ゲット・アウト

 

傑作キャスティング・アイデア

痛快。

ホラーだけれども。

笑いもたっぷり。

劇場内、ほとんど笑っていなかったけれど。

あまりにもスカッとして、『ダイ・ハード』を思い出した。

 

ホラーである。

だが、滅法、コワ面白い。

ホラーなのに、黒人主演。

黒人主演なのに、感動ストーリーじゃない。

感動売りじゃないのに、今年度アカデミー賞ノミネート。

 

これは、ちょっと奇跡じゃないか。

いや違う。

『ゲット・アウト』はエポック・メイキングとなったのだ。興奮!

 

恋人の実家に招かれた男。

そこにいたのは、何やら、様子がおかしい人々。

これ以上は、何を書いてもネタバレになるのが怖い。

 

本来、この舞台装置はホラー界では手垢がついている。

その、ある部分を変えてみた。

それが、効果覿面。

ホラーの枠を超えての絶賛となったのだから。

 

ある部分とは、そう、キャストである。

元来、白人が演じてきた役柄に、黒人を置いた。

すると、ほら、景色が違って見える。

色濃くなる、濃密になる。

何もかもが、意味深になるという仕立て方。

おそらく、白人の人々にとっては本気で怖いのかもしれない。

 

しかも、このアイデアは他でも使える。

数多ある映画をいっそ、こうして焼き直してみることもできる。

すると、どうだ。

無限に映画がリメイク可能。魔法ですか。

 

 

オスカーノミネートの面々

主演のダニエル・カルーヤは、オスカー受賞は難しい気もするけれども、快挙である。

恐怖表現がリアルでいい。人好きのする眼差しも、いい。

 

恋人役のアリソン・ウィリアムズは途中まで、『デス・プルーフ』のチアリーダー、メアリー・エリザベス・ウィンステッドかと思っていたほどの、ザ・美人。

 

恋人の母役がキャサリン・キーナーで、絶妙に、お母さん。

荒唐無稽設定の屋台骨を支える達人。

 

友人役のリルレル・ハウリーが最高。

この人の使う「fuckin'(ファッキン)」がたまらなく、好きだ。

 

ベッティ・ガブリエルマーカス・ヘンダーソンラキース・スタンフィールドのブラック3人衆が、怪しく素敵な働き!

 

監督・脚本のジョーダン・ピールは黒人の方。これが大きい!

胸を張って今作を作った気合が感じられる。

笑いも含有した脚本は、コメディアン出身だからこそだろう。

 

製作はホラー界の金庫、ジェイソン・ブラムなので!

この人にどれだけ楽しませてもらっているか、足を向けられない。

セクハラパワハラ騒動に巻き込まれたりしないでと、祈るばかり。

 

 

黒人映画≠感動

これまで黒人映画といえば、ほとんどが感動を添付。

ハリウッドは実は忖度文化であり、文句が出そうな地雷は避けて通りまくる。

そこを逆手に取った。

ノミネートされた作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞で受賞なるかは、次の月曜まで待機。

だが、権威ある場の俎上に上がったことに、大変な意義がある。

 

まるで、『羊たちの沈黙』だ。

あの年、高齢者多めのアカデミー会員たちが、サイコでホラーで描写もエグイ作品を作品賞に選んだのは、革命であった。

その後のハリウッドを変えた、エポック・メイキング。

 

この『ゲット・アウト』も同様だ。

黒人映画といえば、感動を加えなければ。

そんな配慮は、もういらない。

普通に。

一般的に。

「黒人」という肩書が外れて、映画がメジャーになる。

黒人でなければ出来ないことをして、だ。

なんと気分がよろしいのか!

かくも重要な意味を持つ、この映画。

 

だけれど、鑑賞の際にはそんなことは考えなくて、オーケー。

ただただ、眺めていましょう。

あの邸宅で何が起こるのか。

観客は、時代の目撃者になることができるのです。

 

そしてきっと、思うはず。

ハリウッドの犬スター、どんだけ可愛いんだ!って。

 

 

 

映画 スクリーン(2018年鑑賞)

 

ブログランキング・にほんブログ村へ←記事がお気に召したらクリックして下さいませ

←←ポチッとこちらも参加しています

 

『ゲット・アウト』
Get Out
2017年・アメリカ
監督・脚本:ジェイソン・ピール
製作:ジェイソン・ブラム 他
出演キャスト:ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ、ブラッドリー・ウィットフォード、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、キャサリン・キーナー、リルレル・ハウリー、スティーブン・ルート、ベッティ・ガブリエル、マーカス・ヘンダーソン、キース・スタンフィールド

 

色んな映画を観てます↓ブログ内の記事索引です

宇宙人 映画タイトル50音順

 

   ブログランキング・にほんブログ村へ
 

※鑑賞の感想です。情報に誤りがございましたら御一報頂けましたら幸いです。