先日は勉強会にご来場頂きましてありがとうございます。
僕は「逸材」と「ノマド」という噺を勉強させて頂きました。
「ノマド」は、春頃にコワーキングスペースの方から「ノマドとかコワーキングを題材にした噺って作ってくれませんか」と打診されたのがきっかけで考え始めた噺です。(コワーキングとかノマドについてはググってみてください。)
ちょうどコワーキングスペースについての新書が発売された時だったので、
その本を読んで、どうしたものかと色々考えていました。
以前「大根屋騒動」という噺を拵えたのですが、それも江戸東京野菜の普及活動をされている方から依頼されて作ることになったものだったので、
今回も「何とかなるだろう」と思っていたのですが、結果的にはずいぶん苦労することになってしまいました。
「大根屋騒動」は江戸東京野菜がテーマなので、古典落語の世界観で噺を作ることができました。
これは即ち、普段の高座でかけ易いことを意味します。
一方で、「ノマド」や「コワーキングスペース」はどうしても現代の噺になってしまうので、僕の考えだと普段の高座でかけるのは難しいなぁと思ってしまい、なかなか制作に取り組めない一つの要因になりました。
(古典落語の設定でなんとかノマドやコワーキングを描こうという方向でも色々考えたので、いずれ形にできるかもしれませんが)
そしてもう1つ。
コワーキングについての本を読んでいる途中、同時期に坂口恭平さんの「独立国家のつくりかた」という本が発売されました。
以前から坂口さんの事は存じ上げており、また好きだったので、そちらの新書も買ったのですが、
結果的にはこれが決定打となりノマドについてのネタ作りは進まなくなってしまいました。
「ノマド」というのは、一般的な生活スタイルを拡張するような考え方なのですが、
その「ノマド」よりもさらにもっと生活スタイルを拡張する考え方が「独立国家のつくりかた」には書いてありました。
僕の価値観は、「独立国家のつくりかた」にズッポリハマってしまいました。
そのため、以降「ノマド」の本を読んでもどこかつまらなく感じてしまい、ノマド賛歌の噺を作ることはできなくなってしまいました。
そうこうしているうちに秋になり、「コワーキングで噺を作ってください」と依頼してくださった方から「そろそろどうでしょう?」というお話がきました。
「すみません、できませんでした」と断っても良かったのですが、正直に、
「ノマドというものに愛着が持てないからノマド賛歌は作れそうにありません」と申し上げたところ、
「それでも構わない。」という風に言って頂けたので、暫定的に噺を作ることにしました。
今回の勉強会ではノマドについて考えたことを羅列するだけの部分と、
最後に少しノマドの先の考え方を提示する部分とで構成された噺になりましたが、
後半の方に比重をおいて物語を作れば、わりと仕上がりそうだとは思いました。
噺の中では、少し誇張して表現しましたが、
先日テレビを見ていたら、インタビューされた就活中の学生が、
「どういう職に就きたいですか?」という質問に「ノマドをやりたいです。」と答えていました。
違和感あるその回答を聞いた瞬間、ドドドッと考えが巡り始めました。
余談ですが、昨晩見ていたAKB48のドキュメントの中で、篠田?さんが、
「私たちの時は、みんな女優や歌手になりたいという夢を抱いてAKBに入ってきたけど、最近の研究生たちはAKBに入ることが目標になってしまっている。」
とおっしゃっていました。
長くなったので「逸材」については省略しますが、
この噺の根幹は大好きなので、いずれきちんとした勝負ネタの"一部"になるはずです。
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次回は11月30日になります。そして都合により今年最後です。
終演後、初めて打ち上げをやる予定ですので、
お時間ございましたらそちらもよろしくお願いします。
いつもありがとうございます!
立川吉笑