江戸と現代 0と10万キロカロリーの世界(感想)
しょせん人間は「起きて半畳、寝て一畳。飯を喰っても五合半」の動物でありいかに膨大なエネルギーを消費し大量の物資の供給を受けたところで、われわれが実際に使えるのはそのほんの一部分にすぎません。 大部分は自分たちの外に溢れ出して、身の回りをごみだらけにするために使う結果になります。 実際、私たちは化石燃料だけで100,000キロカロリーという膨大な子不ルギーを毎日使うことで、地球全体をごみ屋敷状態にしながら、長年にわたってそれを進歩だと信じてきました。 最近になってようやく、環境の悪化に目を向ける人が現れるようになりました。 ”江戸と現代 0と10万キロカロリーの世界”(2006年6月 講談社刊 石川 英輔著)を読みました。 0キロカロリーで暮らしていた江戸時代から、100,000キロカロリーを消費する現代になり、便利な暮らしと引き替えに得たものと失ったものがある、といいます。 石川英輔さんは1933年京都生まれ、東京都立石神井高等学校を卒業し、国際基督教大学と東京都立大学は中退、1961年にミカ製版を設立して社長となりました。 一方で作家デビューし、一連の中国古典小説のSFパロディ・シリーズを手がけてきました。 1985年以降は専業作家となりましたが、大江戸シリーズの小説の執筆の他に、江戸時代の生活事情を研究したノンフィクションも刊行するようになりました。 現在、江戸研究の第一人者の一人です。 江戸時代は、リサイクルが発達した理想的なエコロジー社会であった、と主張しています。 私たち、21世紀はじめに暮らす日本人は、一人当たり一日に125,000キロカロリー程度のエネルギーを消費しながら生きています。 これだけ膨大なエネルルギーを使わないと、現代のこの便利な生活は成り立たないのであす。 しかも、そのうちの100,000キロカロリーは、石油、石炭、天然ガスなどのいわゆる化石燃料です。 いつまでも今のように便利な生活が続けられるのなら、化石燃料でも何でもどんどん使えばよいでしょう。 今のところ石油の埋蔵量はあと46年ぐらいということになっていますから、当分の間はなくなる心配をする必要がないからです。 また、時とともに採掘技術が進歩し、新しい油田も見つかりますから、この分では、恐らく46年後も、まだ何10年分かの埋蔵量が残っていることでしょう。 今でも石油資源がなくなる心配をする専門家はいますが、最近では、むしろこのまま好きなだけ化石燃料を燃やし続けていいかどうかを心配する人が増えています。 一度燃やした化石燃料はけっしてもとに戻らず、大気中の二酸化炭素が一方的に増えるからです。 使いたいだけエネルギーを使うことで、一面では確かに恵まれた生活ができますが、この世には一方的に良いだけのことは滅多にありません。 目先の便利なことを続けていると、長期的には不合理な成り行きになることが多く、化石燃料の使いすぎによる地球温暖化などはその典型的な例といっていいでしょう。 過去にさかのぼって調べてみると、一日に50,000キロカロリーの消費量だったのは1970年頃、10,000キロカロリーだったのが1955年頃でした。 そして、江戸時代には太陽エネルギーの消費はあるものの、化石エネルギーなどの消費はほぼ0であることに思い当たります。 ほんの130年前の明治初期まで、私たちはエネルギー消費ゼロの生活をしていたのです。 0と100,000万とを比較して、はたして私たちの暮らしは10万倍豊かになったのでしょうか。 数値だけ見ると江戸時代の日本人はよほど貧しく悲惨な生活していたように感じますが、実際の日常生活の水準の差はそれほど大きくはありません。 普通の生活は、江戸時代の悲惨さを強調したがる人が期待するほどひどいとは思えません。 衣食住について考えればわかりやすいですが、どんなに所得が多くてエネルギーをふんだんに使えても、今の二倍の量を食べ続けられませんし、衣服をどれほどたくさん持っていても、一度に一着しか着られません。 どんなに広い家に住んだところで、大部分の空間はただ空いているだけか、がらくた置き場にしかなりません。 一定の文明水準に達していれば、エネルギー消費が大幅に増えると、人類は余計なこと、やらなくてもいい無駄なことをせっせとやるようになるだけで、基本的な生活はそれほど変わらない、というより変えられないのです。 本書は、一人一日当たりのエネルギー消費が、0、10,000、50,000、そして100,000キロカロリーの時代に、同じ目的を果たすために、日本人がどんな方法を使っていたかを比較しながら、今のわれわれがなぜこれほど大量のエネルギーを消費するようになったか、その理由を分析しながら考察しています。化石燃料10万キロカロリー時代/乗物、昔と今/冷やす/食べ物/伝える/観る/旅をする/照らす/着る/食べる/住む/作る/捨てる・拾う/人類は豊かさに耐えられるか