堕ちた天使だ。

邦画界の宝に認定したい。

 

月曜日のユカ

©日活

 

 

  悪魔的な天使は美貌で生きる

 

鑑賞してからずっと興奮しているわけなのですけれど、一旦、落ち着きます。

 

横浜である。

うら若いユカは人気ホステス。

誰とでも枕を共にする、貞操観念とは無縁の美女。

パパ活で生計を立て、他の男に抱かれに行く。

けれど、クリスチャンだから大丈夫。

懺悔をしたら罪は消えるからオッケーオッケー。

あまりにも自分を粗末に扱う美女である。

そんなユカが、どんどん心配になる。


あどけないのである。

何をしようとも悪びれない。

「愛してる」の重さはティッシュ1枚ほど。

だけど、彼女は常に真剣。

「男の求めるものを与えなさい」とユカに教える母親が、これまた切ない。

 

まだ戦後と呼んでもいい、港町の風景だ

米国人に媚びる日本人の姿が、痛ましい。

古い女性像に封建的な男性像が絡み合って、いかんともしがたい展開が待ち受ける。

 

 

dTV

 

 

  キャストとスタッフ

 

ユカを演じるのは加賀まりこである。もう、もう、この人スゴい……!(語彙) 可愛すぎる小悪魔。ダメな顔面が1秒もない。クルクルと表情が変わる甘えん坊。現代世界三大美女に加入させたい。それでいて演技巧者なのだから!

 

パパ役が加藤武なのだ。誠に失礼ながら、性欲シーンを見たくない俳優のトップである。親族の色恋を目の当たりにするような気まずさ。が、ならではの味わいが滲み出てくるからホッとした。

 

青年役は中尾彬。まだ早口でセリフを畳みかけている頃合い。良い役だ。

 

梅野泰靖はどこにいたのか……?と思っていたのですが、フランク役だったのか! 上手いわけだ!

 

北林谷栄が、すでに年配。この方も、もうスゴい……! あの表情、胸を突かれる。

 

山本陽子が見つけられない、まだ端役。

 

黛敏郎の軽快な音楽に乗り、ルリ・オチアイの衣装がオシャレすぎる!

 

製作はターキーこと水の江瀧子だ。妻殺害に問われたロス疑惑の三浦和義が甥っ子だった衝撃が今も強いが、日本初の女性映画プロデューサーでもある。

 

中平康監督は冴えわたる瞬間と、不思議シーンの融合。どうやら、映画界での不遇に荒れて現場でも泥酔状態だった模様。実際に映画を撮ったのは、脚色担当の斎藤耕一だったらしい。(加賀まりこ談)

となると、あのラストシーンを撮ったのはどちらだったのか、気になって夜も眠れないので昼にウトウトする始末。

 

なお、共同脚色には倉本聰が並ぶ。さすがの会話劇。

 

 

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  ユカの心に黒いものが沈んでいく

 

撮影現場がバタバタしたせいだろうか、序盤はトンデモ映画かと思っていた。

この長めのシーンはいったい……?

マジック、全部やるの……?

と、困惑すること数回。

オードリー・ヘップバーン主演の『ティファニーで朝食を』を模した、加賀まりこのアイドル映画なのかもしれない、と、美貌にうっとりしていたのだが。

 

やがて、映画は正しく舵が切られていく。

ほとんどの時間、ユカは不安定に見える。

何かが満ち足りていないように見える。

その理由が見えてきてから、物語が加速する。

 

結果、加賀まりこに心を持っていかれた。

ある時代の、女が生きる意味を思わされた。

男の傲慢さ、純真さ、それぞれの思惑もまた生々しい。

膝を抱えるユカの姿に浮き上がってくるのは、寂寥感である。

美しくて、哀しい。

噂に違わず、この映画はスゴい。

 

 

 

 

1964年製作/93分/日本

監督:中平康、原作:安川実、脚色・スチル撮影:斎藤耕一、倉本聰、企画:水の江瀧子、撮影:山崎善弘、音楽:黛敏郎、衣装デザイン:ルリ・オチアイ、出演:加賀まりこ、北林谷栄、中尾彬、加藤武、波多野憲、梅野泰靖

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