスタッフと今敏監督
(C)2001 千年女優製作委員会
藤原千代子の声優は3人いる。20代までの折笠富美子、40代までの小山茉実、そして70代の荘司美代子。この継投が素晴らしい!各年代で千代子を表現。いちいち、感嘆。
(C)2001 千年女優製作委員会
鍵の君がカッコ悪かったら成立しない物語である。声優は山寺宏一だ。イケボ(イケメンボイス)の権化。コレは納得。声だけで惚れちまう。
(C)2001 千年女優製作委員会
立花役も飯塚昭三と佐藤政道で継投なのだけれど、違和感がない。殊に中年期は味しかない。ストーリーを取りまとめる麻縄のような役柄で、人間くさくて力強い。
平沢進の音楽が至高! 『ロタティオン(LOTUS-2)』が流れる瞬間、ブワーッと体が熱くなって発汗するのは、当方が中年女性だからだけでもないはずだ。
※最高です↓
当ブログで何度も語らせていただいている故今敏監督の、狂気的な天才性が爆発。夢物語のような筋立てを具現化する手腕。時間も状況も錯綜する中で、女優の人生と昭和史と映画界を描き出す。ただただ脱帽。手の届かない存在だ。
なお本作は、第5回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を『千と千尋の神隠し』と同時に受賞した。
「女優」という生き物の狂おしさ
映画女優として、数多の人生を生きる千代子が美しい。
彼女が置かれる立場、背景は千変万化。
その華やかさ!
撮影の裏表に紛れる実生活。
ここに詰まっているのは、まさしく映画愛だ。
その中を駆けていく千代子。
鍵の君を追い、前だけを向いていく。
だが、今の千代子は老齢なので。
映画スタジオの中で生きてきた人である。
記憶が入り混じるのは道理だろう。
そんな思い出を、走馬灯のように見せていただく贅沢。
そしてこれはまた、関東大震災のさなかに生まれた女性の、地震と共にあった人生でもある。
と、何やら、実録ドキュメンタリーを観てきたかのような感想で恐縮ながら、仕方がないのです。
だって、実在していたかのような存在感だから。
ラストシーンに胸を撃ち抜かれるか、否か。
そこで、評価は変わって来るだろう。
当方はとても好きだった。
何度観ても、シビれる。
「女優」を描くのに、あれ以上のセリフはこの世にないと思われる。
名作映画の登場について
↓ここから少しネタバレかもしれません
↓シーンについて書いています
↓ネタバレかもしれず、ご注意を
多くの名作邦画シーンがオマージュされており、車引きとお嬢様のくだりは三船敏郎主演『無法松の一生』。
戦国時代アクションは黒澤明監督『蜘蛛巣城』。
小津安二郎作品や『君の名は』も顔をのぞかせる。
と、まるで映画史。
そもそも、千代子のモデルは原節子だ。
※原節子は小津安二郎監督の逝去に伴って引退となり、その後は姿を現さなかった。
今敏監督によれば、
“かつて大女優と謳われた老女が自分の一代記を語っているはずが、記憶は錯綜し、昔演じた様々な役柄が混じりはじめ、波瀾万丈の物語となっていく” たったこれだけのメモが約2年の間に87分の長編アニメーション映画に育ったのです。我ながら改めて驚きます。(→KON’S NOTE)
1/19から2週間限定でリバイバル上映中です。全国109館の劇場で。ぜひ。
ミニポスターが特典! 大きさ比較はPhone8(古)です。
※秋田シネマパレで鑑賞した際の感想ですけれども、もちろん、このサムネは藤原千代子じゃありません↓
↓コチラも今敏監督作品感想です
2001年製作/87分/日本
監督・原案・脚本・キャラクターデザイン:今敏/脚本:村井さだゆき/プロデューサー:真木太郎/企画:丸山正雄/演出:松尾衡/キャラクターデザイン・作画監督:本田雄/作画監督:井上俊之、濱洲英喜、小西賢一、古谷勝悟/美術監督:池信孝/美術設定協力:末武康光/色彩設計:橋本賢/撮影監督:白井久男/編集:寺内聡/音楽:平沢進/音響監督:三間雅文/タイトルデザイン:山下京子/アニメーション制作:ジェンコ、マッドハウス/声優出演:荘司美代子、小山茉実、折笠富美子、飯塚昭三、津田匠子、鈴置洋孝、京田尚子、徳丸完、片岡富枝、石森達幸、佐藤政道、小野坂也、山寺宏一、津嘉山正種
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