結末は絶対に教えてはいけない映画。
がっつりミステリーを求めて結末も知っている本作を初見したのだけれど、思った以上。アガサ・クリスティ原作で名探偵ポワロと双璧をなす、名探偵ミス・マープルの登場だ。
名探偵が後期高齢者という素敵
まず、恐縮ながら日本版ポスター↑どうしたどうした？である。本作の舞台はイングランドの片田舎。なのに、ビッグベン時計がバーン！ ロンドンは本編に登場しなかったはず…と、人を不安にさせてくる。
本国版のポスターはこちら↓
良いです、シャレてる。ザワザワする。そういう映画でございます。タイトルも改変されており、原題は『The Mirror Crack'd 鏡は横にひび割れて』だ。
あらすじは、こうだ。
映画の撮影ロケ地に選ばれた田舎町。大女優が滞在することになり、お祭り状態。ところが歓迎パーティの最中に、一人の女性が殺されてしまう。なんと不吉な。
それを聞いてワクワクする女が一人いた。ミス・マープルである。後期高齢者に勇気を与える、その頭脳。ミステリー大好き老婦人。殺しと聞けば、うっかりニヤついてしまうほどの事件マニア。
撮影が中止されることもなく、何やら、関係者が不穏な動きをしている気配。周囲から状況を聞き、推理を巡らせるミス・マープル。核心を突きまくるマープル。現場には足を運ばずに、だ。エスパーですか。
女優のぶつかり合い、恋の思惑、金の算段。映画関係の楽屋裏が描かれて興味が尽きない。しかも、キャストには大スターが大集合している。ミステリー映画はこうでないと！
キャスト＆スタッフ
向かって右からエリザベス・テイラー、トニー・カーティス、キム・ノバクである。ザ・女優俳優。
大女優役エリザベス・テイラーの芝居が素晴らしい！ 戸惑いが伝わる繊細さ。かわいい。そして美しい！
映画監督役のトニー・カーティスはさすが、芝居上手。終盤のくだりでは震えた。
お色気女優役のキム・ノバク（ノヴァク）は、頭パーに徹しており見事。原色ファッションも着こなす迫力。
マネージャー役のジェラルディン・チャップリンも上手い。お名前からお察しの通りでチャールズ・チャップリンの娘さん！ 演技DNAは受け継がれる説を実証。
『ジェシカおばさんの事件簿』でお馴染みアンジェラ・ランズベリーがミス・マープル役で、ナゼか老婦人感は薄め。といいますか『ナイル殺人事件』のクセ強め作家役も、この方か！ 不思議とスタイルが良い。
↑写真右の警部役エドワード・フォックスがやたらとカッコ良いのだけれど、傑作『ジャッカルの日』のジャッカルでしたかーーー！！（大興奮）
プロデューサー役ロック・ハドソンの俗物っぷりが相当。身長193cmだったとは！
007映画で鳴らしたガイ・ハミルトン監督がアクションを封印。じっくり腰を落ち着けて、犯人推理に勤しめる。翌年に『地中海殺人事件』を撮ったが、個人的には本作の方が好きであった。
唯一無二の動機が胸に残る
ミス・マープルがサクサクと事件を解決していくので、ストレスが無い。ポワロのように現場でチョロチョロしない、だって英国婦人だから。ただ、人の心を暴くのはA.クリスティ原作ならでは。
と、当方はそもそも、結末を知って観てしまったわけですが、知らずに観ていたらどうだったろう。個人的に、原作を読んだ時にはまだお尻が青々とした中学生だったので、この動機にひどく驚いた。そういうことで人を殺すのかとビックリした。だが、今ではよく分かる。
ショービズ界で暮らす人々も人間であることには変わらないと、コロナ禍で我々も学んだけれど、その感覚にも近い。今の時代、この動機が再び効いてくる印象もある。
お茶の時間やガーデニング。お花いっぱいの壁紙やお洒落ドレス。撮影セットはどこで組まれているのか、最後までよく分からなかったが、そんなことはどうでもいい。
犯人はわかった！事件は無事解決！と、痛快に終わるミステリーも愉快だけれど、本作のような後味もまた格別。罪に手を染めた人の心の傷が、沁みてくる。
1980年製作／105分／アメリカ
原題：The Mirror Crack'd
監督：ガイ・ハミルトン／原作：アガサ・クリスティ／脚色：ジョナサン・ホールズ、バリー・サンドラー／撮影：クリストファー・チャリス／美術：マイケル・ストリンジャー／音楽：ジョン・キャメロン／衣装デザイン：フィリス・ダルトン／出演：アンジェラ・ランズベリー、ジェラルディン・チャップリン、トニー・カーティス、エドワード・フォックス、ロック・ハドソン、ウェンディ・モーガン、キム・ノバク、エリザベス・テイラー
※読んでいただいてありがとうございます。情報に誤りがありましたらご一報いただけたら幸いです。
U-NEXT
色んな映画を観ています。ブログ内の記事索引です。
↓クリックご協力いただけたら嬉しいです
