お見事!

息を呑む大展開。

ジャンル分けが無用に思える、あらゆる要素が入った最高時代劇だ。

 

怪猫 呪いの沼

 

 

パワハラ殿様vs猫3本勝負

 

「怪猫」と書いて「かいびょう」だけれど、「かいねこ」と呼びたい心情。

鍋島という人物は登場するが、あの有名な鍋島藩の化け猫騒動とは違うお話。

 

あらすじは、大阪城が落城する頃合いに始まる。

エロ殿様が、偶然見かけた美女・雪路にロックオン。

城に上がるよう要請するも、雪路は拒否。

雪路には婚約者がいるからだ。

殿様の命を受けた家老は、強硬手段に打って出る。

 

そもそも、エロ殿様はクーデターで上り詰めた男だ。

その過程で、元城主夫妻をネチネチと殺害。

城主妻が飼っていたペットが、この映画の主役。

猫である。

この猫ちゃん、可愛いがすぎる。

しかも有能。

 

怪奇を操る猫である。

そうさせてしまった人間が悪い。

憑りつき、幻を見せ、天候を操り、ぐんぐん人を追い詰めていく。

そのやり方が恐ろしくも美しい!

 

怪奇描写もしっかりと怖く。

それでいて、胸が躍る。

というのも本作は、本格アクション活劇だったので驚いた。

標的に向かって猫まっしぐらである。

呪いの沼も、幽玄だ。

 

スタッフとキャスト

 

石川義寛監督を初体験。『東海道四谷怪談』(1959)の共同脚本を務めた方! 本作もセリフが良い。殊に親が子を思う言葉に、情愛が滲む。邦画ホラーの殿様・中川信夫監督との仕事も長く、その流れを汲む恐怖描写は圧巻。

 

殿様役は内田良平である。ザ・暴君。気が食わない人は即、切ります。人命よりもエロである。気圧される。ご自身は詩人の顔を持ち、1972年の大ヒット曲『ハチのムサシは死んだのさ』を作詞されていたとは知らなかった!

 

雪路の婚約者役里見浩太朗が若い! 途中まで気づかなかった。思えば、若い状態を初めて見たかもしれない。声は今のまま。

 

雪路役御影京子が猫目の可愛らしさ! 今は伊東のホテル暖香園の女将を務めていらっしゃると知りました。旅行計画を立てたい。

 

雪路の父役松村達雄に泣いた。

 

家老役の名和宏が良い。酷い人間のようでいて、管理職のしんどさも伺える。

 

端役だというのに、菅原文太の存在感! カッコ良すぎではないですか。不遇だった文太石川監督が起用したのだそう。熱い。

 

家老の妹役三島ゆり子の覚悟が切ない。

 

局役の八代万智子が怪演。美しい! セクシードラマ『プレイガール』のメンバーだったのも頷ける。化け猫状態でなおセクシー。

 

使用人役の沼田耀一が良い塩梅に卑屈。

 

ナレーションは芥川隆行なので、引き込まれて当然。

 

全編を彩る音楽が素晴らしいのだけれど、シンセサイザー先生こと富田勲であった!

 

 

怪奇に映える迫力アクション

 

目にも鮮やかな殺陣が随所に差し込まれる。

そのアクション振付がハイレベル!

水路の俯瞰撮影。

沼の水飛沫。

畳に当たるライト。

その中で刀が閃くのである。

時代劇の魅力にシビれまくる。

迫力が止まらない。

 

時代劇だから、もちろん全員が着物着用なのに、である。

あんなに動けるなんて!(アホの感想)

足さばき、袖さばきに見惚れてしまった。

猫だから、バンバン飛びます。

CGが無い時代だ。

いちいち、ハッとする。

撮影アングルが秀逸。

まさに活劇だ。

 

名作ホラーというものは、怖がらせだけでは終わらない。

本作も情愛がベースである。

おどろおどろしいというよりも、がんばれ!と応援したくなる怪異攻撃だ。

化け猫モノといったら、猫に憑りつかれた人が油を舐めるのだろうと思っていたが。

違った。

血を舐めるのである。

尊厳を奪われた人の心を舐めるのである。

 

蝉の声、虫の音。

おそらく、他の動物では成立しない情念の復讐劇だ。

ことごとく美女に拒否されるエロ殿様の、たどる道。

夏の怪異譚が胸に沁みた。

 

 

 

 

 

1968年製作/86分/日本
英語タイトル:The Cursed Pond
配給:東映

監督・脚本:石川義寛、撮影:赤塚滋、美術:井川徳道、音楽:冨田勲、照明:和多田弘、ナレーター:芥川隆行、出演:内田良平、里見浩太朗、御影京子、名和宏、三島ゆり子、八代万智子、松村達雄、東龍子、吉川満子、菅原文太、時美沙、楠本健二、島田景一郎、沼田耀一、香川秀人、橘ますみ

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