無国籍(感想)
世界中の数多くの開発途上国・先進国に無国籍者が存在し、およそ1,500万人にのぼるとUNHCRは推計しています。 ただ、正確な数はわかっていません。 多くの無国籍の状況の根本的原因は、特定の人々を排除するような政策にあります。 世界中の様々な地域で、ジェンダーにもとづく差別的な法令が依然として無国籍のリスクを生じさせる原因となっています。 ヨーロッパでは、1990年台のソ連・旧ユーゴスラビアの解体によって新興国にも無国籍が広がりました。 また、日本にも存在しているそうです。 ”無国籍”(2005年1月 新潮社刊 陳 天璽)を読みました。 ある日、台湾への入国も日本への帰国もできず空港から出られない衝撃的な経験をしたそうです。 陳 天璽さんは、1971年横浜中華街生まれ、筑波大学大学院 国際政治経済学博士、香港中文大学、ハーバード大学客員研究員、日本学術振興会特別研究員、国立民族学博物館助教授を経て、早稲田大学国際教養学部准教授を務めています。 無国籍は、法的にいずれの国の国籍も持たないことで、国籍の消極的抵触ともいわれています。 国籍は、それぞれの国の国内法が具体的にどの範囲の自然人、船舶および航空機に自国の国籍を付与するかを決めています。 各国はそれぞれ自由に国内法を制定することができ、相互にその内容を調整する仕組みが一般的には用意されていません。 関係国の国内法の内容如何では、同一の自然人、船舶または航空機が二つ以上の国の国籍を保有することがあり、また、いずれの国の国籍も保有していない無国籍が起こりえます。 日本の国籍法は出生地主義ではなく、血統主義が基本となっています。 親が日本の国籍をもっている場合、その子は日本の国籍を取得しますが、親が外国人の場合は、親の国籍の国の人として扱われます。 著者は日本に生まれ、日本に生活基盤がありますが、出生当時親が中国人だったので外国人登録では中国人となりました。 そして、生後まもなく日中国交回復により、台湾籍が認められなくなった結果、無国籍という身分を選んだ家庭に生まれて無国籍となり、こんにちまで30数年過ごしてきました。 父親は、1972年に国籍問題が起こった時、今までの経緯や社会的背景から、日本国籍をとることも、中華人民共和国の国籍を取得することもできませんでした。 著者はそのとき1歳未満で、その後、無国籍の状態で日本に暮らすこととなりました。 幼稚園はインターナショナル・スクールに通いましたが、日本の某有名小学校には入学できず、横浜中華学院という民族学校に進学しました。 自然人は国籍を持つ国に無制限に滞在することができます。 一方、自然人が無国籍状態に置かれると、自国を持たない状態となり、どこの国にも滞在できず、不法滞在状態になるという極めて深刻な事態に陥る可能性があります。 無国籍者は、大きく二つのタイプに分けられます。 ひとつは、法律上の無国籍者、もうひとつが事実上の無国籍者です。 法律上の無国籍者は、たとえば、国際結婚後夫の国籍に変更したが、離婚した際に国籍回復の手続きミスで無国籍になってしまったとか、ある国の国籍を持っていたが、その国が内戦等で国家として消滅してしまったために国籍もなくなってしまったなどです。 事実上の無国籍者は、たとえば、ある国の国籍を持っておりその国に住んでいるが、政治上の理由で迫害されているとか、両親が密入国者で出生届を提出しなかったために子供が無国籍になってしまったなどです。 いずれの場合も、国家から国民としての保護や権利を与えられずにいる点で共通しています。 具体的には、結婚、就職、海外旅行など人生のいたるところで壁にぶつかります。 とりわけ、国籍もなく、日本で在留資格も持たずに生きる人たちの悩みは深刻です。 かつて住んでいた国に帰ることもできず、日本でも合法的に暮らすことができず、どの国からも見捨てられ、不安定な立場に置かれています。 平成13年度の在留外国人統計で、無国籍者は1,904人となっています。 日本で外国人登録の統計を見ると、一番多いのは、コリアン、次に中国、ブラジルときますが、そのリストの最後の方に無国籍という欄があります。 この無国籍の人の数に、登録されていない人達も存在しています。 たとえば、オーバーステイの人たちが日本にきて子どもを生み、出生届けをださないというような場合です。 この子どもは存在しない人間として、日本に暮らすことになるのです。 ほかにも、移動する人たちの間で、国によって登録もれや、国籍法の狭間に落ちてしまう人たちがいます。 無国籍の人も、自分が無国籍であることを知らないままでいるケースもあります。 現在、日本には、無国籍者を保護するための公的制度はまだないそうです。 第1章 中華街のララ第2章 日本と中国の狭間に生きる第3章 ニッポンになじめない第4章 世界へ出たい第5章 香港へ、アメリカへ第6章 無国籍について知りたい第7章 アジアの人々と無国籍第8章 帰化を申請する第9章 海外の無国籍