依然、暑さが元気ハツラツですので、地中海映画。
旅先に名探偵がいる。
それだけで不吉。
アガサ・クリスティー原作、名探偵ポワロ主演、リゾートで殺人事件。
殺人犯の苦労がうかがえる
あらすじは、セレブ殺し。
ゾロゾロとリゾートアイランドに集まってくる、お金持ち。
女優家族、夫婦プロデューサー、若夫婦、作家、富豪、ホテルオーナー。
故意か偶然か、ホテル宿泊客全員が関係者。
ワガママ人間に振り回される人々。
モメ始める客。
聞き耳を立てる名探偵ポワロ。
人間模様が露になっていき、殺人が起こる。
女優が中心なので、話題が華やか。
ロケ地も豪華で、スペインのマヨルカ(マジョルカ)島だ。
紺碧の海と空を眺めているだけでバカンス気分に浸れて、安上がり。
ホテル内だけではなく、島全土を使うスケール感。
ボートでちょっと漕ぎ出しただけの距離が、意外に2時間かかる。
広い。
ということは、殺人犯は大変だ。
アリバイ作りで時間と闘い、名探偵をうまく騙さなければならない。
大忙し。
こんなに大変なら人を殺すのはよそうと思えるのだから、犯罪抑止力にもなり得る作品。
全員が容疑者だ。
事情があって、警察は来ない。
怖すぎませんか。
キャスト&スタッフ
名探偵ポワロ役はピーター・ユスチノフだ。『ナイル殺人事件』では見せなかった水着姿も披露。原作のポワロよりも愛想がよく、可愛らしい。食べ物を頬張るシーンを、もっと見たかった。
女優役のダイアナ・リグはイヤな女に徹するプロ意識。『女王陛下の007』ではボンドガールだったゴージャスさ。
ホテルオーナー役のマギー・スミスが良い感じの元女優感。どこかで観たのだけれど…って、『ナイル殺人事件』の男装の麗人系! そしてハリー・ポッターのマクゴナガル先生!
若妻のジェーン・バーキンも『ナイル殺人事件』から、演技ごと継投。
若い夫役ニコラス・クレイがホスト度100%。『エクスカリバー』と『チャタレイ夫人の恋人』で全裸を披露していると知ったババア(当方)、浮足立っております。53歳の若さで亡くなられたそうで、惜しまれる。
作家役のロディ・マクドウォールが目を引く!って、この方、『フライトナイト』の最高なピーター・ヴィンセントじゃないかー! 目立つのも無理もない!
プロデューサー妻役のシルヴィア・マイルズにビックリする。
ガイ・ハミルトン監督は007シリーズを4作撮った方なので、サスペンス描写が素晴らしい! 種明かしが強引に思えるのも、また愉快。続く『クリスタル殺人事件』も楽しみになってきた。
アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞した『ナイル殺人事件』と比べてしまうと、衣装はカジュアル。もっとも、バカンスなのだからそれで正解かもしれない。
バカンス殺人は深刻とは無縁
実は、本作には気の毒な人が登場する。
関係者全員から、あの人、死ねばいいのになあ…と思われている人物だ。
こんなに哀しいことってありますか。
そんな人間が亡くなったからといって、周囲にはダメージがないということがよく分かる。
案の定、死体発見後に始まるカクテルパーティ。
死体がホテル内にあるのに、である。
犯人はこの中にいるのに、だ。
けれど、パーティこそ重要だ。
何しろ、ポワロ探偵は科学捜査と対極にいる。
事件解決の最大の糸口は、盗み聞きである。
全てを見てきたように滔々と語る名探偵。
ポワロが犯人を名指ししてからも、誰も動じない。
犯人でさえも、だ。
コメディ色も豊富で、ラストシーンでは皆、ニッコニコである。
ぃやいや、人がお亡くなりになってますよと、たしなめる人もいない。
コール・ポーターの曲を流しておけば、ミステリー感も高まるというもの。
結果、リゾートは良いなあという気持ちが残る。
なんだかんだで、満足感。
悲壮とは無縁。
あらためて気づいたが、日本が誇る名探偵・金田一耕助シリーズと何が違うかというと、A・クリスティー原作は死者が必要最低限に留まる、ということかもしれない。
被害者も、死んで当然系。
そりゃ後味もスッキリするというものだ。
シリーズ恒例の記念写真です↓
クリスティー原作映画の感想です
1982年製作/イギリス
原題:Evil under The Sun
監督:ガイ・ハミルトン、原作:アガサ・クリスティ、脚本:アンソニー・シェイファー、撮影:クリス・チャリス、美術:エリオット・スコット、音楽:コール・ポーター、編集:リチャード・マーデン、衣装:アンソニー・パウエル、出演:ピーター・ユスチノフ、ジェーン・バーキン、コリン・ブレイクリー、ニコラス・クレイ、ジェームズ・メイソン、ロディ・マクドウォール、シルビア・マイルズ、ダイアナ・リグ、マギー・スミス、エミリー・ホーン
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