「舌打たず」「狸の恩返しすぎ」に関して (吉笑) | 談笑の弟子!! ブログ

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立川談笑の弟子による勉強会のブログです。

今回は「舌打たず」と「狸の恩返しすぎ」という噺を勉強させて頂きました。


「舌打たず」はネタおろし、「狸の恩返しすぎ」はわりと頻繁にやっている演目で、

もちろんともに自作の噺です。





「狸の恩返しすぎ」は僕にとって初めての改作モノで、

メッセージ性と分かりやすさのバランスは手持ちの噺の中では随一で、

とても重宝しています。




本当は「悲し笑い」という噺をネタおろしでやるつもりだったので、

ほとんど稽古をしないままぶっつけ本番、という形になってしまい、

もたつく箇所もありましたが、


現時点での力量から考えるとまずまずの出来でした。




「舌打たず」もそうなのですが、僕はサゲを考えるのが苦手なようで、

この「狸の・・・」もしっくりくるサゲが未だに見つかっていません。




今回の、子供に再度登場させてサゲを言わせる演り方は初めてでしたが、

思っていた通り(というとアレですけど、)やっぱりしっくりきませんでした。




他には八公が狸にあだ名を付けられる、というクダリを最後に足して

『恩をあだ名で返された』というサゲ方だったり、

シンプルに親狸の『倅を叱って頂いたお礼に、、、恩返しに参りました』でサゲるパターンをやりましたが、

どれも決め手に欠けると言った感じです。




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「舌打たず」は冒頭でも話したように、

『自分はとても面白いと思うのだけど伝わらない気がする』ネタだったので、

反応が予測できずとても心配でした。


結果的にはわりと笑って頂けた気がする反面、

実は笑ってらしたのは一部(特に男性)だけで、

半分くらいはポカンとされてたのでは、というふうにも感じています。




「進捗状況」で書いたように、

この噺でまずやりたかったのは、感情当てゲームの部分です。




隠居さんにヘンテコなことをやらす、そのシーンを

間をたっぷりとって演じるのは自分の頭の中では面白く思い描けていたのですが、

実際やってみるとどっちらけになりそうな気もしていました。

そのリスクヘッジとして、後半はテレスコ・序よろしく、

持ち味?の理屈コネコネパートに設定しました。




結果的に、感情当てゲームの一番最初、しっかり間をとって舌打ちをする直前くらいに、

そのバカバカしさにお客様がクスクスしている感じを体感できたので、

「あっ、どうやら大丈夫みたいだ」と安心できました。




サゲは本当は別のクダリにもって行く予定だったのですが、

流れであんな形になってしまいました。


「シュール」に逃げるというのは、自分としては一番やりたくない手法だったので、

反省しています。

(もしサゲをあそこまでシュールにするのなら、後半部分の発想をもっと飛ばさないといけないと思っています)




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あくまでも、僕はこう思っている、というだけの、持論を生意気ながら書かせて頂きます。




僕にとって噺の重要ポイントは『ギミック』と『ストーリー』です。

(あくまでも"僕にとって"です)




『ストーリー』というのはそのままの意味で、

物語性だったり、話の進め方だったりで、


『ギミック』というのは独自の解釈なので伝わりにくいかと思いますが、

仕掛けだったり、アイデア、新しい視点、発明性、です。




で、僕は特に『ギミック』志向のスタンスをとりたいと思っています。

どの噺にも必ずギミック(仕掛け、アイデア、新しい視点、発明性のどれか)を内包させたい。




今回でいうと、笑二の演目『強情灸』『親子酒』には

ほとんど『ギミック』的な要素はなく、

(もちろん部分部分では、あります。強情灸の「上に上に・・・」という部分など)

基本的には『ストーリー』的な噺だと思っています。あとは『演者力』。

というか、ギミック志向の古典落語は圧倒的に少ないです。




さらに独自の解釈なので異論はあるでしょうが、


紡げるストーリーの数よりも、

産み出せるギミックの数の方が圧倒的に少ない気がしています。

("良い"ストーリーを紡ぐのは難しいでしょうが、、、)




今回の『舌打ちで喜怒哀楽を表す』だとか、

『見たことも聞いたこともない虫』だとか、

『カレンダーが1日ずれたら・・・』だとか、

というギミックを産み出すには閃きが不可欠です。

で厄介なことに閃きを手なずける事はどうやら不可能みたいです。


何時間かけて考えても全く閃かない場合もあれば、

ふいに閃いたりもします。




果たして僕がいくつのギミックを産み出せるのかは分かりませんが、

閃きが枯れるまではとにかくギミックを産み出し続けようと思っていますし、

また、それが当面における唯一の生命線だとも思っています。





そういや、とある前座仲間の先輩は噺のポイントを


『人物描写』と『感情注入』だとおっしゃっていました。




価値観が違うのは当然だし、良い悪いは無いのだけど、

「あっ、そういう考え方もあるのだな」と新鮮に感じたのを覚えています。




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例によって野暮ったく、そのうえ野暮さ加減が中途半端という、

野暮ったさの入れ子構造みたいな文章になりましたが、そんな感じです。




今は1ネタ1ギミック方式で『ストーリー』要素はほとんど取り入れていません。

(というか、ストーリーを考えるのは苦手なようです)

なので、だいたい10分から15分強の持ち時間がしっくりくるのですが、

今後はもう少し長い持ち時間にも対応できるように、

(もったいないですが)1ネタ複数ギミック制だったり、

もう少しストーリー性を持たせたりする、

というギアチェンジは必要になってくると思います。




なぞと、偉そうに言いながら「チャンネルを絞るのは得策じゃない」と師匠から常々言われていることもあり、

当然ギミック性の少ない噺にも挑戦していきたいですし、

人物描写という視点を重視した噺にも挑戦していきたい。


要は色々やりたいと思っています。




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とりあえず、テレスコ・序と今回の舌打たずとで、「自分らしさ:その1」は見つけられた気がしているので、

今後はそれに加えて「自分らしさ:その2、その3・・・」と、どんどん手持ちの武器を増やしていければと。




そのための勉強会だと思っています。

今後ともよろしくお付き合いのほど、お願い致します。






とにかく、ご来場頂いた皆様本当にありがとうございます!






立川吉笑