この後味たまらん!
日本文化を愛する者には尚更に!
予告編情報によればUFOモノなのかな、という程度の認識でOK。
そのまま映画館にGOされるのがオススメ。
楽しい時間の始まりです。
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無理でヤバめなソレがいる
まず、タイトルがイカしている。
「NOPE(ノープ)」の意味は「無理」とすると分かりやすいかもしれない。
「NO」の砕けた言い方のひとつ。
「NOPE NOPE NOPE」は「無理無理無理」といったニュアンス。
もしくは、「ないないない」といったところ。
「うそうそうそ」でも可。
つまり、そういう事態が繰り広げられるSFパニックである。
あらすじは、未確認系だ。
ハリウッド映画に出演する馬を飼育する、家族経営の牧場が舞台。
ある日の調教中。
空からの落下物が父親に命中。
その日から、妙~~~~~~~なことが起こり始める。
ぃや、妙~~~~~なことがすでに起こっていたことに、人々が気づき始める。
空を見上げた時に異物に気づいたら、人はどうするか。
登場人物たちが目論む作戦は、現代的だ。
その「何か」を撮影したい。
そんな試みを嘲笑うかのように不穏な事態が巻き起こる。
ネタバレ厳禁映画に属するので大きな声では言えないのですけれども、早々に怖い。
当方、さっそくチビッた。
大音響の効果が抜群である。
耳をつんざく音声は多種な要素で組み上がっているので、一つずつの音源に気づいた時にさらに怖くなるという仕掛け。
そう、本作は映画館で効果倍増になるタイプ。
IMAX用カメラで撮影されているため、IMAXシアターで5倍増しになると予想。
ノーマルスクリーンで観てしまったわけですが、それでも大迫力。
IMAXならば失禁が止まらなかった恐れがある。
ご注意されたい。
スタッフとキャスト
監督・脚本はジョーダン・ピールなので! 『ゲット・アウト』でアカデミー賞脚本賞を獲得してホラー界を引き上げ、 『アス』で観客を混乱させた張本人。「黒人映画」という枕詞を取っ払った功労者でもある。
元コメディアンの本領発揮でユーモアもたっぷり、映画愛もいっぱい。嬉しくなるシーンの連続であり、後述します。
牧場の息子役は『ゲット・アウト』のダニエル・カルーヤ。いまや、アカデミー賞助演男優賞俳優である。頼りなさと逞しさが混在する、得も言われぬ魅力だ。
その妹役キキ・パーマーがウザいウザいと思っていたら、加速度的にカッコよくなっていき、しまいにはファンになっていた。
電気屋役の金髪男ブランドン・ペレアがカッコ良い! 本作が1作目の気配。若い頃のジュード・ロウを思い出す。アホアホしており、好印象。
カメラマン役マイケル・ウィンコットにシビれる! キャラクター、心意気、納得しかないイケオジだ。『エイリアン4』の船長だったようだけれど、ほとんど忘れていた自分(中年)に愕然。
テーマパークのオーナー役はスティーブン・ユァンだ。大人気ゾンビドラマ『ウォーキング・デッド』シリーズの良心。『ミナリ』でオスカーにノミネートも果たした。今回の役も最高である。なお、少年時代を演じた子役さんが激似なのも面白い。
未知だが興奮の懐かしさ
牧場と未確認系といえば、スピルバーグ監督の『未知との遭遇』やシャマラン監督の『サイン』といった傑作を思い出すが、そのいずれとも違う切り口だ。
音の強弱や暗闇が恐怖を盛り上げる。
身を隠す物のない心細さ。
木造家屋の心もとなさ。
幾つもの意味をはらんだ緊迫感に襲われる。
それでいて、ワクワクが止まらない。
シンプルな構図ゆえに効果的だ。
考察次第でいかようにも受け止められるからだ。
手出しができないような破壊力は、多くの暗喩に活用できる。
たとえば、支配される弱者だったり。
戦争だったり。
ウィルスだったり。
天空からの災厄は、聖書や宗教的な意味にも捉えられよう。
もちろん、黒人テーマは健在だ。
だが、当方(特撮初心者)は、ただただ無性に楽しかった。
あの光景に、どこか懐かしさを覚える人も多いのではないか。
そう、あれはまるで、日本が世界に誇る特撮○○映画ではないか!
さらには、日本アニメのあのシーンではないか!
ああ、このシーン、観たことがある。
これも知っている。
ぃや、むしろもうオマージュだろう!と思えるシークエンスが次々に登場。
当然、盛り上がった日本人ババア(当方)が、ここからネタバレありで語ってしまいます。何も知りたくない!という未見の方はページを閉じて下さいませ。
↓ネタバレあります!
↓ネタバレしております。
↓ネタバレ全開ですのでご注意くださいませ!
【ネタバレあり】邦画オマージュという映画愛
UFOといえば金属系かと思っていたら、まるで違うわけだ。
敵は生物の一種と思われ、あの特性も何やら見覚えがある。
『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの第5使徒ラミエルと質感こそ違うものの、その顛末はほぼ同じだ。
変形→血液大噴出に至っては、あ!と声を上げそうになった。
敵の変形後の形状は、本多猪四郎監督と円谷英二特技監督による『宇宙大怪獣ドゴラ』に似ている、瓜二つ。
まるで双子。
今、猛烈にドゴラが観たいです。
(念のために画像は自粛しますが、こちらからどうぞ→ドゴラWikipedia)
また、妹のバイク疾走シーンからの、ブレーキストップの姿。
あれはもう!
大友克洋の傑作アニメ『AKIRA』じゃないか!
金田のバイクじゃないですか!!!(絶叫)
大興奮で浮かれていたら、まさしくであった。
ジョーダン・ピール監督自らが、すでに大友愛・エヴァ愛をブチまけていたらしい。
(↓映画.com参照)
これは嬉しい!
AKIRA好きでエヴァ好きな監督だったとは、ますます推せる。
もちろん、各種メッセージもありましょう。
しかし、ただただ特撮スペクタクル映画としてテンションをブチ上げるのが痛快な1作といえるだろう。
支配の序列が変わる。
意外な相手に牙を剥かれる。
チンパンジーのブチ切れ方の恐ろしさ。
あの狂気も、牧場を襲ったアレと同じパワーに支配されていたと想像できる。
突如、未知なる力に襲われる。
その様は、エヴァや邦画特撮映画で見慣れた光景だ。
単純にデカいものは怖いし、大音響も怖い。
そう改めて感じられるSFホラーエンタメに、胸が躍った。
そして何より、キレたチンパンジーがいちばん怖い。
2022年製作/131分/G/アメリカ
原題:Nope
監督・脚本・製作:ジョーダン・ピール、製作・イアン・クーパー、撮影:ホイテ・バン・ホイテマ、美術:ルース・デ・ヨンク、衣装:アレックス・ボー・ベアード、編集:ニコラス・モンスール、音楽:マイケル・エイブルズ、視覚効果監修:ギョーム・ロシュロン、出演:ダニエル・カルーヤ、キキ・パーマー、ブランドン・ペレア、マイケル・ウィンコット、スティーブン・ユァン、キース・デビッド
ジョーダン・ピール監督作品の感想記事です
スクリーン
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